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ピアノソナタ第10番 ト長調 Op.14-2
2016-11-18 Fri 02:30
Part 4. Piano Sonata in G major, opus 14 no. 2

第三回目のプログラムより「ピアノソナタ第10番 ト長調 Op.14-2」のレクチャー内容です。この曲の講義はわずか20分弱です。シフさんの優しいお人柄を垣間見ることが出来る回です。笑  途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。





「続いて9番(Op.14-1)の姉妹作、Op.14-2はト長調です。この作品は、叙情的でとても明るくユーモアもあり、特に第2&第3楽章では面白いタッチもみられます。とはいえ第1楽章は、とても叙情的です。(演奏)まず『カンタービレ』ですから、歌うように表情豊かに。ここは非常に大きな音程差が出てきますよ。(演奏)下方向への9度差・・・(演奏)・・・あるいは、上方向へ10度差など。(演奏)第2主題は言ってみれば、ふたりの歌姫によるオペラ風のデュエットですね。(演奏)それから、次に出てくる第3主題は(時代関係を無視した発想で言うと)ロバート・シューマンを彷彿させます。(演奏)このような中声部の動きですとか・・・常に一方がもう一方に影のごとく寄り添って歌っていますね。ベートーベンが使ったこのような音形をシューマンは賞賛し、彼自身の作曲スタイルへも反映させて行ったんだと思います。」

「さて先ほど、9番の展開部は比較的短いです、とお話しましたね。それに対して、この10番の展開部は非常に大きな作りとなっている上に、かなりドラマチックです。(演奏)・・・歌姫たちです・・・(演奏)ベートーベンはここの部分・・・こんな風に(演奏)スフォルツァンドが必要だと主張していますね。それからフェルマータで止まって・・・このように続きます(演奏)・・・こんな風に続くと予想するかと思いますが(演奏)・・・でも、この音(演奏)これがベートーベンの使っていたピアノの最高音だったんです。これ(ひとつ上の音を鳴らして)は存在しませんでした笑 ですから・・・(このような部分から)大作曲家ベートーベンが、いかに楽器の機能的限界の中でやりくりしているかが見てとれて、興味深いですね。笑 (演奏)バス音に注目してみると・・・既にドミナントですね。そしてまたしても、非常に長い・・・(演奏)まるでオペラのレチタティーヴォ(普通の話し言葉に抑揚をつけたような歌い方のこと、だそうです)のようです。それから再現部へと移りますが、(再現部は)予想出来る範囲内の、あるべき形を取って・・・その後、とても詩的なコーダ。(演奏)・・・という風に、最後は気と化します。」

「第2楽章は、ベートーベンのソナタの中で初の『変奏曲形式』です。テンポはアンダンテ。私にとっては、とても愉快な楽章です。おわかりになるかと思いますが、ドイツでは『(歌うのを)やめなさい、面白くもない!』とすぐ言われますが・・・ドイツでは全てが『面白く』ないですからね(ドイツ人は生真面目・・・という意味の冗談)笑 ですが、本当にとっても面白い楽章なんですよ。なぜなら、これはまるでミニチュアサイズの兵隊さんのマーチのようだからです。子供たちが遊びで使うようなブリキの兵隊・・・軍隊ではなく、ね。(ですから)今時の感覚とは少し違いますよ。笑 とにかく・・・これがとても美しいんです・・・(演奏)キャラクター的には愉快な感じです。なぜなら、極めて『短い音』を使っていますからね。そしてこの部分は、もちろん短い音で演奏されるべきだと思います。最近の演奏家は・・・こういった短い音を使うことを、ほとんど・・・恐れているかのような印象を受けますが。そしてそれは、この『コミカルに聴こえる効果』が原因でしょうけれど、(この楽章は)コミカルであるべきなんです。」

「Sir トーヴィーが面白い指摘をしていましたが、和声的にも実に愉快なんですよ。なぜってメロディーがハーモニーで止まる度、決まってそれはドミナントの和音なんです。これがハ長調で・・・こっちがドミナント和音ですね(演奏・・・そのまま続けてドミナント和音が出てくる度に、ドミナント!と言いながら演奏)それから、マーチ第二部は突然叙情的で美しく。レガートです。(演奏)・・・またコミカルに戻って(演奏)このように、アクセントは全てオフ・ビート上に置かれていますから、常に『間違った場所』というわけです。笑 もう一度、(違いに)慣れるために第二部を演奏してみましょうか・・・(ここで会場から咳が)・・・あ、誰かお水が欲しい方いらっしゃるのではないですか? どうぞ、ご遠慮なく・・・え、いらない?笑 ええと、とにかく・・・(とここで、会場から『すみません』という女性の声、と間を置かず)お気になさらず! お水いりますか? 遠慮しないで。ほら、受け取って。大丈夫ですよ。笑 それじゃ・・・(演奏)スフォルツァンドがあって・・・(演奏)それから面白いのが、ベートーベンは最初のパートは繰り返さずに、でも2回目は繰り返して。と指示していることです。」

「それから、最初の変奏が始まります。(ここはもう)コミカルではありませんが、弦四重奏を思い描いて・・・ビオラとチェロが第1モチーフを弾き、第1バイオリンがシンコペーションと共に伴奏をしていますよ。(演奏)第2変奏は『点描的』で、最初のモチーフのアウトラインをなぞる形です。そしてそれは、いわば印象派の絵画『ジョルジュ・スーラ』のようでもあり・・・散らばった点を集めていくと『絵』が浮かび上がりますよ。(演奏)ここはクレッシェンドなしで。そして、スビト・・・(演奏)そして4小節の『橋』があって・・・(演奏)それから、最後の変奏は『モルト・レガート』という指示付きです。非常に厳密なレガートですね。ここは本当のレガートで・・・ペダルで、という意味ではなく、崩壊しない程度に・・・出来る限りの音を指で繋いでください。笑 (演奏)美しい旋律が隠されていますね。そして、この変奏の後を・・・私は"Mars oublier"『忘れられたマーチ』と呼びたいと思います。・・・そういえば、今日は3月1日ですね。笑 ということで(演奏)・・・(休符のところで)忘れて・・・(演奏・・・ジャーン!という強い終止)ベートーベンはきっと、ここで人々が笑顔になることを期待したでしょうね。なぜって、(この最後の和音は)まるで顔に平手打ちを食らったような感じですから。笑」

「そして、この素晴らしいソナタは(ロンド・ソナタ形式の)スケルツォで終わりを迎えます。(第3楽章は)3/8拍子ですから、123、123、123ですね。しかし実は、リズム的にとても曖昧ですよ。なぜって2拍しか聴こえませんから。(演奏)12、12、12・・・と聴こえませんか? でも本当は(123、123、123・・・と、へミオラのリズムを示しながら演奏)・・・ここはフェルマータで・・・(演奏)それから、最初のエピソード(第2主題)は、非常にドラマチックに。(演奏)2つ目のエピソードは、このように素晴らしいドイツ舞曲風 ”Deutsche tanzen"です。 (演奏)そして、このドイツ風の踊りが終わると、ロンド主題が『間違った調』で出てきます。(演奏)・・・転調して元へ戻り・・・(演奏)・・・で、反復。それから、ドラマチックなコーダへ向かいます。まず、ロンド主題が著しく間違った調、ヘ長調で聴こえてきます。(演奏)・・・これが主調(ト長調)でしたね・・・(比較演奏)・・・とても遠く(ヘ長調)に来てしまいました・・・(演奏)ここでベートーベンはバスを半音階的に移動させて(演奏)・・・とこのように、まるで協奏曲のような素晴らしい終焉を演出するようなフリをしますが。しかし・・・彼がどんな風に終わらせたか聴いてみてください。(演奏)・・・と、こんな感じです。笑 本当にとってもユーモラスですね。それから、これは少し『リディアン風味』なんですよ。まず、ト長調が(ト長調スケール演奏)この4度を(半音高く)変えてみると・・・(オルタード・スケール演奏)ある種の『スパイス』が加わります。ちょっとした・・・胡椒みたいなものですね。」

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