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ピアノソナタ第20番 ト長調 Op49-2
2016-11-04 Fri 11:51
Part 2. Piano Sonata in G major, opus 49 no. 2


第三回目のプログラムより「ピアノソナタ第20番 ト長調 Op49-2」のレクチャー内容です。この曲の講義は30分弱です。途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。





「第19番の姉妹作とも言えるソナタ第20番は、さらに控えめな作品です。2楽章から成る美しい古典作品で、普通の『アレグロ』と『メヌエット』。そして両方ともト長調です。まずは、導入部を演奏してみます。

(第1楽章、導入部演奏)

そして、このあと導入部の反復です。美しく、非常に『典型的な』古典作品と言えますね。ですが、この作品をクレメンティやハスリンガー(Tobias Haslinger)などの、生真面目なソナチネと比較した場合・・・この作品は最高です。笑 とはいえ(ベートーベンの作品としては、多少在り来たりではあるものの)、小さな子供達にはこの曲を弾いてみるよう薦めたいと思います。そもそもとても美しい作品ですし、古典形式や奏法を紹介することができますからね。それからこのソナタには、ベートーベンからの説明書きがほとんどありません。(第1楽章には)強弱の指定がなく、第2楽章にたった2回『ピアニッシモ』と書かれているだけです。ですが、だからといって単色的に演奏すべきということではなく、演奏者は副・作曲家でなければなりませんね。そして、強弱を『作曲』してみるのです。それに、こういったことは素晴らしいと思います。なぜなら私達は、ある種の制約から解放されたわけですから。」

「ということで、私なら当然・・・健康的な『ポコ・フォルテ』で少し強めに始めます。♪ラン~ ララララ・・♪ (鼻歌と共に演奏開始)・・・そして続く部分はpで・・・(演奏)そして和音は再度アンダーラインを引くためにも、フォルテで・・・などなど。表現者ごとに、自由な創作をすることが出来ますね。なお、ここで大切なのは白黒はっきりつけてしまわないこと。緑・赤・黄色など様々な色彩を使って表現できると良いですね。と共に・・・これはあくまでも慎ましいソナタですから、Op.106(ハンマークラビア)やOp.111(第32番)のようなダイナミックな世界を取り扱っているわけではないことを、念頭に置いておきましょう。」

「さて、ここも非常に美しいですよ。導入部のこの部分は、8分3連音だけで構成されていますね。(演奏)ここが3連符です・・・(演奏)『たたた・たたた・たたた』と、常に3音ずつなのが3連符です。失礼・・・もちろんみなさんそんな事は承知でしょうけれど、中にはご存知ない方もいらっしゃるかもしれないので。そして展開部は二短調、非常にドラマチックに始まります。(演奏)・・・そしてイ短調・・・(演奏)イ短調、ホ短調、そしてロ短調ですから、常に5度ずつ連鎖しながら向かった先で、また新しい展開をみせます。(演奏)まるでチェンバロ音楽のような、あるいはオーケストラ風の、軽く叩くような8分音符が低音部に置かれていますね。(演奏)そして4小節だけ、繋ぎとしての『橋』を挟んだ後にト短調へ戻り、そこから再現部となりますが、(こうした流れは)いわば想定内であり、定型的かと思います。」

「それでは第2楽章をみていきましょう。すぐにお気づきになるかもしれませんが・・・(導入部、演奏)ほとんどの方はベートーベンの『七重奏曲 Op.20』をご存知かと思いますが、彼はこの章と同じ主題を(Op.20 第3楽章)メヌエットの中でも使っています。当然、別の調(変ホ長調)だということは明白ですが。しかし(この関連性は)私にとって特別な意味があります。なぜなら、私は七重奏曲に対して『ヴィレッジ・バンド(村の楽団)』的なイメージをいつも持っているので。まずコントラバスがいて、チェロ、ヴィオラがいて・・・彼らが伴奏をしているんです・・・(演奏)素朴な田舎の踊りですね。さて、このピアノソナタにはアーティキュレーションの指示がありませんが、ベートーベンはここで、8分音符を繋げず分離したまま左手側へ置いています。ですが、ほとんどのピアニストはこんな風に演奏しています。(模倣演奏)楽譜に『レガート』とは本当に書かれていないので、理由はよくわかりませんが・・・みんなここをレガートで演奏しますね。個人的には、ヴィレッジ・バンド風に弾いた方がよっぽど面白いと思います。(演奏)もちろん、もっと控えめにですが・・・(演奏)それで、メロディーはもちろんレガートですよ。つまり導入部は、メロディーがレガート、伴奏がスタッカートという風な変化がつき、その方が面白みが出ると思うんですよね。それから中間部は・・・(演奏)・・・そして、オクターブ上で繰り返し・・・(演奏)その後、最初のエピソード”couplet”クプレが出てきます。ここはたぶん・・・木管楽器でしょうか?(演奏)クラリネットやバスーン、フルートといった楽器が聴こえますよね。それから、ちょっとした推移があり、メヌエットが戻ってきます。」

「それで私は・・・この程度は許されるだろうとみなした上で、ちょっとした装飾を加えているわけですが。笑 そうしたら、ある時ローマの教授がやってきて『どの版をお使いですか!』と訊くので、私が『ヘンレ版です』と答えたら『しかし・・・装飾音を使っていらっしゃいましたよね』『yes, sir. 左様ですね、装飾音を使いました』『でも・・・楽譜にはないではないですか!』 そこで、『はい、でもまぁ・・・これはベートーベンの中でも特例的なピアノ曲ですし、第一、あれだけ即興演奏が得意だったベートーベンが、メヌエットの主題を6回全て同じ様に弾いたとは私には思えませんので』と言ったら、彼はこんな風(驚き)。そして「ま、まぁ・・・ハイドンやモーツァルトの作品においては、装飾音を加えてもよい。ということになってはいますが・・・しかし・・・ベートーベンで!」

そんなことを言われても。笑 ベートーベンにちょっと電話してきくわけにもいかないし・・・できたらよかったですけど。笑 ・・・でも本当に、音楽における即興的要素というのは古典だけではなく、全ての音楽にとって重要な部分です。そして、こんな些細なことすら論点になりえるなんて、私達は(音楽的理解の)乏しい時代に生きていると思います。とはいえ・・・もちろんこれは好みの問題で、好みは分かれますから、ある人にとって趣味が良いと思われるものが、他の誰かは違う意見をもっているかもしれない。意見相違が度重なるようならば、それはその人が悪趣味である兆し・・・ともとれますけれど。ですが・・・作品は本当にそれぞれです。私は、後期のベートーベン作品を装飾しようなんて絶対に思いません。しかしこの作品においては、例えばこのモチーフから・・・(シフさんによる変奏1・演奏)あるいは・・・(変奏2・演奏)・・・そして・・・(変奏3・演奏)常にほんの少し足すんです。だって、本当に6回とも同じであるべきではないので。とはいえ、これは単なる私見ですから、好むか嫌うかはあなた次第ですよ。笑」

「さて。第2のエピソードはハ長調です。そして、私なら・・・トランペット、ホルン、ティンパニーを配します。(演奏)・・・そして、弦楽器・・・(演奏)トランペットに戻って!(演奏)・・・そしてここが、例のピアニッシモが出てくるところです。たった2か所書いたうちのひとつですね。それから最後のメヌエットがあって、ちょっとしたコーダまたはエピローグ。そして、私はここでも(独自の解釈が)許可されることを見越して、この部分の伴奏だけはレガートで弾きます・・・(演奏)・・・なぜならここは違うので・・・(演奏)・・・と、これで終わりです。そして、この最後の2和音ですら、p(ピアノ)やピアニッシモで弾くか、あるいはフォルテに感嘆符をつけたければそれでも良く・・・つまりこういった選択は、あなたに委ねられています。私としては、このように控えめな楽章にふさわしく、こんな風に弾くでしょうけれど・・・(極めて軽く、最後の2和音を演奏) 大した問題ではありません、本当に。笑」




Beethoven Septet, Op. 20, Movement 3 Tempo di menuetto 『七重奏曲』
美しいです・・・
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