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ピアノソナタ第8番 「悲愴」 ハ短調 Op.13
2016-11-02 Wed 02:03
Part 4. Piano Sonata in C minor, opus 13 ('Pathetique')

第二回目のプログラムより「ピアノソナタ第8番 「悲愴」 ハ短調 Op.13」シフさんのレクチャー内容です。この曲の講義は26分と短めです。この日の最後の曲ということで、時間の都合もあったのかなと思いますが。それと、(wikiにも載っていますが)シフさんは1番の反復の仕方について独自の解釈を持っていて、この講義でも当然その話が出てきます。

ピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いていただけるとわかりやすいと思います。




「次は『悲愴』ですが、みなさん良くご存知でしょうから短めに。このソナタは、Op.10が書かれてからわずか1年後の作品です。『悲愴』は、ベートーベンの親しい友人で音楽的パトロンでの1人だった、リヒノフスキー侯爵に献呈されました。そして、タイトルはグランド・ソナタ、悲愴。その名のとおりの壮大さを感じさせるソナタですが、『悲愴』の部分についてはベートーベン本人が名づけたではありませんけれど、しかし(本人から)出版社への抗議は特にありませんでした。とにかく、熱っぽい苦悩に満ちた大いなる悲劇のようなこの曲は、まるでギリシャ悲話のようですね。」

「(第1楽章)最初の部分は『グラーヴェ』・・・(オクターブのトレモロ前まで演奏)・・・とこの後に『アレグロ モルト・エ・コン・ブリオ』へ続くわけですが、今私が演奏した『グラーヴェ』の部分は、通常『序奏』と言う風にみなされます。ですが、私にはやや違った見解があります。私はこれが第1主題(であり提示部の始まり)だと思います。なぜならこのフレーズは、のちに別の調で何度も何度も繰り返されますので。これは、後期の作品Op.111(32番)の序章とは性質が違うと思います。(32番、第1楽章の序章を演奏)・・・これは繰り返されません。このようにアレグロから先へ行くと・・・(演奏)・・・この先、序章の部分のフレーズを聴くことは2度とありません。(こんなところが)『悲愴』はとても違うと思います。」

「さて。ですから・・・残念ながら初稿は紛失してしまってありませんけれども、初版を参照すると、繰り返しの記号は『アレグロ モルト・エ・コン・ブリオ』のところに付いていますね。(・・・ここ、という風に演奏)しかし、ルドルフ・サーキンが初めてこの曲を演奏した時のことを今でも覚えていますが、それは単に素晴らしい演奏だったというだけでなく、導入部の終わりで・・・(繰り返しのところで一番頭に戻って演奏)・・・という風に弾いたんです。あの時はみなショックを受けていたけれど・・・私はむしろ説得力があると思いました。そうすることによって違った作品になりますので・・・構成上の割合が変わりますからね。ですから、ここを強く主張したいのですが、繰り返し部分は曲の頭に戻るべきです。そうすることによって、第1楽章が壮大なものとなり、それはその他の章によってバランスが取られます。その他の章は軽いですから・・・軽く小さな作品という意味ではなく、比較した場合、比率的に軽い割合という意味でです。」

「このソナタの付点付のリズムについて。バッハのパルティータ ハ短調を思い起こしてみると(パルティータの出だしを演奏)この非常にロマンティックな意思表示は、バロックまで遡ります。(演奏)とても厚みのある和音が、fp(フォルテピアノ)で始まりますから、強い打鍵のあとは即座に音量が下がらなければなりません(演奏)とても難しいですが、ちょっとしたコツがあって・・・和音を打鍵した後、その音をペダルで保持したら、2回か3回鍵盤を押し直すのです。音は立てずに。・・・あまり、こと細かに専門的すぎることは言いたくないんですが(笑)。でも、重要なんです(笑) (もう一度模範演奏)・・・なぜなら、この突如のダイナミズム変化を成し遂げなければなりませんので。(今度は音の変化を口で模倣して)・・・わかりますか? ベートーベンが欲しがっているのは、そういう音なんです。」

「(演奏)そして、不協和音・・・(演奏)・・・さらに上回る不協和音・・・(演奏)・・・緊張を高めて・・・(演奏)・・・今度は許しを請うように・・・(演奏)・・・拒絶・・・(演奏)・・・2、3、4・・・(と休符を数えたあと、演奏)・・・ここは、技巧的な見せ場ではありませんから、速すぎないように。そしてクレッシェンドもしません。いつもここで、すごいクレッシェンドをしているのを聴くんですが、もしベートーベンがクレッシェンドしたければ、そう書いたのだから。クレッシェンドなしで・・・(演奏)・・・そしてここ・・・聴こえますか? (左のリズムを強調して)そして、ここはあまりピア二スティックとは言えないですね。こんな素晴らしいピアニスト(ベートーベンのこと)の書いたソナタが、こんなにもピアニスティックではないなんて、なんといったらいいのかわかりませんが(笑)まるで縮小されたオーケストラ音楽のようとも言えますね(演奏)・・・聴こえますか? 稲光や雷鳴が。(演奏)」

「・・・そして嵐はおさまり、それまでとは違ったテーマが始まります・・・(演奏)・・・この4音を覚えていますか? これが、こう変化したり(演奏)最後の章では(第3楽章の冒頭の4音付近を演奏)・・・このように全ては繋がっています。ですから・・・(演奏)素晴らしいテーマですね。ここは次へ繋がっていきますので、メトロノーム的な弾き方が正しいとは言えません。(演奏)・・・ここは『徐行』すべき・・・(演奏)とてもオーケストラ的です・・・(提示部終わりまで演奏)最初に戻りましょう!(と言って、最初の和音を奏でる)。

・・・提示部を2度弾いたら、『グラーヴェ』がドミナントで現れます。(演奏)・・・そしてここが重要ですよ。ハ短調へ向かう転調です・・・(演奏)・・・アレグロに戻って(演奏)・・・ほらね(と3楽章と比較演奏)リズムは違いますが(同じ音形です)。(演奏)・・・またしても、非常にオーケストラ風で、交響曲6番『田園』の中の嵐のようです。(演奏)しかし、このティンパニのようなドラムロールと共に、ドミナントへ辿り着きます。そして、再現部へ向かって準備が始まりますが、とても長いです・・・20小節以上の長さです。ドミナントで(演奏)・・・そして再現部があり、ここからは特に変わったことはありませんね。そして、コーダ。(演奏)大きな和音の後は静寂です。1、2、3・・・(演奏)・・・また静寂・・・(演奏)・・・そして、ここは深呼吸してください・・・すぅ・・・(演奏)アレグロに戻りますよ・・・(演奏) と、これが第1楽章です。」

「続く第2楽章はベートーベンのソナタの中で最も有名で、最も人気のある楽章のひとつですね。(名声に)ふさわしいと思います。しかし、感傷的に弾いてはいけないと思います・・・

(第2楽章を途中まで演奏)

まるで素晴らしい無言歌ですね。変イ長調、アダージョ。似たような調性関係(主要楽章からみて長3度下)がOp.10-1にも見られましたね。(断片的に演奏)・・・これは、アダージョ・モルトでした。今回は(ただのアダージョなので)普通のテンポです。そして・・・(演奏)・・・ここからは、オーケストラ全体による総奏が始まります・・・(演奏)・・・そして新しい何かが始まります・・・(演奏)ということで、ここはロンド的なもの+2エピソードですね。それから第1主題が戻ってきて、2つ目のエピソードが3連符の伴奏と共に戻ってきます・・・(演奏)・・・(ここの3連符は)クラリネットみたいですね。このように全てはオーケストラ風なのです。そして、ここはそのままオーケストラ風に、感嘆符と共に。(演奏)・・・そして(主調に)帰宅しました・・・(演奏)そしてベートーベンはこれまで3連符だった伴奏を引継ぎます。とても詩的でとても美しいです。それから、短いコーダです。(演奏)・・・そしてさよなら。(演奏)」

「そして感じの良い最後のロンドです(第3楽章)。最初に言いましたが、第1楽章はとても巨大ですから、第2第3楽章はそれと同じ重力には出来ません。そんなわけで、軽めに。(演奏)この楽章で『やりすぎる』のは間違いだと思います。つまり本来の性質以上に、大げさに演奏することは、ね。(参考演奏)・・・とこんな感じの、遊び心を持って。ですから・・・(演奏)最初の推移・・・(演奏)ベートーベンはここに『ドルチェ』と付け加えていますから、優しい雰囲気で。(演奏)そして新しい主題です。(下降音形の後のフェルマータまで演奏)・・・ここはライオンがいますね、少なくとも純真無垢な感じではないです。それから次のエピソードが始まりますが、これはとても美しく、バッハを彷彿させるような対位法が使われていますね。そして(対位法的に)組み合わされた2つのモチーフは、どちらも『裏』と『表』になることが出来ます。(演奏)・・・ここで(裏表)交代・・・(演奏)・・・また交代して・・・(演奏)・・・そして交代・・・(演奏)・・・フェルマータ。そしてここでバスが旋律を受け取るところもまた、美しいですね。(演奏)・・・ドルチェ・・・(演奏)・・・ここで少し変わっていますよ・・・(演奏)ここのフィナーレ、最終段階で、ベートーベンは『悲愴』の名を正当化し確実なものとします。第1楽章で経験したような壮大さを再度持ち出していますね。(演奏)・・・ここはナポリタンですよ。(演奏)このパッセージを覚えていますか?(第1楽章グラーヴェ最後の下降スケールを再度演奏し)ここはそれと対になっていて(演奏)ベートーベンは2つの楽章を一体化させていますね。(演奏)最後は疑問形が2回・・・そして(演奏)・・・(強い調子の)否定・・・(演奏) と、これで終わりです。」
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