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ピアノソナタ第4番 変ホ長調 Op.7
2016-10-29 Sat 00:46
Part 4. Piano Sonata in E-flat major, opus 7

第一回目のプログラムより「ピアノソナタ第4番 変ホ長調 Op.7」シフさんのレクチャー内容をお送りします。プラグラムは4曲構成ですので、ここまででやっと一日の講演分です。すごい情報量ですね。笑 4番に費やされた講演時間は26分程度、お話自体は少なめで、最後は第4楽章の演奏で締めくくられています。最後演奏を始める前に thank you for your patience. と、照れたような声で言っているのが印象的です。こういった表現を日本語に訳すのは難しいなと常々感じるのですが、言わんとすることは「ご静聴ありがとうございました」といった感じで「演奏させていただくので(長いけど)辛抱強くお聴きくださいね」という牽制も匂わせた謙遜的な表現で、なかなかうまいなと思いました。笑 もちろん、プログラム全体について「長話につきあってくれてありがとう」という意味も当然含まれていると思います。


さておき、今回もピアノを弾きながら説明されていますし、最後には素晴らしい演奏も聴けますので、出来れば音源を聴きながらどうぞ。




「これからお話する4番目のソナタは、私からみると・・・知られていないとは言いませんが、見過ごされている名作だと思います。op.2からわずか2年後に発表され、op.7となりますがバベット・ケグレヴィチ伯爵夫人(babette keglevich)に贈呈した作品とされています。彼女の詳細についてはあまり知られていませんが、数多くいたベートーベンの生徒のひとりで、きっととても才能のある素晴らしい演奏家だったんでしょうね・・・・このソナタは信じられないほどの技術を要求する、難しい作品ですから、理解して演奏するためには。またしても4部構成の、とてもボリュームのあるソナタです。ハンマークラヴィーア(ソナタ29番)を除いてこれよりも大きいソナタは見当たりません。そして本当に並外れた個性と奥行きを持つ絶妙な作品です。導入部を演奏してみましょう。

(導入部演奏)

「まるで『新しい言語』のようですが、(op.2が書かれてから)たった1~2年後の作品です。ベートーベンは、テーマとして別段印象的な旋律を配してはいませんが、この・・・(左手パートの連打演奏)8分の6拍子の『モルト・アレグロ・エ・コンブリオ』ですので、活気に満ち軽快な様子ですね。そして、繰り返されるミ♭は、まるでホルンの音色のようです。ホルンはこういった「パッパッパッパッパッ」という連続的な短い音を出しますからね。それから、逆方向へ向かうスケールを上下しながら・・(演奏)サブドミナントへ向い・・・(演奏)ドミナントへ到着後、そこで初めて旋律的なテーマが出てきます。(演奏)素敵なテーマですよね、大好きなんですよ・・・だってまるで・・・♪イッヒ リーベ ディッヒ イッヒ リーベ♪ (ドイツ語で突然歌う:笑)たぶん、ベートーベンは恋していたんじゃないですか、このバベットさんに・・・知らないけど(笑)」

「さて、そしてどちらかというと短めの展開部へと続きますが(op.2の展開部は長い)とてもドラマチックです。(展開部の一部を、アクセントに掛け声を足しながら演奏)ベートーベンの書く『リプリーズ(反復)』要点の繰り返しは、機械的なものではなく常に何か違っています。導入部での主題はp(ピアノ)で始まりましたが、それが意気揚々とフォルテシモで戻ってきますね。そして、またしても連続的な16分音符が聴いて取れると思いますが、旋律だけではなくこういったリズム的なパターンもモチーフになりえますよ。そして・・・(続きを演奏)懇願しているような旋律、非常に素晴らしいですね。この楽章の最後はオーケストラ風で、ティンパ二やドラムロールが聴こえてくるかのようです。」

(第一楽章の終わりから続けて、第二楽章の冒頭を演奏)

「私に言わせれば、この第2楽章は音楽史上もっとも美しい緩徐楽章のひとつです。『ラルゴ、コン・グラン・エスプレッシオーネ』 もうこの記載からして秀逸さがうかがえます。3度の関係調(ハ長調)にあたりますが、最初は変ホ長調でしたから(ふたつのハーモニーを弾き比べて)・・・これもまた、シューベルトが後に使いたがりそうな響きですね。そしてこの音楽の新しい点としては、成熟味を増した非凡さにあると思います。そして、それをベートーベンは『静寂』により成し遂げました。繰り返しますが、休符が極めて重要です。(演奏)・・・とこんな風に続くわけですが。これはABA形式で、中間部はというと、2番にもみられたように(二重構造で)ピチカートを伴奏にして、その上をコラール風の音楽が流れていきます。(演奏)・・革命的な新しい響きですね。そのあと、非常にドラマチックな反語的質問系がきて(演奏)・・・震える小鳥のようなピアニッシモが応答し、そしてそれに対してベートーベンは・・・ふたつのソのオクターブのところへ『クレッシェンド』の指示を書きました。ベートーベンは、これが不可能な要求だとわかっていたはずです。なぜなら、私にはこのクレッシェンドは出来ません・・・こうやって立ち上がりでもしない限り(笑)。ですから、ここはなんとかしてクレッシェンドのごとき幻影を生み出さなければなりませんね。ベートーベンは妥協と言う言葉を知らない人でしたから、不可能なことを要求するのです。そして、この章の終わりは・・・(演奏)」

「そして続くスケルツォの第3楽章だけは、他と違ってダウンビート(表拍)から始まります。そして非常に叙情的です。(冒頭を演奏)『シューベルトはベートーベンで、ベートーベンはシューベルト』といった印象ですね。中間部のトリオが素晴らしいですよ。変ホ短調で、とてもドラマチックです。ピアニッシモの中に、突然のスフォルツァンドです。(中間部の演奏)・・・まさにシューベルトといった感じですね・・・(演奏は続く)こういったところにも関係性がうかがえますね。」

「最終楽章(第4楽章)は(ベートーベンの作品の中だけの話ではなく)全体でみても最も豪華な旋律をもつ『ロンド・ポコ・アレグレット・エ・グラッツィオーソ』です。(提示部の演奏)今の部分が、後で繰り返されるロンド主題ですが、これはソナタロンドなので調を変えたり別要素を含んだ形で再現されます。そして、ソナタ2番でもありましたが、ここでも『美女と野獣』が登場します。(演奏によるキャラクター比較)64分音符を伴奏に、とても厚みのある強い和音がフォルテシモで演奏されます。非常に基本的なものが、洗練された音形に合わせられています。それから、終盤に向かって素晴らしい瞬間があり、それが変ホ長調から遠隔調にあたるナポリタン調のホ長調への転調部分となります(コーダ)。もしベートーベンがハイドンの弟子でなかったなら、こんな風には書かなかったはずです。なぜなら、ハイドンの最後のソナタを知っているかと思いますが・・・(ハイドンソナタの演奏)・・・これが最初の楽章で、第2楽章は・・・(演奏)・・・ホ長調です・・・とても遠隔調ですね。ですから、ベートーベンがどのようにしたかというと・・・(演奏)ホ長調の上に漂っているかのようで・・・(演奏)それから後退して、変ホへ戻り・・・(演奏)・・・それから野獣への繋がりがありますが、野獣は飼いならされて友となり、ベートーベンからの別れの言葉へと繋がっていきます(演奏) それでは最後に、この第4楽章を皆さんのために演奏させていただきましょう。」
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