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ピアノソナタ第3番 ハ長調 Op.2-3 
2016-10-28 Fri 00:30
Part 3. Piano Sonata in C major, opus 2 no. 3


第一回目のプログラムより「ピアノソナタ第3番 ハ長調 Op.2-3」シフさんのレクチャー内容をお送りします。今回の講演もボリューム的には21分です。時々、シフさんが抑え切れずに鼻歌を歌うところがすごく楽しそうで、好きです笑 実は、シフさんが説明に使う音楽用語を理解するのに、和声のお勉強が微妙に役立っていて嬉しいです。それと、タイトルを遡って全て日本語表記に変えました。その方があとで読む方が探しやすいかな、と思ったので。それと次回からは、限定記事にするかもしれません。

さておき、今回もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いていただけるとわかりやすいと思います。





「3番目の作品は、とてもよく知られたソナタです。調性はハ長調・・・特に変わったことはありませんね。そして、第1楽章は4分の4拍子で『アッレグロ コン ブリーオ』と指定されています。普通のアレグロではなく、活気がある元気のよいアレグロですね。そして、ものすごく可笑しいです・・・いや、わたしにとっては(笑)。(提示部の途中まで演奏)活力のある素晴らしい作品ですね。ソナタの中ではあまりみることのない、ピアノ協奏曲風のカデンツァが置かれています。一般的に、こういったカデンツァはオーケストラが止まった時に(・・・といってピアノ協奏曲的カデンツァのモノマネ演奏)。しかし、ソナタとしては一風変わっていますね。ですから、このユーモア溢れる楽しい冒頭部分(またしても弦楽四重奏的です)の後に疑問符があります。これはまるで『大きな期待感』のようですね。(主題を再び演奏)そして、今の部分が弦楽四重奏のソロだとしたら、この後全体が加わりトウッティ(総奏)となります。とても明るい音楽で、全く不機嫌さやくすんだところは感じられませんね。とはいえ、ベートーベンはこの章でいろいろなテーマを使っていて、旋律的および主題的発案をしています。先ほどはここまででしたね(少し演奏)その後はこんな感じです(演奏)。今の部分が提示部です。ほとんど説明する必要はないと思えるほど、様々なテーマのキャラクターが聴いてとれますね。歌っていたり・・・ここはとても可笑しいテーマです(トリル風なところを演奏)。まるでガボットのようですね(ガボットのリズムを鼻歌)そして、協奏交響曲風なファンファーレで幕を閉じます。」

「では、展開部を少しご紹介しましょう。なぜならここは、何年も後に書かれるピアノ協奏曲第5番『皇帝』を、すでに見据えている感じがあるからです。(演奏) さて、とても遠い調にたどり着きました。そしてまた大きなカデンツァです。本当に『皇帝』を思い起こさせますね。そして、ベートーベンは主題を(主音から数えて)4度の調(二長調)で再登場させます。ところで、いかに休符が重要であるかを再確認することができます。少なくとも、休符は音符と同等に重要です。・・・ここウィグモアホールの観客のみなさんは、素晴らしく聞き上手です。なぜって、誰も休符のところで咳をしませんから(笑)。だって、想像してみてください。演奏していて・・・(といって演奏しながら、休符のところで咳をするシフさん笑)・・・こういうのはあまり・・・よろしくないですね。とにかく、そしてベートーベンはこのモチーフに肉づけをしていきます。(演奏)いつもスフォルツァンドで・・・こういったスフォルツァンドは真面目に受け止めなければなりません。よくアイロンがかかったような、角を丸めたような演奏を耳にしますが、それは大きな間違いです。ベートーベンは決して滑らか作曲家ではありません。彼は水彩画家というよりも、むしろ素晴らしい彫刻家です。ですから、大理石や御影石の表面のように。」

「そして次は・・・(カデンツァについてはもうお話しましたが)四六の和音で止まった後、完全形として書き出したカデンツァが小さな音符でずらっと並んでいます。そして(233小節目のの下降スケールを弾いて)ここ、おもしろいですね。オペラのパロディのようで、プリマドンナが「あぁぁぁぁ~♪」と歌っているみたいに。ですから、この部分はあまり速く弾かない方がよいでしょう(といいながら再度弾き、プリマドンナ風に鼻歌)。私の良き友人で同業者のアルフレッド・ブレンデルは、音楽にみるユーモアについて書いていますが、このソナタはその良い例です。」

「第2楽章は、『アダージョ』とだけ記されていますが、もちろん普通のアダージョではなく、非常に秀逸な楽章です。ホ長調ですね。(演奏)見事な平静さ、静寂さがあり、ここで再度休符の存在が非常に重要になってきます。これは反語的問いかけですね。そして疑問につぐ疑問を投げかけながら、常に同じハーモニーで止まっていますが、奇跡的にも単調さを全く感じさせません。(演奏)・・・トニック、ドミナントの形を4回聴きましたね。それから、半音上がって(続きを演奏)シンコペーションと共に・・・(演奏)女性的カデンツァですね・・・(演奏)疑問の投げかけがあり・・・(演奏)・・・そして、当然これ(トニック)を次に予期しますが、しかし音楽というのは常に『予期』と『驚き』です。

という風に考えると、次に来る新しい部分も非常に優れていますね。短調のピアニッシモ・・・(演奏)まるでバッハのいた世界を振り返っているようです。(平均律1番前奏曲の出だしなどを演奏して共通性を示唆)バス音はオルガンのようで、その上に形成される旋律の破片(演奏)。さて、ト長調へ到着しました、平行調ですね。新しいモチーフはソスピーリ『ため息』のテーマです。(演奏)ピアニッシモから・・・フォルテシモ。この、同じモチーフをフォルテシモで爆発させる部分は、シューベルトの未完成交響曲を彷彿させます(といって少しシューベルトを演奏)・・・またしても偶然ではないですよね(笑)」

「それで、このゆったりした楽章はいくつかの変奏を含んだABABA形式を取っていますね。ベートーベンは絶妙な変奏の達人で(もちろんハイドンの影響もありますが)ディアベリ変奏曲のことだけを言っているのではなく、彼のさまざまな主題や装飾の仕方など、単に見たとおりの印象とは違った『変装』をして現れます。」

「次にくるスケルツォの章(第3楽章)は、再びユーモアのある章です。おわかりのように、メヌエットとトリオと記された3楽章はたくさんありますが、この時点では既にハイドンが『スケルツォ型の第3楽章』というのを編み出していました。スケルツォ・タイプは構成的に規模が大きめで、なおかつ速めの3楽章です。(第3楽章をすこし演奏)・・・少しハイドンっぽいですね。戻るポイントを曖昧にして、まぁ好きなだけ永遠に繰り返してもいいんですが・・・。しかしスフォルツァンドはいつも3拍目に置きますよ。そして、これはp(ピアノ)の中でのスフォルツァンドですから、とてもさりげない感じです。この楽章のトリオは平行調の短調、イ短調ですね。(トリオの演奏)嵐のようですね。テンポの変化はありませんよ。それから、ベートーベンはフォルテとは書いていませんから、どうして多くのピアニストたちはここをフォルテで弾くのか、理解に苦しみますが・・・ここはp(ピアノ)ですよ!(笑)ベートーベンが本当に(フォルテと)書くまではね」

(演奏)

「これは大きなスケールのスケルツォですから、ベートーベンはコーダを加えました。そして、それはまたユーモアがあり、スケルツォはこのような(演奏)下向きの跳躍で終わりますが、彼はそれを(コーダに入ってからも)継続し(コーダを完奏)・・・という風に場面から消え去ります。」

「最終楽章(第4楽章)は、大方において直球なアレグロ・アッサイ、非常に速いです。そして再度、ユーモアがあります。(演奏)演奏者のよくある間違いとして、この楽章を速いテンポで始めすぎて9小節目に来た時に減速してしまいます。音符がたくさんありすぎますからね(笑)ですから、演奏者はテンポを考慮する時に、一番小さい音価を設定基準として置くことがとても大切と言えます。そうすれば、賢くアーティキュレーションもつけられますから。ということで、これはロンド形式の素晴らしい楽章です。ひとつだけ付け加えておきたいのが・・・(演奏)ここのパッセージとブラームス作品の類似点についてです。(ブラームスを少し演奏後)これも『泥棒』のひとつですが・・・しかし、深刻ではないものです(笑)。以上で3番を終わります」
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この記事のコメント
タワシさんへ
タワシさん、こんにちは!

あ、mixiの方だったんですね。こういう内容がお好きな方に読んでいただけるなら、よかったです。宣伝(笑)ありがとう。

>私は今ベトソナやってないし今後も当分はやるつもり無いんですが、ああいうレクチャーって、自分の今練習している曲でなくとも、音楽全体に通じることも結構あるので勉強になりますよね。

当分予定がないのですね・・・ちょっと残念。この3番の2楽章がすごく素敵で、今譜読みしてるんですが、私よりもむしろタワシさんの音に似合いそうだな~って思っていたんですよ。ただ、おっしゃるとおり、音楽全体に通じるというのはありますよね!

>あ、ヨルステルも聴いてくれてどうもです!そうそう、意外と弾きにくくてアップまで時間かかっちゃいました~(しかも大ミスやってるし・汗)

大ミス、言われなければ全然気づかないです笑 全体がよければそれで良しと思います。
2016-10-31 Mon 13:21 | URL | ゆにくあ #-[ 内容変更]
ありがとう~
さっそく、ピアノつながりのマイミクさん限定でURL教えました。
あっという間にイイネ!がいっぱいつきましたよ~(^^)v
私は今ベトソナやってないし今後も当分はやるつもり無いんですが、ああいうレクチャーって、自分の今練習している曲でなくとも、音楽全体に通じることも結構あるので勉強になりますよね。さくっと目を通した程度ですが、時間のあるときにじっくり視聴させていただきますね~

あ、ヨルステルも聴いてくれてどうもです!そうそう、意外と弾きにくくてアップまで時間かかっちゃいました~(しかも大ミスやってるし・汗)
2016-10-30 Sun 19:55 | URL | 私はタワシ #5eVrhZok[ 内容変更]
タワシさんへ
タワシさん、コメントありがとうございます~
(ヨルステル聴きましたよ! 素敵でした☆ あの曲、意外と弾きにくいですよね~。)

>相当の時間と労力が要りそうな気がするのですが、

うーん、20~30分程度の内容ならたいして時間はかからず、シフさんのお話に感銘をうけているうちに終わってしまいます☆ ただ全部で32本あるということを思うと・・・時間がとれるか、やや心配(笑)
 
一応、翻訳機に突っ込んだら出てくるような文章にならないよう、また勝手な自己流解釈を足さないよう気をつけているつもりですが、疲れてくると雑になるので(笑) 思うに、この辺は音楽と全く同じですね。

>読み応えありすぎて追いついていません(^^ゞ 

も~長いでしょ(笑 すいません、ほんとに(汗 しかしお時間のある時に、お好きな曲だけでも、ぜひ! だって、これらは他ならぬシフさんの見解ですから(私は訳しているだけ笑)。

>私のマイミクに、この記事紹介したいと思っていますが(シフさんのファンがいるので)、URL教えてもかまいませんか?

あ、そうなんですね。もちろんもちろん、URLどうぞです。そういうことであればもう少しの間、全体公開で書いておきますね。
2016-10-30 Sun 11:48 | URL | ゆにくあ #-[ 内容変更]
おお~っ!何やらすごいプロジェクトが進行中でありますね。全部を訳すにしても要約するにしても相当の時間と労力が要りそうな気がするのですが、ゆにくあさんの才能を持ってすれば意外にサラサラっとなのかな?(笑)
いったん手を付けたら徹底的にやり遂げるゆにくあさんなので、きっとあっという間にベトソナ全曲コンプリートしちゃうんでしょうね。読み応えありすぎて追いついていません(^^ゞ 時間のあるときにできれば楽譜と付き合わせつつじっくり拝読したいと思っています。

>次回からは、限定記事にするかもしれません。
え~そうなんですか!?
私のマイミクに、この記事紹介したいと思っていますが(シフさんのファンがいるので)、URL教えてもかまいませんか?
2016-10-29 Sat 16:52 | URL | 私はタワシ #5eVrhZok[ 内容変更]
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