AX
3年と3か月。その2
2016-11-30 Wed 16:29
レッスンでした。。。


その前に。


そもそも・・・昨日の昼間、練習したんです。
朝から気持ちよく目覚めて、体調も気分も良く
指も割と回る日だったので、部分練習にも集中して、
滑るところを丁寧にゆっくりと練習したりとか。

しかし午後になり、子供達が学校から戻って来て、
「ゲーム聴こえないからデジピ使ってよ~」と苦情があり

(んー十分やったし、こんなもんでいっか。疲れたし)

とそこでその日の練習は切り上げて、そこからは
子供のゲーム何時間も見つつくつろいでたんだけど笑


「ドラゴンクエストビルダーズ」


これが、悪いんですよ。

もーね、ドラクエがうちにあるのに、
子供達が思いっきりゲーム権奪い合って
遊んでるのに・・・


私がやらないわけにいかないじゃないですか。


ということで「レッスンあるからドラクエ我慢」という
自分で決めた掟(2日しか守っていない)を破り、
夜11時過ぎから始めて気づいたら


朝8時。。。


こういうやりこみ系はダメだって、マジで。


あとドラゴンみつけちゃったから、そしたら倒す
じゃないですか、普通。だけど、武器こんぼうで
ドラゴン戦ってすっごい時間かかるんですよ。。
あっちHP400だもの。

しかも告白すると・・・
大変大人げない私は、商品についてくる
ダウンロードコンテンツ(スライムの壁柄とか
三つある)を、子供達を差し置いて・・・・
自分のアカウントに使いました。

(ジョシュアが知ったら怒るから隠しているという)


それで、


はっ!!


いかん、今日はレッスンだった。焦
寝なくては!! 

となって・・・11時まで3時間寝て、起きてから
部屋を片付けたり、掃除機かけたりとか・・・
普通に朝の行事を済ませて、さて、先生があと
30分で来るから、少しピアノ触っておこうと
弾いてみたら、今日はいつも以上に弾けない。


・・・・・やばい。


そして焦ってるから、余計弾けなくなる。で、
大慌てて部分練習してるところへ、先生到着。



*********


それでレッスン。


注意された点は、前回とあまり変わりません。苦笑
なので、ざっくり書くと


先生「全小節、間違ってたとは言わないけど」 
        ↑
     さらっと言ってる笑


1)とにかく、全ての音がきちんと聴こえるように。
なによりも質を重視。テンポ落としなさい令。

2)ダイナミズムが中途半端。
例:pをppで弾かない。スフォルツァンドが弱く、
アクセントの役割を果たしていないところ多々。
スビトピアノ、ディクレッシェンド、クレッシェンド等
ダイナミックに。ベートーベンなんだから、と。

3)後半の3連符のところ・・・・

先生「少しだけ良くなった→でももっと練習」



その他、前回と違う部分は

同音連打のとこの指遣い(これは私が質問しました)

それと、夢の世界アルペジオ部分。
          ↓
先生「あとここ、ダサかった。直しましょう」




あとなんだっけ・・・


あ、しょっぱなのアレグロ、スラーで繋がった
後ろの音にスタッカート置いて勢いつけるの
やめなさい&均等に。と言われたんだった。

それといまだに「音価が怪しい」ところがあり。
なので今日、先生の口から一番出た言葉は


「 だ か ら 楽譜どおりに」



先生、わざとじゃないんです・・・ほんとです。泣




第2楽章は、またもや時間なくて


ゆにくあ「あと何分ありますか」

先生「2分」

ゆにくあ「え~!泣 」


とかいう状態だったので、またしても
トリルの確認しただけで、次回へ先送り。



レッスンの最後に、次の日程決めてる時

「それにしても、あなた頑張ってるわね~。
ホントにお世辞じゃないから。すごいわよ~」

となぐさめられました。。




ちょっと・・・シフさんの1週間くらい
またお休みしていいですかね。。

いや、ドラクエのせいじゃなく!←



練習、また別角度からやり直しなので。。




いやぁ・・・ベートーベン・・・難しいわ・・・
だけど・・・すっごく楽しいです。

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癒しの第2楽章。
2016-11-29 Tue 02:00
ゆにくあです。。


ごちゃごちゃ書いてる暇があったら、
出来ない3連符のとこ練習をしろ・・・と
自分でも思いますが笑


まぁいいじゃないですか、ちょっとだけ。



今ね、17番第1楽章と平行して
第2楽章も譜読みしていますが。


なんだか知らないけど第2楽章が、
やたら良いんですよ!

ゆったりした3拍子。
癒され感が半端ないです。
眠ってしまいそうです。



そもそも第1楽章は緩急が激しく、指が回らない
ところとか、ペダルとか、あちこちストレス溜まる
ので、ほぼ部分練習ばかりになってますが・・・
その日の練習にある程度の目処が立つと、

なんだろう・・・第2楽章を続けて弾かずに
いられない
感っていうんですか。

いや、厳密には・・・第2楽章を
弾いてるつもりにならずにいられない感。


それでも・・・弾けていない部分は脳から
自動消去して、綺麗に響いている所の
情報だけをピックアップできる特殊能力が
備わっていますので、間違いだらけなの
にも関わらず、なぜか



・・・うっとり。笑



そうそう、

1ページ目の真ん中あたりから始まる
バスとソプラノを行ったり来たりする

上の・・・ド、距離的に腕がギリギリですが
シフさんいわく、腕をクロスする演奏方法は
太っていると出来ないそうですが・・・
とりあえず、これ以上の自虐は辛いので
ゆにくあは腕が短い。ということにさせて
ください。

それで、そこ
気持ち的には優雅に弾きたいのに、毎回
音外すんじゃないかって緊張します。

そして、左手が右行ったり左行ったり
してる間、右手は美しく歌っている・・・
べきなんですが・・・・・・・・・・・・・・・・・







そして、第3楽章も少し見ましたけど
出だしから、あのスピードの中で
左第2音保持とか、


・・・難しすぎます。


これは私には弾けないと思ったので
その先を見るのはやめときました。



あれ、なんか愚痴だらけになってる。汗

違うんですよ!

第2楽章が素敵だと
そういいたかったんです。




・・・さてと、んじゃ練習しよっかな。




*********


そして、8時間後。。


いや、8時間ぶっ続けでピアノ
弾いてたわけじゃないですよ 汗


途中で洗濯物畳んだし。
夕ご飯も作ったし。

しかし今日は一日、
1か所ずつ、お手本と聞き比べて・・・
私のテンペストはどうしてこうもダサいのか。

というのを調べながら、リズムやアクセントを
直しながら・・・直してまた聴いて、そうすると
お手本は3割くらい速くて(笑) 

あそっか、そんなにさっさとやらなきゃいけないのね。

とまた直して・・・比べると・・・やっぱまだ変で・・・


あ゛~~~!!!

というのを延々と繰り返しているわけですが。

ちょっと、愚痴。
愚痴言っていいですかね~




テンペスト、マジで疲れます。。


こんなに体力消耗する曲は
幻想曲以来かもしれないです。

冬場なのに、汗かきますからね。

いや、フロリダだからじゃなく!


だいたい、一回アップしたやつに
追記したって、誰も読まねーよ。
誰に向かって言ってんだよ。

って感じですが、
もー言わずにいられないんです。


 これ
  ↓
tempest 2


もーやだ、ここ! 泣

実質、隣同士なのに・・・
13と5とか超弾きにくいから!

指かえるとちょいマシに感じる
こともあるけど・・・4でも5でも
どっちにしても同じなんだよぉ~

だって4小節も続くんですよ。

っていうか、そんなやつばっか
全部で20小節続くんだよ!

tempest 1



ゆっくりなら別に疲れないんだけど・・・
それじゃここだけゆっくりになるし笑

そしてテンポ上げると何回やっても
最後の赤いとこまで体力が残らず
ヘロヘロで、指が・・・
砂漠で水を求める人状態・・・


別に力入れて弾いてるつもりもないん
だけどなー。力入ってんのかな、やっぱ。


あ゛~~

ここが一番かっこいいところなのに~泣



つーか、レッスン水曜なのに~!

先週まるまるピアノ弾かなかったのは
大きい・・・。


はぁ。


【愚痴終了】


・・・・・練習に戻ります・・・・・・・・・

なにか、ひらめくかもしれないし。
捨てた希望を拾って、もうちっとやってみます。
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ピアノソナタ第17番 「テンペスト」 ニ短調 Op.31-2
2016-11-29 Tue 00:35
Part 2. Piano sonata in D minor, opus 31 no. 2 ('Tempest')

第五回目プログラムより「ピアノソナタ第17番 「テンペスト」 ニ短調 Op.31-2」のレクチャー内容です。この曲の講義は40分です。今回は時間の関係上、大まかな意味で訳している部分がありますことご了承ください。途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。


We are such stuff as dreams are made on, and our little life is rounded with a sleep.
我々は夢と同じ物で作られており、我々の儚い命は眠りと共に終わる - プロスペロー





「さて、『これからは新しい方向性を模索する』と述べたベートーベンですが、その答えはこれからご紹介する2つ目のソナタ(Op.31-2)の中にあります。このソナタは、非常に認知度が高い作品で、それもそのはず・・・史上最高傑作のひとつだからです。二短調ソナタ・・・私達はこれを『テンペスト』と呼びます。なぜなら、ベートーベンの秘書で伝記著者のシンドラーが、ベートーベンにこの曲の解釈を尋ねた時『シェークスピアのテンペストを読みたまえ』と言ったということになってるからです。ですが、この作品は標題音楽ではありません。交響曲『田園』の副題にあった”Mehr Ausdruck der Empfindung als Malerei“-絵画的表現よりも、さらに音に感情をのせた作品。少なくとも交響曲『田園』の時は、鳥の歌声があり・・・ひばりやナイチンゲールの存在がありました。しかし、このソナタにはそのような示唆はまるでありません。ですから・・・みなさん、もちろんシェークスピアの『テンペスト』をご存知でしょうね・・・そして、なんて素晴らしい作品だろうと思いますけれど、『テンペストのどの部分だろう』だとか『どの登場人物だろう』などと共通点を探そうとしてみても、それは単なる憶測に過ぎないのではないでしょうか。ですが、ベートーベン作品のもつ深さや奥行きなどを示唆するような部分はありますね。もちろん実在論的に、極めて抽象的な題材について話していますけれど。」

(冒頭のコード演奏)

「どうしたら、こんな風に『ソナタ』を始められるでしょう・・・1802年に。主調の上にすらいませんね。これはドミナントの6の和音です。これからニ短調が出てきますね? ですから・・・(ハーモニー演奏)・・・第1展開形・・・(演奏)そして『ラルゴ』と指定されていますね。トニックから始めず、基本のテンポから始めないというのは、非常に斬新です。このソナタの最初のページには、既に3つのキャラクターと3つの速度が記されています。では、もう一度演奏してみましょうか。・・・それから非常に重要なことですが、ベートーベンはここに『ペダル』という文字を書いています。つまり、ハーモニー全体をペダル付きで、ということですね・・・(演奏)この和音の上でフェルマータです。(演奏)そして今度は『アレグロ』と書かれています。これは新しい速度、新しいキャラクターです・・・切迫感を表していますね。それから『アラ ブレーヴェ』ですから、1小節ごとに2つ数えます。1、2、1、2・・・という風に。(演奏)そしてこの不協和音の上には・・・『アダージョ』と書かれています。ですから3つ目の速度ですね。それからここは、ミニ・レチタティーヴォです。(演奏)のちほど、長いレチタティーヴォも出てきます。そんなわけで、『テンペスト』だけでなく『レチタティーヴォ・ソナタ』と呼ばれることがあるのです。」

「さて、ラルゴ・アレグロ・アダージョが出てきました。アダージョがこれらのテンポの中で一番遅い速度ですね・・・ラルゴよりもゆっくりですよ。そして、ラルゴへ戻ります。(演奏)とても新しい調です・・・(演奏)・・・フェルマータ・・・アレグロに戻ります・・・(演奏)実は、ここで初めて『家』へ戻った気分になります。二短調、主調へ到着しましたからね。そして次にバスから聴こえてくるのが、この『マンハイム・ロケット』的な主題です。初回からご一緒いただいている方は、既にご存知かと思いますが、『マンハイム・ロケット』というのはこういう形です・・・(参考演奏)3和音が空に向かって上昇していく形です。あるいは・・・(参考演奏)ということで・・・(演奏)たった4音ですが・・これらのテーマと関連した形です。そして今度は、オーケストラ風の質感に耳を傾けなければなりませんね。なぜなら、ベートーベンはここへとても厚い”tremolando”-トレモランドを置いていますので。それはまるで弦楽器が一斉に・・・(演奏)・・・それからこの、すがるような、お願いですから・・・と絶望的に懇願するモチーフ。(演奏)」

「そして、ドミナントのドミナントまできました。それから・・・これは・・・もう本当に、ピアノという楽器の遥か上を行っています。そして、当時の楽器ということですらなく・・・達観したベートーベンはオーケストラ的な音を念頭に作曲していますから、もう(彼が求めているのは)ピアノという単一な音ではないんです。(演奏)・・・信じられないほどの興奮と扇動感・・・(演奏)この形・・・私達は20年後、Op.111でこの形と再会します。(演奏)この2音を繋ぐスラーと、減七の和音ですね。では続けさせていただきます。(演奏)新しいテーマのようですね・・・そしてナポリの六度ですから、それはそのとおりです。(ハーモニーの比較演奏)しかし、ここに注目して・・・(演奏)それから、ほんの数秒前を思い起こしていただくと・・・(演奏)同じテーマを逆さまにしていますね・・・逆行的に。

これらは単に、いかにベートーベンが音楽や科学や数学などをとても意識して作曲していたか、ということをお見せするための小さな詳細に過ぎません。ですが(こういった解析的な話こそ)ただの科学以外のなにものでもありません。なぜなら、これらは分析しているからこそ気づくようなことであって、一度または何度か聴いたくらいで認識できるようなことではありませんから。・・・それと同時に、(こういった詳細は)たぶんたいして重要な事ではないかもしれません。偉人ドナルド・フランシス・トーヴィーが言っていましたが、『何でもいくらでもこじつけられるけれど、だからといって特に意味はない』・・・聴いて感じることだけに本物の価値があります。笑」

「ですから、ここで聴こえるものはというと・・・(演奏)と、バスへ移動しましたね。通常、ピアニストたちはこの部分をフォルテシモで演奏しますが、大きな間違いです。なぜなら、本来はp(ピアノ)の中でスフォルツァンドだからです・・・バスに移ってからは。(演奏)その方がよほど危険で、脅かされる感じですから。そして、最後のスフォルツァンドだけがフォルテシモです。(演奏)・・・これです(演奏)これがフォルテシモですね。それからスビトピアノ・・・『ただちに』ピアノです。(演奏)

この作品は、ベートーベン唯一のニ短調ソナタです。チェロソナタにもないし、バイオリンソナタにもない。この作品だけです。・・・それと交響曲9番、非常に有名な作品ですね。そして、ニ短調は・・・特別な意味を持っています。作曲家達はこれを『象徴的』に捉えて、それぞれの調性をある特定の『思想』と関連させました。ですからニ短調は・・・実在論的にベートーベンと深い関わりがありました。・・・ではここの展開を見てみましょう。(演奏)ここの『橋』のようなモチーフは、提示部の反復のために曲の冒頭部分へと繋いでいます。ん、これはなんでしょう・・・(演奏)・・・ヨハン・ゼバスティアン・バッハ 『ヨハネ受難曲』"Es Ist Vollbracht" -エス イスト フォルブラハト(BWV245-30)、素晴らしいアルトのアリアです。ベートーベンはこの曲をとても愛していたので、それをここで引用しているんですね。チェロソナタ イ長調Op.69 でも・・・(演奏)あるいは・・・Op.110 変イ長調ソナタでも・・・(演奏)ということで、これらは誤って用いられたモチーフではありません。」

「では展開部へ行ってみましょう。(演奏)夢のようなアルペジオへ戻ってきました・・・申し上げるならば、テンペストの主人公・プロスペローの世界です・・・哲学的かつ夢のようですね。ですから、夢の世界があって、それから現実世界があります・・・これです(演奏)これが『今』であり『現実』です。もうひとつは・・・(演奏)まず休符が書かれていますね・・・そして転調してさらに遠くへ・・・(演奏)・・・それから、最も予期していなかったハーモニーへ・・・(演奏)・・・乱暴に夢から覚まされ、現実へ引き戻されます。嬰ヘ短調。非常に遠く・・・(ハーモニーの比較演奏)ではこの部分から、もう少し弾いてみましょう。(演奏)展開部の最後の部分ですね。大きな嵐でしたが・・・全てを発散し疲れて・・・静まり、ドミナントの上で止まります。そして『レチタティーヴォ』です。(演奏)・・・と、ソナタの冒頭部分が繰り返されますが、またしてもペダルは踏みっぱなしです。全てが泳ぐように。(演奏)ここは、ピアノ・センプリチェですから、シンプルに・・・あまり大げさな表現は避けます。そしてここもまた、プロスペローの独白部分・・・と捉えることも可能ですね。それからアレグロに戻り・・・(演奏)」

「ここは再現部になりますが、なにかとても崇高で・・・革命的な再現部の書き方です。(演奏)第2部の『レチタティーヴォ』パッセージがピアニッシモで・・・(演奏)うんと遠くの・・・ヘ短調です。出口から非常に離れてしまって・・・いったいどうやって戻るつもりでしょう。(演奏)私はここを『鳥肌ポイント』と呼ぶんですよ。笑 とても恐ろしいです。・・・変イですが、と同時に次にくる和音の上声と同音異名ですね・・・変イと嬰トですから(演奏)・・・でも今は嬰ヘ短調・・・(演奏)・・・そしてト短調・・・(演奏)もうサブドミナントですよ・・・(演奏)そしてドミナント。では、もう一度演奏させていただきましょう・・・みなさん良くご存知かとは思いますが、ぜひ『新しい耳で』聴いてみてください。(再現部の途中~第1楽章の最後まで演奏)この第1楽章全体が前作とは違い・・・ひとつ前の作品では意図的に長いとお話しましたが・・・こちらは心理的に数秒で終わってしまいます。全てが凝縮されていて、とても短く感じますね。つまり、心理的時間という観念があって、長く感じるものもあれば・・・信じられないほど短く感じるものもあるのです。そして、その他の素晴らしい『心理的な影響を配慮して書かれたソナタ』同様に各楽章が連なっていますので、それぞれの楽章の間にはポーズを置かない方が本当に良く・・・そうすることにより・・・誰にも咳をするチャンスを与えませんし・・・とても申し訳ないですけれど」

「では第1楽章が終わりましたので、次の第2楽章が『中音』の変イ長調から始まります。(最初の和音演奏)ここの関連性がわかりますか・・・第1楽章・・・そして第2楽章(それぞれ冒頭のハーモニー比較演奏)とても素晴らしいアイディアですね・・・恐らくベートーベンは後から1小節目を加筆したんではないでしょうか・・・補足的に。例えば、ハンマークラヴィーア・ソナタ 緩徐楽章の1小節目が後から加筆されたもの、というのは既に確定した事実として知られていますね。ということで、まずベートーベンは1小節目で調の確定をし・・・(演奏)次は素晴らしい『アダージョ』です・・・4分の3拍子で。(1、2、3、1・・・と静かにカウントしながら演奏開始)ビオラやチェロを思わせる、素晴らしく暗い響きですね。モチーフ的に、第1楽章はこんな風に終わりましたね(演奏)・・・ファからレ・・・これは3度の関係です。そして今度は(演奏)レからファ・・・間に音を挟んだ形で。(という風に)全ては繋がっています。トービィーさんをイライラさせて悪いけれど(笑)でも、私にとってはこういった詳細が大切なので。笑」

「そして、オーボエのような管楽器の音で聴こえてくる3度のモチーフ・・・(演奏)・・・それに弦楽器が応えます・・・(演奏)このように旋律は分けられていて、全てが同じ楽器で演奏されているわけではありません。(演奏)これは本当に大胆な和音ですね・・・すごい不協和です。そして、素晴らしく深みのある暗い色調ですが、と共に驚くほどの穏やかさ、閑けさがあります。ここは2つの大きな嵐の間の休息・・・2つのテンペスト-第1楽章と第3楽章の間の休息ですね。(演奏)非常に素晴らしいですね。まるでティンパニのロール音のようです。・・・全ては非常に遥か彼方から。ここでは各々が遠近法的な表現を目指して演奏出来ると良いと思います。近くではなく、とても遠くです。そして、ここから素晴らしいコラールが始まります。(演奏)ここでも私達は、常に嵐の存在を想起させられます・・・一度は去った嵐ですが、じき戻って来るのです。(演奏)・・・(たった今演奏した部分を指して)こういった瞬間は本当に・・・ベートーベン作品だけが与えてくれる『人のぬくもり』だと思います。彼はここにドルチェと書いており・・・淡々とした楽章の中で突如感じる人間味、そして暖かさがあります。それから、修辞的な面も考慮すべきですね。語りかけや『歌』があり・・・そして次は歌の部分・・・歌唱モチーフです。(演奏)そして導入部が終わり・・・(演奏)それから、主題の変奏へ繋ぐ『橋』のモチーフは、わずか4小節から成っています。前出のソナタ、例えばOp.26(12番)は4楽章構成のソナタであるにも関わらず、ソナタ形式を含みませんでしたが、今回はというと3楽章構成。そしてその全てがソナタ形式です。ですが、この第2楽章は『展開部なし』の楽章ですね。」

「さて、このソナタの最終楽章は、これまた類稀な素晴らしさを誇る楽章です。『アレグレット』と指定されていますから、すごく速い楽章ではありません。残念なことに・・・通常とても速い速度で演奏されますが、これはひどい間違いです。もしベートーベンが本当に速さを求めていたならば、次のソナタで出てきますけれど・・・『プレッスティシモ・コン フォーコ』-できる限り速く・熱烈に、と書いたでしょう。けれど、『アレグレット』はそこまで速くありません。残念なことに、私達の愛するカール・チェルニー教授-素晴らしいピアニストのひとりであり、最も有名なベートーベンの弟子でもある彼が残した逸話によると『ベートーベンがこの最終楽章を書いていた時、窓際を騎手が馬をギャロップさせながら通り過ぎた』、と。お言葉ですが・・・この音楽の、どのあたりにギャロップが出てくるんでしょうか。これは逸話ではなく嘘だと思いますね。笑 (第3楽章の冒頭演奏)『ギャロップ』というと、私はこういった音楽を思い浮かべます・・・(演奏)・・・これはギャロップです。ですが、これは・・・(演奏)8分の3拍子、何かメランコリックな感じですが、ドラマチックにテンペスト風に変化します。」

「それと重要なのが・・・最初の4小節で、ベートーベンは常に第2音目を保持しています。(そこだけ模範演奏)・・・わかりますか? ですから、もし演奏者がここにペダルをつけてしまうと、そうする意味がなくなってしまいます。(ペダルをつけて演奏)ベートーベンの書いた『質感』が聴こえなくなってしまいますね。そしてのち、質感が変わるべき部分にその指定があります。つまり、どの小節にペダルをつけて、どの小節にペダルをつけないのか、という点を明記していますので・・・演奏してみましょう。(演奏)・・・そして今・・・(ペダルをつけて演奏)9小節目から異なった音のコンセプトなわけですね。それから、この楽章全体が小さな中断を含むペルペトゥム・モビレ(無窮動)なので、全体を通して似た動きがずっと続きます。そして、これがその『小さな中断』・・・(演奏)半音階スケールと共に現れる2つの感嘆符がとても痛々しく・・・(演奏)そして、始まる第2主題は・・・(演奏)ほとんど狂躁的に、主題から抜き出された2音がスラーをもって繰り返されています。ここで再度、第1楽章を思い出してみましょう。(冒頭アレグロとの比較演奏)ベートーベンの思想的プロセスが、うまくまとめられているのがわかりますね。それから・・・(演奏)不協和音の上に、スフォルツァンドです。・・・とこのように、どう努めても騎手の『ギャロップ』は聴き取れません・・・申し訳ないけれど。」

「そして続く展開部は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハへのオマージュです。(演奏)主題があり、その転回形があり、二重対位法・・・と、インベンションあるいはフーガのような作りですね。それから、これはベートーベン作品において時折みられる、非常に大規模なソナタ形式の構成となっており、特にこの作品をみると本当に『ベートーベンはパラレル(並列)の天才だな』と感じます。そして彼の最終楽章たちは常に、少なくとも前出の楽章と同等の出来で、この場合は『それ以上』に当てはまるかと思いますけれど・・・構成のバランス的な面でベートーベンのソナタは、そのほとんどの重みを最終楽章が背負っているところがあると思います。(ここで14番の時にもみられたベートーベン贔屓な発言があり)これは先駆者であるハイドンやモーツァルトの作品にはみられなかったことですが、ベートーベンの新しいところとして、非常に大規模な最終楽章を書いています。(重複発言、割愛)ですから、最終楽章を『天秤』の片側へ置き、第1&第2楽章をもう一方に置くことにより、時に彼のソナタは完璧な釣り合いをみせると言えるでしょう。」

「では、このソナタの最後をみてみましょう。(演奏)始まり方と同じく、とても非オーソドックスな終わり方ですね。このようにベートーベンは常に異端的で・・・そしてお聴きになったとおり、この作品のクライマックスでは、メランコリックな主題が栄華を極めた完全形で爆発します。それから、この3つ目の感嘆符は・・・(演奏)・・・最も深い失望です・・・そんなわけで、私はいつもこの作品を演奏し終わると心に波風が立ち、ほんの少しの間、静寂が必要になるんです。ですが・・・残念なことに・・・『私はこの作品を知っている!』と周りに誇示したい人というのが必ずいて、こうやって(終わりにさしかかると)『ブラァボー!』と(間髪いれずに)叫ばれるのですが。笑 もちろん私たち(演奏者)にとって、拍手は本当に有難いもので、みな大変感謝していますけれど。・・・お分かりのとおり、こういった瞬間の『直後には』最もふさわしくないと言えますね。笑」

別窓 | シフのレクチャーコンサート。 | コメント:2 |
お披露目。
2016-11-28 Mon 01:50
ゆにくあです。


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サンクスギビングだったので、旦那の実家へ帰省して
いました。 実家にはピアノもないし、一日料理したり
犬と遊んだり、旦那のお母さんやメルと油絵を描いたり
して過ごしました。上の絵は、メルが帰宅前夜にさらっと
描いたもの。なかなか良いと思ったので、お披露目。

シフさんのレクチャー和訳は、ここまでで32作品中
なんとか18本アップ出来ましたが、ここからは大作が
続くのと、気づけばまた次のレッスンが近いため、
落ち着くまで更新がまばらになるかもです。。


そういえば。

帰省している間、毎晩就寝前にいろいろな曲の演奏を
流し聴きしていたんですが、自分に一番足りない部分、
あるいは一番改善すべき点に気づけた気がするので、
それをこれからの練習に少しでも反映させられたら
いいなぁと思っています。。


別窓 | 雑記 | コメント:4 |
ピアノソナタ第16番 ト長調 Op.31-1
2016-11-28 Mon 01:29
Part 1. Piano sonata in G major, opus 31 no. 1


第五回目のプログラムより「ピアノソナタ第16番 ト長調 Op.31-1」のレクチャー内容です。この曲の講義は40分弱です。シフさんは私が思っていた以上に、自由奔放な男性だとだんだん思い始めました。特に第2楽章では好きな事を言いたい放題なので、オペラ好きの方がお気を悪くなさらないと良いのですが(苦笑 途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。





(第1楽章の冒頭演奏)

「(マイクの音届いていますか、といった話が続いた後)さて、私達は中間点へ到達しました。そしてここから、ベートーベンによる素晴らしい32のソナタ、後半部分へ入ります。これら(32曲のソナタ)は、非常にきれいに2つにわけることが出来ますので、例えばヘンレ版の第1巻をみると、最後はOp.28『田園ソナタ』で終わり、そして今私がちょっと演奏したOp.31-1から第2巻が始まるわけですね。

1801年、『田園』Op.28を書き上げた後。ベートーベンは、ヴァイオリニストのヴェンゼル・クルンプホルツに向かって、こう述べました。『私はこれから新しい道を進むつもりだ。今までの作品に満足などしていないのだから』 ・・・これはたいした自己批判ですね、本当に。なぜなら私には・・・どうやっても最初の16作品に落ち度などみつけることなど出来ませんから。笑 特に、前回のプログラムを思い起こしていただくと、変奏から始まるOp.26ソナタ・・・(12番の冒頭演奏)それから、2つの崇高なソナタ、Op.27・・・「幻想曲風ソナタ」と呼ばれるソナタですね。こういった作品は明らかに、ベートーベンが新しい形式や方向性を模索した、新たな試みだったと言えるでしょう。ですから、彼は本当に自分に厳しいと思います。しかしベートーベンは実に革命的作曲家ですから、常に新しい道を行き、同じ道は二度と辿りませんでした。・・・ふと思えば、私は同じことを繰り返し言い始めてますね!笑 ・・・ですがまぁ・・・ご容赦ください、私は口下手なのです・・・・ベートーベンもしかり。」

「さて。ではこの作品の新しい点とはなんでしょうか。まず表面的には・・・先のOp.26とOp.27が驚くべき成果を上げましたね。そして(この作品は)その時点からあまり時を置かれていません。ほんの1年か2年です。ですが、彼の健康状態は目に見えて悪化の一途を辿っていました。そしてこの時期に、かの有名な ”Heiligenstadt Testament”-ハイリゲンシュタットの遺書-がかかれました。みなさんよくご存知かと思いますが。これは最も心を揺さぶる文書のひとつで、この中で彼は身近な人間に向かい悪化する耳の病とその苦しい心の内を打ち明けています。

そしてOp.31は、もうひとつの3部作『ピアノとバイオリンのためのソナタ』Op.30の直後に発表されますが、このOp.31もまた3部作で、また最後の3部作でもあります。まず、最初の方の回を思い出してみると・・・(Op.2-1冒頭をさわりだけ演奏)このOp.2も、ひとつの作品番号の中に3つの作品がありましたね。そして、それから数年後にはOp.10ソナタ。これもまた同じように、ひとつの作品番号の中に3つの作品が入っていました。そして今回、これが最後(の3部作)となります。ですからドイツ語で言うところの”Rückblick”- 振り返って見ると・・・(こういった作品の組まれ方は)時に、実質的な理由から発生します。出版社が売りやすいですからね。ベートーベンは極めて良い意味で、とても現実主義な作曲家でした。自身を養っていかねばなりませんので。ですから出版社は・・・この時はスイスの出版社(者)でチューリッヒのネーゲリですが、彼(出版者)はベートーベンに対して頑強に3つのソナタを求めたわけですね、1つではなくて。それから、Op.2やOp.10でもみられたように、この3作品(Op.31)はそれぞれ全く異なった性格を持っています。そしてこれら3作品は、作曲家の3つの異なった顔を映し出しています。」

「最初のソナタ、ト長調はベートーベンの作品の中で一番『面白い』ソナタです。しかし私が説明するまでもなく、幸いにも既にアルフレッド・ブレンデルの素晴らしいエッセイの中で『クラシック音楽であっても、常に真面目である必要はない』と話していますからね。そういった事は、この国では当に良く知られていることではありますね。しかし、どの国にも言えることです。ですからこの素晴らしいエッセイ、あるいはベートーベンにとっての先駆者であり師でもあったヨセフ・ハイドンの功績により、既に私達は『クラシック音楽の中にもユーモアが存在する』という事実を知っていますね。ただ残念なことに、(そういったユーモアに)反応しない人々が存在しますけれど。とりわけ・・・ドイツ語圏の国々で。笑 そして・・・(と言いかけたけれど、会場の雰囲気を察して)あいえいえ、批判の意味で言っているんじゃないんですよ! とにかく・・・戦争はもう終わってると気づかねばね。笑

ですがとはいえ、いまだに『クラシックコンサートは非常に真面目な催しだ』といった風な作法がまかり通り、笑顔さえ作るべきでないといった雰囲気ですが・・・笑ったらいいですよ。それに、ハイドンやベートーベンのユーモアはとても洗練されていますから、安っぽい下品なユーモアではありません。このト長調ソナタの中のジョークは時にはとてもわかりやすく、またある時は非常にさりげないものです。その件については後ほど触れますけれど。」

「冒頭部分、それはとてもあからさまで(左右がほんの少しズレた演奏)・・・『どうかしたんですか、両手を揃えることすら出来ないの?』といった風です。これはどこから来ているかというと、19世紀頃の古いタイプの演奏方法です。私個人はこれを『オールドファッション』とは呼びませんが・・・とても美しいですし・・・例えばショパンのノクターンを演奏するコルトーですとか。(演奏)常に、左手が右手よりも髪の毛一本分ほど先に演奏するんです。ですが、私はこれを『癖』とは呼びませんね・・・これはむしろ音の物理現象です。それにウィーン交響楽団ですとか、その他の非常に素晴らしいオーケストラを聴いてみると、コントラバスはいつもバイオリンよりも先に演奏を始めています。なぜなら・・・ストラビンスキー以前の音楽では、和音は剃刀で切ったようにスパッと同時ではないんです。昨今の音楽評論家達は必ず、このオールドファッションな演奏方法を例に持ち出すんです・・・『左手が右手よりも先だ』と。当たり前ですよ・・・それが音楽的に演奏するということなんですから。『ペトルーシュカ』でもあるまいし。ペトルーシュカ登場以後・・・人生は変わってしまいました。笑」

「ですが、このベートーベンソナタでは正反対です。右手が左手よりも先に来ます。(演奏)・・・ということで、もう驚くほど面白いです。(とシフさんがあまりに淡々と断言するので、会場爆笑。それに気づいたシフさんは照れたように)・・・『私は』そう思いますけど!・・・面白いですよね?笑 だって、一貫して・・・『一緒ではない感』がありますから。『逆さま』な感じです。ということで左手ではなく、その逆ですよ。さて。このフレーズをお聴きいただくと・・・(演奏)極めて技巧的な盛り上がり部分ですが、実は・・・(演奏)ただト長調の3和音を反転しただけです。(演奏)ですが技巧的であるには違いありません。私達が今日ここでお話しているのは3つの非常に技巧的なソナタで、そもそもアマチュアに向けて書かれた作品ではありません。アマチュアの方も大いに演奏していただいて構わないんですが・・・非常に難しいです。(演奏)そして次に何が起こるかというと・・・(演奏)・・・とこれは来ません。ですが、ベートーベンはこれを移調して全音分下げます。これは非常に興味深い手法で、後にご紹介するこのソナタ・・・(ワルトシュタイン冒頭演奏)・・・そして何が来るかと言うと・・・(全音分下へ移動した部分の演奏)・・・まるで新しいアイディアのように思えますが、私達は(ワルトシュタインの)2年前に既にこれを経験しているんです、このソナタの中でね。(演奏)(と、ここまできても)まだドミナントの上です。そして、トニックへ戻るわけですが。」

「さて、技巧(フレーズ)は外へ向かって進みながら盛り上がり、ダイナミズム的にも非常に大きな幅があって、ピアニッシモからフォルテシモ・・・にはまだ到達していませんが、それもいずれ出て来ます。ベートーベンのソナタにおけるダイナミズムの稼動範囲は、ここに来て大きく成長しています。なぜなら初期のソナタでは、稀にしかこういった質感のダイナミズムがみられませんでした。『極端な』ダイナミズムという意味で。それから・・・(演奏)第2主題は全く違うキャラクターまたは手法で、民俗舞踏的。言ってみれば流行歌のような感じです。(演奏)特徴的なシンコペーションと共に。それから、それをバスへ移動させた上で短調に・・・(演奏)このような頻繁に入れ替わる長調と短調は、数年か数十年後のフランツ・シューベルトの音楽でも見ることが出来ます。シューベルトは恐らくこのソナタをよく知っていて、好んだのかもしれません。こういった・・・(演奏)短調・長調・フォルテ・ピアニッシモと変化させるこの感じは、非常にシューベルトっぽいですね。それから、今の部分が導入部の終わりとなり、導入部は反復され・・・そしてみなさんには、ぜひとも全てのベートーベンの反復記号を守っていただくように促したいと思います。特にここから先は、ベートーベンがどこで反復を望んで、どこは反復しないのかといったことが、非常に明白です。そしてこの判断は『演奏者次第』ではありませんので・・・とにかく作曲家を信用しましょう。(演奏)」

「展開部まで来ましたが、ここでもまだシンコペーションと『揃わない感覚』を保っていますよ。(演奏)それからベートーベンは、その『揃わない感覚』とは対照的に、ここへ大きなユニゾンを書きました・・・非常に技巧的ですね。そして常に1段階ずつ転調を繰り返していますから、変ロ長調、ハ短調、そして二長調。『二(レ)』音はトニックですね。ということで、続けますよ・・・(演奏)スフォルツァンド・・・ベートーベンは、常にスフォルツァンドを置くようにと主張しています。モーツァルトを例として考えた場合、モーツァルトなら絶対にこんな風に書きません。ですから、私達がベートーベンを演奏する場合には、こういったスフォルツァンドやアクセントを大真面目に受け止めなければなりません。なによりも酷いのは、演奏家が作品の角に『アイロン』をかけてしまうことです。作曲家がこう書いているんですから、ここはもともと『美化すべきではない』ところなんです。(演奏)」

「・・・と、私達は長いドミナントのペダルポイントまで来ました。それから、このソナタの初稿は残っておらず・・・本当に残念なことですけれど紛失しています。しかし、ひとつ前のソナタとワルトシュタインの初稿はあります。そして、それらのソナタはベートーベンによるペダル指示でいっぱいです。そして、ここの部分は極めて長いペダルが必要に違いない、と私は思っています・・・全てのハーモニーが共に泳ぎますね。(演奏)・・・単に属七の和音ではなく、さらに9度上の音が加わっています。(演奏)まだこのシンコペーションも続いていますよ・・・それと共に、ここは面白いですね。『ミ♭』に対して『レ』ですから、ものすごい不協和音です。・・・そして戻ります(演奏)ペダルの『曇り』に対して、今度は非常に『乾いた質感』ですね。ベートーベンのソナタの真髄は、衝突や絶え間ないコントラストです。(あるいは)ドライな音に対しての瑞々しさなど・・・これが第1楽章の大雑把な基本要素ですね。しかし、まだ非常に面白いコーダが残っていますよ。(演奏)それで、もうひとつのジョークとしては、観客を騙すことなんですが・・・いえ、もちろんあなた達は騙されませんけれど・・・あなた達は賢いですし、音楽というものを知っていますからね。笑 ですが、この作品を初めて演奏しているところを想像してみてください・・・終わりだと見せかけたところで・・・終わりではないんです。(演奏)これはとてもさりげなくて、上品なジョークですね。」

「第2楽章はアルフレッド・ブレンデルいわく・・・私も大いに同感ですが・・・パロディです。・・・イタリアのオペラの。ですが、同業者の中には・・・これによって死ぬほど気分を害している者もあります。『この作品はベートーベンによる最も深い親しみという感情を込めた・・・』などなど・・・全くわかってないんですよ。それではまず、イタリアン・オペラというのはどういったものでしょうか。私達はみなイタリアン・オペラが大好きですね。そして”Bel Canto”-ベルカントは、現代においても非常に人気がありますが、ベートーベンの時代にもまた、とても人気がありました。ただイタリアン・オペラにも、ピンからキリまであります。私に言わせていただければ・・・ベートーベンの音楽に勝るものはありませんけれど笑 

そして・・・良い作曲家、あるいはそうでない者も含めたイタリアン・オペラの作曲家たちが大成功している様子は、ベートーベンを苛々させました。なぜなら、そういった(当時の)コンテンポラリー音楽は、ベートーベンの書く音楽よりも大きな成功を収めていたからです。そこでベートーベンは『らしからぬ楽章』を書いたのです・・・なぜなら、この楽章は非常に冗長で全てが過剰、しかも装飾だらけです。そんなわけで・・・私はこれをパロディだろうと思うわけです。この時期のベートーベンの人生において、彼は『厳選して良いものだけを残し、より濃縮された音楽』というものを追い求めていました。この発想は、『テンペスト』と呼ばれる二短調ソナタからも窺うことが出来ます・・・これは次にご紹介する曲ですね。ですからベートーベンは意図的に、正反対の音楽を作りました・・・『こうありたくない』と思う姿を表現したのです。」

「まず、伴奏から始まりますが・・・これはイタリア風の伴奏ですね・・・(演奏)こう・・・♪ん~ちゃっちゃ ん~ちゃっちゃ・・・た~ららぁ~♪(・・・とオペラ曲を歌うシフさん。と、意外にいい声なので会場から拍手が。笑)・・・(笑いながら)すいません笑・・・ヴェルディ、大好きなんですよ。イタリアの作曲家で素晴らしい作曲家をたったひとり挙げるなら、それはジュゼッペ・ヴェルディ・・・疑いの余地はないです。ですが興味深い点として、『リゴレット』のカルテットを移調してみると・・・(演奏)・・・そしてこれも後で出てきますが、Op.31-1の主題をちょっと聴いてみてください。(演奏)・・・『似ている』というよりも(同じ)・・・(演奏)もちろん美しいですが・・・感じませんか・・・いえ、もしかしたら私がそう思いながら演奏しているせいかもしれませんけれど・・・なにか皮肉な感じ、嫌味っぽい感じがしますね。」

「それから、愛のデュエットのような部分です。主題がバスへ移りますが、これもまたコミカルで・・・ここのバス音はまるですごく太った男が素敵な振りをしているような、嘘っぽい感じがします。(演奏)そして、このカデンツァは、『ひけらかすような』カデンツァです。そしてベートーベンはそういう人ではないので・・・つまり、わざとコンテンポラリーなものを小馬鹿にして、安っぽい演出をしているんです。ベートーベンは、普通こんなカデンツァを絶対に書きませんから。(カデンツァ部分から演奏)・・・そしてベルカント・・・(演奏)オペラ歌手は、ここで大きな跳躍をし・・・(鼻歌を歌うシフさん)非常にオペラ風で声楽的ですね。しかしこの長い楽章の中で、非常に深淵な瞬間がやってきます。なぜなら、ベートーベンはそこまで自分で自分を驚かせることが出来ませんでしたので。例えば・・・(演奏)・・・ひとつ調を下げて・・・(演奏)こういった転調やハーモニーを、イタリアン・オペラの中に見出そうとするのは無益な追求です。」

「再度大きなカデンツァ・・・(演奏)・・・またしても『ひけらかし』・・・(演奏)非常に美しくはありますが、ベートーベンにとって異質なものです。さて。前半の変奏等が終わり、ソナタ中間部へ差し掛かりますが・・・ここは非常に邪悪でドラマチック・・・私はこの部分を『ティーカップの中の嵐』と呼びます。本物の『嵐』ではなく・・・それは次のソナタで出てきますから。(演奏)ということで、鋭いアクセントと共に大きなドラマが起こる予感をさせながらも、実際はほんの短い間に起こる括弧書きの物語です。そして、この楽章のドミナントへ到達し止まったところで、ベートーベンは再度、これがパロディであることを示すかのように、12小節もの間ドミナントへ留まります。非常にゆったりとしていますから、気分的には『永久』・・・何も起こらない3分間です。たぶんまた、イタリア人のことをからかっているんだと思いますけど・・・(なにも起こりませんので・・・そういう振りをしているだけで)」

そして最後の変奏の後・・・(演奏)・・・新しい16分音符の伴奏・・・(演奏)これもみなさんご存知ですね。イタリアン・オペラの。ここは非常に演奏しづらく・・・ピアニスティックでは全然ないです。ということで、ハンマークラヴィーア・ソナタのアダージョを除いて考えた場合、ベートーベンの書いた最も長い緩徐楽章です。そして、わざと長いのです。」

「その後にくるのは『アレグレット』のロンド・フィナーレ(第3楽章)です。(アレグレット)ですから、そこまで速い楽章ではなく、”Gassenhauer”-ガッスンハウアー的な・・・といいますか・・・ガッスンハウアーというのは、ウィーンの町の歌(流行歌)です・・・誰もが口笛で吹けるような。(演奏)お聴きになってわかるように、アップビート(裏拍)から始まります。(裏拍だということが)明白に弾けているといいんですが・・・出来ていなかったとしたらダメですからね。(演奏)バッハのガボットのような・・・(リズム比較演奏)弦四重奏のように美しく声部わけされた書き方です。このロンド最終楽章のような形式の成功例として、シューベルトの素晴らしい楽章のひとつ・・・イ長調ソナタの最終楽章がありますね。(演奏)もちろん全く似ていませんし、裏拍から始まっているわけでもありません。しかし後でわかりますが・・・最初は主題がソプラノで、それからバス、そして対位法が3連符で出てきます・・・ベートーベンの場合。(演奏)それからまた・・・(演奏)・・・シューベルトの作品にも同じ3連符の楽章がありますね。」

「さて。それから、非常に興味深い部分が出てきます。主題がバスに置かれ・・・短調です。(演奏)バッハのフーガを偲ばせますね。装飾の仕方に注目してみてください(演奏)『中音』の変ホ長調にきました。・・・ということで、他にもいろいろお話することがありますので、(この部分の)あまり細かすぎる話は避けようかと思いますが。コーダはとても面白く、『四六の和音』で止まり・・・(演奏)まるでモーツァルトの『ピアノと管楽のための五重奏曲 K452』のように、『作曲されたカデンツァ』・・・規定速度の中でのカデンツァです。(演奏)・・・フェルマータがあって・・・(演奏)・・・と終わります・・・ですが、本当は終わったわけではありません笑 こんな風に始まると(演奏)・・・終わったのかな、と思いますよね。ですが違います。笑 (演奏)・・・これはアダージョで・・・それから『テンポ・プリモ』元のテンポに戻って(演奏)・・・偽りのカデンツですね・・・(演奏)・・・アダージョ・・・クエスチョンマーク・・・(演奏)・・・ここはちょっとした断片的扱いで・・・(演奏)バスが独走し始めて・・・クレッシェンド!・・・プレスト!(演奏)・・・まだ終わりませんよ笑・・・(演奏)ここは第1楽章の終わりと対になっていて、例の両手は・・・(演奏)やっとお互いをみつけるんです。」




29歳のルチアーノ・パヴァロッティ。若き天才が歌うヴェルディ。
ヴェルディは、このソナタが書かれた当時(1802)生前前ですね。

それと、シフさんのモダンオペラ感・・・極端。笑

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ピアノソナタ第15番 「田園」 ニ長調 Op.28
2016-11-23 Wed 02:48
Part 4: Piano sonata in D major, opus 28 ('Pastoral')

第四回目のプログラムの最終曲は「ピアノソナタ第15番 「田園」 ニ長調 Op.28」のレクチャー内容です。この曲の講義は25分程度です。途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。






「最後にご紹介するソナタOp.28、この曲ほど変わっている曲はありません。私達は『田園』と呼びますが・・・これもまた、ベートーベンのつけた名前ではありませんけれど、この場合は・・・大目にみても良いでしょう。笑 なぜなら、交響曲6番『田園』を思い起こしてみると(ピアノソナタ『田園』との間に)たくさんの共通点が見受けられますし、交響曲の方の『田園』はベートーベンがつけた名前ですから。しかし、それ(交響曲)についても、ベートーベンは”Mehr Ausdruck der Empfindung als Malerei“-絵画的表現というよりもむしろ、音に感情をのせた作品である-と発言しています。」

「ですが、ティンパニ演奏のような(第1楽章の)冒頭を考えてみると・・・(演奏)後で私達が耳にすることになる・・・(比較演奏)それから、バイオリン協奏曲でも同じようなティンパニ音から・・・(比較演奏)一方、ハンス・フォン・ビューローは、この前のソナタが『型どおりの単純な作品』と不平を言ったけれど・・・(13番の冒頭演奏)ベートーベンがそうしたければ・・・シンプルなフレーズではなく、10小節に及ぶフレーズだって素晴らしく表現することが出来るわけです。ということで10小節フレーズ・・・(演奏)・・・反復して・・・(演奏)・・・そして8小節フレーズ・・・また8小節・・・そして4小節・・・(演奏)と、これがこのソナタの冒頭フレーズです。つまり『10小節・10小節・8小節・8小節・4小節』・・・と『型どおり』という感じではありませんね。それから、主題の推移部分へと向かって・・・(演奏)弦四重奏のようにクリアな4声ですね。そして、その変奏・・・(演奏)さて、私達はトニックから遥か遠くへ来ました。(演奏)トニック(レ)・・・ドミナント(ラ)で・・・ドミナントのドミナント(ミ)です。そして第2主題へ・・・(演奏)今『嬰ハ長調』ですから、本当に遠く・・・五度圏で数えると・・・(演奏)・・・と(ニ長調を1歩目と数えた場合)6歩も移動しました・・・(演奏)・・・そしてこれ(演奏)行ったり来たり。

それで・・・このソナタの『形式についてのみ』述べた場合、前例にあるほど革命的ではないですが、サウンドについては・・・私からみると、まるでシューベルトのようです。(演奏)・・・ね?・・・(演奏)これらの内声・・・またしても『森のささやき』のようですね。そして私達は少なくともドミナントへ到着し(演奏)それから・・・ベートーベンは常に、ピアノに歌わせようとしました。打楽器ではありませんから。私達も本当に、頑張って歌わせなければならないと思います。(演奏)そして、収束部分のテーマも『田園』にとてもふさわしいと思います。鳥の歌ごえのようで・・・オーボエが演奏しているところが想像出来ると思いますよ。(演奏)・・・それからベートーベンは、これをオーケストラ風にしてホルンを加え・・・(演奏)・・・ここで導入部の反復。では、展開部へ行ってみましょう。(演奏)」

「展開部を開始するのはサブドミナント(ソ)・・・(演奏)・・・短調・・・(演奏)・・・しかし、ベートーベンは主題を終える前に左へ対位法を配します。(演奏)・・・と、ここは作曲上で言うところの『遠近法テクニック』で、ベートーベンは主題からの引用部分を徐々に小さくしていきます。最初はこんな風に・・・(演奏)4小節分ですね。それから今度は2小節分だけ。(演奏)そして、1モチーフのみ・・・(演奏)このモチーフの3音・・・♪ティーンタタタン タタタン♪それから反行系も出てきて・・・(演奏)これら全ては遠隔調の嬰ヘ長調です(演奏)・・・そして止まります・・・全ての音を使い果たしたように・・・(演奏)これらは全て1つのペダルですよ・・・フェルマータ・・・そして突然・・・(演奏)ほんの断片です。」

「エドウィン・フィッシャーが・・・いつもエドウィン・フィッシャーの言葉ばかり引用してしまうんですけれど・・・とても好きなので・・・それで、彼が言うには、ここでは輪になった大人たちが大真面目な話し合いをしていて、そこへ突如ちいさな子供がドアを開けて顔を覘かせるんです。そして、彼は大人たちの『静寂』が怖くて仕方ない。・・・(演奏)・・・・サイレンス・・・サイレンス・・・(演奏)そしてそれが終わると・・・(演奏)・・・ドミナント。 と、その後は(演奏)この素晴らしいアレグロに戻るわけです。残りは、だいたいにおいてわかりやすいと思います。ただこの楽章の最後はとても美しく・・・(演奏)ドミナントそしてトニック。非常にシンプルですね。彼はいつもこのティンパニを繰り返しています。(演奏)」

「次はとてもメランコリーな楽章(第2楽章)・・・二短調ですね。Op.28は4楽章構成です。最初の楽章はソナタ形式でしたが、今度は三部形式・・・ABA構成です。それから、ペダルと共に演奏した嬰ハ短調ソナタ・・・(14番の冒頭を演奏)・・・この響きを覚えていますか・・・(演奏)そして、この楽章はというと・・・今度は本当に『ペダルなしで演奏すべき楽章』です。笑 なぜなら、左がオスティナート(執拗反復)のセンプレ スタッカート”sempre stacc.”で・・・(演奏)それからその上には、コラールとマーチを足したような何か・・・(演奏)この2つを合わせると、素晴らしい『絵』が出来上がりますが、互いがきちんと独立している必要がありますね。そして、ここでペダルを使うことは本当に避けるべきです。(演奏)・・・クレッシェンドからスビト・・・(演奏)では、ペダルを使うとどうなるか。という例をお聴かせすると・・・こんな感じになります(演奏)・・・ひどいです。笑 何も伝わりません。ここはもっと、明晰に聴かせなければ(もう一度模範演奏)次の主題後半は、少しペダルを使ってもいいですよ。(演奏)これらの減七 和音の作り出す不協和音・・・(演奏)そして、戻り・・・(演奏)ですから、この音楽を『悲劇』とは表現しませんが『鬱々と』していますね。」

「中間部は、もっと明るくて幸せな感じの音楽です。田園的な性質の『鳥のさえずり』があって、ホルンが最初で、それに応えるのがフルートです。(演奏)ナイチンゲールのことをドイツ語で"Nachtigall"ナッフティガールといいますが、そのリズムに合わせるとぴったりいくと思いますよ。ですから・・・(♪ナッフティガール・・・ナッフティガール♪と言いながら模範演奏)そしてこの長調のエピソードの後は、短調が戻ってきて(演奏)さらに、ベートーベンの素晴らしい変奏テクニック・・・(演奏)ここが唯一、バスにレガート指示が書かれている部分です。(演奏)それから、この楽章のコーダは驚くほど素晴らしく、ナッフティガールが戻ってきますが・・・もうそこまで幸せな感じではありません。(演奏)非常に素晴らしい響きですね。最低音域と最高音域。ここで、ベートーベンの使っていたピアノを想像してみてください・・・彼のピアノには(現代ピアノのような)不必要なオクターブなんてありませんでしたからね。笑 そしてここで私達は『地上と天国』を思わせるような感覚を受けるわけです。」

「そして、その後は地上へ戻り・・・とてもユーモラスなスケルツォ(第3楽章)。単純明快な作りですよ。(演奏)弦四重奏のようですね。第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ・・・チェロ。そして、トニック・ドミナント・ドミナント・トニック。非常にシンプルですね。(演奏)それから5度上で・・・(演奏)重要なのは、8分音符2つはスラーで繋がっていて、4分音符からは離れていますから・・・(演奏)その差をちょっと大げさに(演奏)そしてその第2部は・・・(演奏)・・・フェルマータ・・・(演奏)非常にユーモラスで、まるで『やんちゃな感じ』ですね。そして続くトリオは、さらに面白くて。とてもシンプルな、ちょっとした踊りがあり(演奏)そして2つ目のフレーズは・・・(演奏)つまり、ひとつはロ短調、もうひとつは二長調へたどり着くわけですね。それから、ベートーベンはこの旋律を使って4種類の和声展開を披露します。(演奏)・・・それから・・・次は・・・(演奏)と、このように非常にシンプルな作りですが、このシンプルなモチーフを4種類の方法で調和させてみせるんです。そしてダ・カーポ、スケルツォ。(演奏)」

「フィナーレ(第4楽章)は、(ロンド)アレグロ・マ・ノン・トロッポです。そして再度、これが『田園ソナタ』であるという証拠を見ることになります。バグパイプ音楽です・・・スコットランド風のね。(演奏)しかし美しい旋律です・・・(演奏)それから、このスイングするような8分の6拍子。交響曲『田園』もまた、8分の6拍子ですね。(演奏)それから経過を挟んで・・・(演奏)第2主題です。(演奏)・・・変奏・・・(演奏)再度、オーケストラの総奏ですよ。(演奏)ロンドが回帰し・・・(演奏)美しい展開部ですね。とてもバッハ的で・・・それから、未来を示唆するような。ちょっと弾いてみますね。(演奏)・・・そしてここから・・・(演奏)と、こんな風に、シンプルな田園的音楽の中にも、非常に複雑なポリフォニー的音楽が顔を見せていますね。こんな感じで・・・(演奏)本当に美しいですね、これらの半音階。さて。この後は、最後の主題回帰があって、第2・・・最後の主題がトニック。それから、この素晴らしいソナタを終わらせる前に、ベートーベンは素敵なコーダを用意しています・・・非常に弾くのが難しい部分です。チャールズ・ローゼンいわく、ここは『アマチュアに対する嫌がらせ』だそうです笑 なぜなら、この部分以外は(アマチュアでも)十分演奏可能ですから・・・しかし、いきなりここで難しくなるんです。笑 ということで、終わらせてしまいましょうか。(演奏・・・拍手と共に終了)」

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ピアノソナタ第14番 「幻想曲風ソナタ(通称・月光)」 嬰ハ短調 Op.27-2
2016-11-22 Tue 01:37
Part 3: Piano sonata in C-sharp minor, opus 27 no. 2 ('Moonlight')


第四回目プログラムより「ピアノソナタ第14番 「幻想曲風ソナタ」 嬰ハ短調 Op.27-2」のレクチャー内容です。この曲の講義は25分ほどです。今回も、シフさんのこだわりが炸裂する回となっております。笑 音源の一番頭は、前回の13番についての説明なので省略しました。途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。




(全てをひとつのペダルで・・・第1楽章冒頭の演奏)


「うーん、何か変だな・・・と思ったかもしれませんね。知っているそれとは違う・・・あなたが演奏した時はこんな風に弾かなかったし、おばあちゃんだってそんな弾き方はしなかった、と。笑 あるいは・・・『エリー・ナイ(ベートーヴェン弾きピアニスト)の弾き方と違う!』ですとか。笑

では、説明させてください・・・本来は『曲の解釈を口頭で説明する』なんてよろしくないのですが。この場合は説明することが重要かなと思います。なぜなら、このソナタは非常に有名な作品であるにも関わらず、間違った解釈をされていると確信を持っているものですから。そもそも私は、これほどまでに(真実が)間違った伝統をもって、何層にも厚く覆いつくされた作品を他に知りません。まず第一に『月光』という通称・・・はナンセンスです。これはベートーベンではなく、詩人で音楽評論家でもあったルートヴィヒ・レルシュタープによるものです。レルシュタープは良い詩人で・・・例えば、彼が作詞したシューベルトの”Schwanengesang”- 白鳥の歌。」

(ここで、白鳥の歌 第1曲目の『愛の使い』を弾き語りと思いきや、すぐやめるシフさん)

「・・・と、これがルートヴィヒ・レルシュタープです。彼の詩の数々は素晴らしいですが・・・その彼いわく『美しい夕暮れ時。ルツェルン湖で小舟に揺られていたら満月がみえた。そしてそれが嬰ハ短調ソナタ 第1楽章を思い起こさせたのだ・・・』と。ここから月光ソナタという通称がついたわけですが・・・これは、お気の毒なベートーベンとは何の関係もありません。しかし、(以来この呼び名が)嬰ハ短調ソナタにべったりと貼りついてしまいました・・・まるで『糊』のように。しかしこの作品には、前回お話したソナタ(Op.27-1)と同様に、『幻想曲風ソナタ』という名称が既につけられています。」

「さて。嬰ハ短調ソナタは通常と違い、ゆったりとした楽章から始まります。『アダージョ・ソステヌート』と印されていますから、『ゆったりとしたテンポで、音を十分に保って』ということですね。ですが、この作品は初稿がありますので、・・・これは初版のことではなくて『手稿』が残っています。そして、そこに『アッラ ブレーヴェ』とベートーベンは書き加えました。アルファベットCを真ん中から二つに分けた、あれですね。ですから、ゆっくりとした『アダージョ』でも1小節に対して2つ数えます。1、2、1、2・・・(と数えながら冒頭を少し演奏)これでも十分ゆっくりですが・・・もし『通常この曲が演奏されるテンポ』で弾くとしたら・・・(極端にゆっくりと演奏)・・・朝食を食べて・・・ランチにディナー・・・それでもかわいそうなピアニストはまだ第1楽章を演奏していますよね。笑 と、それが1点。」

「そしてもうひとつ。ベートーベンは、この楽章の冒頭にイタリア語で "Si deve suonare tutto questo pezzo delicatissimamente e senza sordino" と、書き残しているんですが、それを翻訳すると 『全体を通して出来る限り繊細に、なおかつソルディーノは使わずに演奏すること』 ・・・ここでややこしいのが用語解釈です。なぜなら、ソルディーノ”sordino”は『ソフトペダル』という意味ではありません。それにもし、ベートーベンがソフトペダルのことを指示したかったのならば、”una corda” ウーナ コルダと書いたと思います。『ソルディーノなし』・・・これが意味するところは『ダンパーなし』ということです。つまりダンパーが上がった状態、すなわち全体にペダルをつけたまま演奏せよ。という意味です。」

「そしてもちろん、多くの私の同業者は『それは知っているし読んだけれど、現代のピアノでは無理だ。』と言うんです。それで、『失礼ですが・・・私は違うと思います・・・なぜ現代のピアノでは出来ないんです?試してみましたか?』と訊くと、彼らは『いや試したことはないけれど。でも無理だから』・・・と。これでは論議として不十分です。笑 ベートーベンは・・・私達がその言動を真摯に受け止めるだけの価値くらいある大作曲家です。そしてもし、その彼が何か特定のことについて書き残しているのなら、チャンスを与えてあげなければ。彼なりの理由があったに違いないのですから。ベートーベンは、とても特別な響き・・・特別な音を表現したかったのです。ハーモニーが共に『泳ぐ』感覚・・。そして倍音は互いを強調し合うのです。」

「まずバスがあり・・・(バス演奏)それから”ostinato”オスティナート(執拗反復)の3連符・・・(右手の3連符演奏)それらを合わせると・・・(両手演奏)そしてこの楽章は、注意深くアーティキュレーションをつける必要があり・・・もちろん現代のピアノでは、ペダルを下までいっぱいに踏み込んだりはしませんけれど、だいたい1/3くらいを目安に。それで十分です。それから、この付点付きのリズムが来ますが(右旋律の演奏)数分前に弾いた・・・(12番 第3楽章『葬送行進曲』の冒頭と、月光の旋律を比較演奏)両方とも『葬送』のリズムのようですね。

ところでエドウィン・フィッシャーは、著書のベートーヴェンソナタの本の中で素晴らしい発見をしていました。
彼いわく、『月光ソナタという表題は自分の中でどこかしっくり来ない。どうもそんな風には感じられない』と思っていた時に、ウィーン楽友協会のアーカイブで小さな紙切れを見せられたのだけれど、それがベートーベン直筆のスケッチだったのです。ベートーベンは、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』から、ドン・ジョヴァンニが騎士長を殺害する場面の楽譜を書き写していました。そして、それはこんな音楽です・・・(聴き慣れた3連符の演奏)

これを嬰ハ短調へ移調すると・・・(演奏)これで私には、この音楽の真理が明々白々だと思えました。これは『月光』などではなく、葬送の場面であり死の場面。ベートーベンは、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』のことを考えていた・・・ということなんです。これはとても重要だと、私は思います。(もう一度頭から演奏) 輪郭がぼんやりとして遠くの景色のようですね・・・月光は無関係です。そして、ペダルは全く踏み変えていません・・・私はベートーベンを出来る限り真面目に受け止めようと、努めているので。彼はこれが本当に欲しかったんです。」

「それから、この楽章は形式定義が難しいですね。ソナタ形式ではないですし・・・まるでバッハのプレリュードのような感じです。このオルガンと共に・・・(演奏)・・・それから、旋律的には・・・ほとんど何も起こっていないようですね。3連符のオスティナートがあって・・・ダイナミクス的には全てピアニッシモまたはp(ピアノ)音域の中で・・・それより大きい音は出てきません。本当に幻想的で・・・(演奏)ナポリタンのハーモニーが非常に重要ですね。(演奏)ここ・・・それから・・・(演奏)バスに何が置かれていますか?・・・葬送行進曲ですね。(演奏を終えて)私にとっての第1楽章とは埃だらけの名画のような存在。すなわち、私達は『復刻作業』をせねばなりません。しかしそうすることにより、画家の描いた本物の色彩を手に入れることが出来るでしょう。」

「それから、この素敵な真ん中の楽章(第2楽章)が始まります。変二長調で・・・これは嬰ハ短調の異名同音にあたりますね。そして、このぼやけたペダルの直後、突然の音楽的感覚が訪れます・・・ペダルのない音です。それはまるで、透き通った新鮮な空気のように。(演奏)またしても弦四重奏です・・・3つの楽器が演奏し、チェロは休んでいます。(演奏)・・・そしてチェロと共に(演奏)・・・チェロなし・・・チェロあり・・・(演奏)・・・その変奏です(演奏)たくさんのスタッカートの後はレガートです。(演奏)とこのように、たくさんの疑問符です。(演奏)大きな疑問符があって・・・(演奏)・・・これが回答です。(このあとに続く)トリオは、再度『夜』がテーマです。私達は地上に戻ってきましたよ(演奏)アクセントとシンコペーション。これもまた、初稿によってはっきりと確認することが出来ますが、ベートーベンは『フォルテピアノはテノールのみ』と書いています。(演奏)まるでホルンのように。(演奏)ピアニッシモ・・・そして常にこのホルン・・・(演奏)そして、ダ・カーポ。フランツ・リストはこの楽章のことを『2つの深淵のハザマに咲く、一輪の花』と喩えました。とても素晴らしい注釈だと思います。それから、これらはほんの1~2分の間に終わり、地獄へと戻ります。」

「さて、ここでやっとソナタ形式との再会です・・・待ち焦がれました。笑 そして、まぁなんと素晴らしい楽章でしょう。私達は振り返って思うわけですね、『ベートーベンの最終楽章は、いつもなんて素晴らしいんだろう』と。まるで当たり前のことのように、慣れきってしまうところがありますが・・・しかし考えてもみてください。彼よりも『後に』現れたほとんどの素晴らしい作曲家達。例えばシューベルトですら、あるいはシューマンそしてブラームスについても頻繁に感じるのは『ああ、なんて素晴らしい作品だろう。しかし最終楽章が他と比べて引けを取るのが残念だ』ということです。・・・けれど、ベートーベンにはそういった作品が1つもありません。彼はそのあたりを非常に上手にやっていると思います。このソナタにおいても、最初の2つの楽章と素晴らしいフィナーレの釣り合いが取れるよう、うまくバランスが取られています。だからこそ構成が成り立って、まるで素晴らしい建築物をみているような感覚があるわけです。」

「(この楽章においても)ペダルの使い方は致命的に、ものすごく重要です。ベートーベンは、ペダルを取り入れた最初の大作曲家ですね。初稿に常に見られるのが、”con sordino” と ”senza sordino” 『ダンパーあり』 および 『ダンパーなし』です。ということで、ゆっくり演奏してみると左手は・・・(左手演奏)・・・そしてこの2音は・・・常に和音とペアになっています。そして、この和音だけ常にペダルをつけてください。それ以外は全てペダルなしで。では、ゆっくり演奏してみますね・・・少しばかりの練習はあったほうが良いので・・・(と小さな声で言うので、会場うける笑 そして冒頭を少しテンポを落として演奏)・・・ね、わかりますか? クレッシェンドなし、p(ピアノ)だけですよ。そしてこの脅迫的な・・・(演奏)・・・それではちょっとスピードアップしてみると(規定テンポで演奏)・・・とここで、最初のクレッシェンド。本当に前衛的な作品だと思います。そしてドミナントへ到着した後は、この素晴らしい旋律です。嘆きの旋律・・・(演奏)フレーズごとに、クレッシェンドとディミヌエンド(演奏)そして変奏ですね・・・(演奏)それから、ここは壮烈に(演奏)・・・と、前にも言ったとおり、ナポリの和音の響きはとても重要ですよ。(和音演奏)繰り返して!(演奏)そして新しい主題が『モルト・アジタート』で・・・(演奏)それから全てをフルオーケストラ風に(演奏)・・・ここはエピローグ的な終焉部ですが『アジタート』は消えていません。内に秘めた高揚感・・・(演奏)と、ここで導入部が反復され・・・必ずですよ・・・そして展開部が始まり(演奏)今サブドミナントの上です(演奏)嘆き・・・(演奏)ここは対位法を用いて、左右が入れ替わり(旋律は)バスへ・・・(演奏)再度、ナポリタン・・・ファ#からソです・・・(演奏)それからドミナントの上で、長いペダルポイント・・・(演奏)ここは再現部へ移行するための準備をしています。(演奏)この2つの和音、そしてフォルテピアノです(演奏)本当に先進的、とても怖い音楽ですね。そして再現部が終わったら、大規模なコーダですが、その構造はまるでピアノ協奏曲のように拡大されて・・・(演奏)大きなカデンツァですね・・・のちの『熱情』にも似た形がみられますが。ということで、カデンツァ・・・(演奏後、拍手と共に終了)」


Dietrich Fischer-Dieskau "Liebesbotschaft" Schubert

シフさんが熱唱しそこねた、シューベルトのお歌。
ピアノソナタ第14番 「幻想曲風ソナタ(通称・月光)」 嬰ハ短調 Op.27-2…の続きを読む
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ピアノソナタ第13番 「幻想曲風ソナタ」 変ホ長調 Op.27-1
2016-11-21 Mon 03:21
Part 2: Piano sonata in E-flat major, opus 27 no. 1


第四回目のプログラムより「ピアノソナタ第13番 「幻想曲風ソナタ」 変ホ長調 Op.27-1」のレクチャー内容です。この曲の講義は25分です。ビューローの引用をする時に、一瞬シフさんの声に宿る『冷笑』をお聞き逃がしなく(笑 途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。





「次にご紹介する2つのソナタは"Sonata quasi una Fantasia" 『幻想曲風ソナタ』と呼ばれています。これはどういった意味でしょうか? まず『ソナタ』という言葉が示すように厳格な形式美、そして『幻想』・・・こちらは想像力や自由な思想といったものと関連のある言葉ですから、それら2つのコンセプトが融合したもの、ということになりますね。それから、この2つのソナタ(Op.27-1&2)は共に1801年に書かれました。そして、片方(13番)はリヒテンシュタイン公爵夫人に献呈され、もうひとつ・・・後で出てくるハ短調ソナタはというと、こちらはベートーベンの書いた最も有名なピアノソナタで、ジュリエッタ・グイチャルディ伯爵令嬢へ献呈されました。

さて、ハ短調ソナタは最も有名な作品のひとつ。そして変ホ長調ソナタの方は、割と認知度が低めの作品ですが・・・これ(変ホ長調ソナタ)は実に不当に軽視されていると思います。なぜなら私にとっては、少なくとももうひとつ(ハ短調ソナタ)と同じくらい好きな曲ですし・・・それに、コンセプトや形式のあり方という点に限って言うならば、(変ホ長調ソナタの方が)より興味深いと思っています。ハンス・フォン・ビューローは、この作品に対してとても批判的で『ベートーベンの名にふさわしくない作品だ。どうしたらこんな杓子定規なフレーズを書けるんだ!』と。彼はそう言ったんですよ。」

(第1楽章の冒頭を演奏)

「まぁそうですね、4小節・・・シンプルな作りです。そしてトニック和音・・・(演奏)・・・と、このふたつの和音だけ。ですが、非常に美しく詩的でまるで『子守唄』のようです。速度的にはアンダンテですが、『アッラ ブレーヴェ』なので2/2拍子ですね。(演奏)・・・さらに続けて・・・(演奏)こんな風にトニック、ドミナントと何度も繰り返されたところへ新しい和音が出てくると、それは本当に大イベントです。(演奏)そしてこの部分を反復し、それから新しいフレーズへ。(演奏)ここで新しいな、と思うのは『響き』。とても豊かなピアノの音です。ベートーベンは両手の拳で音楽を書きましたから、後世代に登場するシューベルトのような『透明な響き』とは少し違います。ですが、素晴らしい豊かさです。(演奏)・・・そして次は何が来るでしょうか・・・(演奏)ここは素敵な和声進行です・・・変ホ長調から(演奏)ハ長調へ(演奏)全く違った『光』を感じますよね・・・『光』と『影』のような。(演奏)ここは3度の関係で、この関係はのちに極めて重要な点として浮かび上がってきますよ。

(演奏)・・・変奏・・・(演奏)確かに、4小節フレーズ以外出てきませんね。そして、元へ戻り・・・(演奏)さらに変奏。とてもシンプルです(演奏)変奏・・・(演奏)さらに変奏・・・しかし、ここで良い部分が始まりますよ。(演奏)変ホ長調作品の中のハ長調から始まった後(演奏)『アレグロ』と印された新しい部分が始まります・・・”Deutsche tanzen" ドイツ舞曲風なそれは、素朴な農夫の踊りです。(演奏)転調して・・・(演奏)ハ長調のかわりにハ短調(コード演奏)そして、変ホ長調へ戻ります。(演奏)今、変ホ長調の属七ですが、そこから元へ戻り(演奏)アンダンテ・・・(演奏)と、このように素晴らしい発想および構成で、とても革命的です。そして、ここからさらに『アンダンテ』の変奏が繰り広げられます。旋律をバスへ置き・・・(演奏)そしてそれが終わると、コーダ。(演奏)冒頭の2音を使ったモチーフ・・・(徐々に静まり)・・・1音のみになって・・・(演奏)そして休むことなく・・・」

(続けて第2楽章の冒頭演奏)

「まず最初の小節をみていただけると・・・これはアップビート/裏拍(から始まる曲)だとわかりますね。(時々カウントしながら演奏)そして(演奏速度は)『アレグロ』、インターメッツォ(間奏曲)のような感じです。とても薄気味悪い感じの作品ですね。・・・時代錯誤であることを承知で言えば、この楽章はシューマンを彷彿させます。シューマンの”Nachtstücke”(夜曲集)あるいはOp.12”Fantasiestücke”(幻想小曲集作品)など、つまり『夜の音楽』です。それからこれは、スケルツォ楽章というわけでもなく、むしろ間奏曲的な音楽です。またしても非常に単純明快な方法・方式で、単に3連符を使用しています。(演奏)さらに音域を変えて・・・(演奏)片手が上昇音形、もう片方の手は下降音形ですね。(演奏)共に同じハーモニーですが、両方を合わせると、とても暗い色の響きとなります。(演奏)・・・フォルテ!(演奏)

モルト・アジタート、とても興奮して気がはやる感じで、落ち着きや静寂の全くない様子ですね。中間部のスケルツォは『乗馬』を思わせ、馬たち(の足並み)が聴こえます。(演奏)常に『パパッ パパッ パパッ』というリズムです。その後は冒頭の音形へ戻り(演奏)ここでベートーベンは、シンコペーションのリズムでそれに変化をつけます・・・左手はスタッカートを拍に合わせ、右手のレガートは拍に逆らって・・・と・・・例の両手が揃わない類ですね。笑 (演奏)そしてここもまた、『アクセル(ペダルのことを言っています)』を踏んでしまったら、全て台無しになりますね。なぜなら、スタッカートとレガートの差が聴こえなくなりますから・・・そして、その差がとても重要なのです。(演奏)・・・と、奈落の底へ。とてつもない悲劇です。」

(続けて第3楽章の冒頭演奏)

「休みなしで、この素晴らしい『アダージョ・コン・グラン・エスプレッシオーネ』へ。変ホ長調からハ長調、そしてまた変ホ長調、それからハ短調、そして今が(変イ長調)・・・(演奏)本当に素晴らしい円ですね。(演奏)アダージョの3/4拍子ですから、1小節あたり3つずつ数えます。(1、2、3・・・と数えながら模範演奏)素晴らしい響きですね・・・まるで弦楽器のような深みがあります。それからこのソナタOp.27-1でも、いまだもってソナタ形式がひとつも出てきていません。この楽章も、壮大なアダージョのように始まりますが、完成されたひとつの楽章というよりも、実は最終楽章のための序章のような存在です。それから・・・(演奏)そして繋ぎの『橋』があり・・・(演奏)素晴らしい期待感を覚えますね。いったい次はどんな展開をみせるのだろう、と。このソナタは、たまたま「幻想曲風ソナタ」と呼ばれているわけではなく、即興的独奏(カデンツァ)といった『幻想的な性質』をきちんと備えています。まるで『皇帝』(ピアノ協奏曲第5番)から書き起こされたような、これ・・・(演奏)ソナタ曲の中から協奏曲が飛び出してきたような感じですね。そして今度は・・・」

(続けて第4楽章の冒頭演奏)

「(この楽章は)アレグロ。これはソナタとロンドの性質を混ぜたような楽章ですが、それでもこれを『ソナタ形式』とは呼びません。どちらかというと・・・ロンドです。ですが、エネルギーに溢れ、活力や溌剌さを感じる素晴らしい楽章ですね。ベートーベンは、ここでも4小節から成るモチーフを使っていますけれど、彼が意図的にそうしているとお気づきになったかと思います。このソナタは、あまりにも革命的な形式をとっているため、それとバランスを取るために明快な旋律構成にする必要がありました。さもなくば、(そんな複雑な形式は)考えられもしないですから。そして、後にご紹介するソナタ作品をみればおわかりになりますが、ベートーベン本人が複雑な旋律やアシンメトリーな旋律を書きたいと思えば、そのように表現できる実力があるのは明らかですからね。ですから、この『四角さ』はわざとなので、否定的要素として捉えるべきではないと思います。(演奏)大切なのが・・・左手の16分音符は、最初の4小節をノンレガートで(演奏)そして、レガートで!(演奏)つまり、導入部だけでもノンレガートとレガートという風に、異なったアーティキュレーションがあるわけです。」

「そして次に来る部分は、オーケストラ風の総奏(トゥッティ)。様々な楽器が出てきます(演奏)ここの音形はオーケストラっぽくありません、むしろピアニスティックです。またしても、ベートーベンの発案であり、これはモーツァルトやハイドンの音楽には見られなかった形です。(演奏)ドミナントに到着した後、非常に活力あふれるフレーズが始まります・・・(ギリシア神話の)ディオニューソス的に。(演奏)そして、ロンドの回帰です。ここは本当にギリシア劇場のようですね・・・みなが歌い踊っているような・・・。ニーチェの思想『アポローンとディオニューソスの対比』になぞらえた場合、これはまさしくディオニューソスの音楽だと思います。そして次は、バッハのフーガ的なものが中ほどに登場し・・・(演奏)様々なエレメントが出てきましたね。そして今は、変ホ長調のドミナント上ですけれど、最後ベートーベンがどのように主題を再現するかと言うと・・・(演奏)

そして再現部に移るわけですが、それが全て終わったところで出てくるのが(演奏)フェルマータで一度止まって・・・(演奏)それから、この素晴らしいアダージョが戻ってきます。(演奏)まるで、家へ戻ったような気分ですね。私達はこのフレーズを前に別の調で聴いているけれど、今回はそれが主調で聴こえてきたわけですね。これは私達のよく知っている素晴らしい感覚・・・『安全さ』です。(演奏)再度カデンツァ・・・(演奏)そして、コーダ。ここは『プレスト』と書かれています。前は『アレグロ・マ・ノン・トロッポ』でしたが、今はプレストですね。それから、ここのモチーフを見てみると・・・(演奏)上昇していく4度です。そして、先のソナタへと思考をのばしてOp.110と比べてみると(演奏)・・・フーガがあって(演奏)・・・とこのように、18年も前に(類似したコンセプトが)既に存在していますね。(演奏)そしてここは擬似的に・・・左手がシンコペーションを用いながら、真似をしていますので。(演奏)・・・そしてこれが、Op.27-1です。」
        
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愉快な鍛冶屋の謎。
2016-11-20 Sun 12:45
ゆにくあです。

今日の内容は、
ブロ友さんの記事「年たち過ぎ去り(フランス民謡)」を
受けた内容となります。よろしければ、先にそちらを
見ていただけると。

ご紹介するお話は、ヘンデルが1720年11月に発表した、
「ハープシコード組曲」の5番目の曲「愉快な鍛冶屋
という曲とフランス民謡「年たち過ぎ去り」が、あまりに
酷似しているので(笑) 「盗作したのはどっち?」という
トピックを巡り、紙上で口論したふたりの音楽家の話です。

ごちゃごちゃした内容だったので、久しぶりに頭を使い
ました。うまく説明できるといいんですけど・・・あまり自信が
ありません。笑

出典:「Notes and Queries 9巻」 p588
    A Dictionary of Music and Musicians (1900) edited by George Grove


***

<舞台>

「ミュージカル・ニュース」・・・(恐らく)新聞の音楽枠ページ。
                  担当編集者はM.N.

<登場人物>

アーノルド・ドルメッチ(1858 - 1940):フランス出身、イギリスで活動した音楽家
ウィリアム・H・カミングス(1831 - 1915): イギリス生まれのイギリス育ちの音楽家

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685 - 1759) ドイツ生まれ、主にイギリスで活動
ゲオルク・クリストフ・ヴァーゲンザイル (1715 - 1777)忘れられた音楽家
クレマン・マロ (1496か1497 - 1544)フランスの詩人

ウィリアム・クロッチ(1775 - 1847)イギリスの作曲家、オックスフォード大学 教授就任(1797)

さて。

1895年6月23日の紙上に、アーノルド・ドルメッチ(以下、
アーノルド)からの手紙が掲載されました。全ての発端は、
アーノルドさんがハガナット・ソサエティって場所で開いた
「古典フランス音楽」をテーマとしたコンサートでの出来事
です。

ちなみに、ハガナット・ソサエティというのは・・・
フランス革命近辺、「ベルサイユの薔薇」くらいの時代。
ルイ14世のやり方に不満をもっていた国民と革命軍による
襲撃を恐れた貴族や、教会関連の人達が、一斉に
イギリスへ亡命したんですね。その時にその人達が作った
「フランス人組合」みたいなのがハガナット・ソサエティ。

創立1718年だからヘンデルが生まれる2年前の話ですね。
で、その本拠地が今はロンドンにあって、NYとか各地に
支部があるみたい。良く知らんけど。

とにかく、フランス出身の音楽家アーノルドさんが、
そこでコンサートした時に、曲の合間のMCで

「そういえばさ、クレマン・マロ の『年たち過ぎ去り』は
実はヘンデルの『愉快な鍛冶屋』の編曲だからね~」

と断言したらしい。

クレマン・マロっつーのは、フランスの詩人で
一応「年たち過ぎ去り」の作詞した人、という
ことになっている・・・けど、文献をあたっても
マロの詩のリストの中に「年たち過ぎ去り」は
見当たらず、それどころか似たような文体の
詩もない。

ということで、実際のところは確証ないっぽい。

そして『年たち過ぎ去り』の作曲者はというと、
ゲオルク・C・ヴァーゲンザイル という人らしい。
良く知らんが、当時は人気者だったとか。


そして、そのコンサートをたまたま聴きに来ていたのが
地元イギリスの音楽家 ウィリアム・H・カミングス(以下、
カミングス)でアーノルドさんの「元ネタはヘンデル発言」
をすぐさま、地元の新聞社へ告げ口。お手紙を書きました。

「アーノルドのやろうが言うには、おたくがこの間書いてた
記事は間違ってるらしいですよ。アーノルドいわく・・・」と。

それをうけたミュージカルニュースは、その手紙の内容を
記事にしました。それで、その記事を読んだアーノルドが
書いた手紙。

「ミュージカルニュースの編集者様。
私のことが書かれていたこの間の記事、読みました」

抗議文。笑 昔は大変だね、なんでも手紙で。


「なにか、カミングスが言ったみたいだけど、
私はそんなこと言ってませんよ!! 私は、
ヘンデルが盗んだ』と言ったんですよ。
それをもっともらしく、まるで私が言ったみたいに・・・」


そして、さらに新情報。

「だいたい、私は初稿持ってんですよ」


なんと! 


そして、手紙の中でアーノルドが言うには、

「ヨハン・クリストフ・ペープシュとか、
ヘンリー・パーセルとか、
Dr.グリーンとか、
ヘンデルの初稿たくさん持ってるんだけど

(強烈なコレクター臭)


それで、その中のひとつをみると

(タイトルは、はっきり書かれていない)

初稿の欄外に

「xx によるバリエーションのレッスン」

って書かれていて、しかし その肝心の名前の
ところが黒く消されていて、あとから別の筆跡で
「Mr.ヘンデル」と改ざんされている、とのこと。

つまり、


 ヘンデルさん
XXXXXXX  によるバリエーションのレッスン



・・・まじで?笑


(ってか、それと本件と何の関係が?)




さておき。

アーノルドの「ヘンデルが盗作した」という根拠をまとめると

1)そんな怪しい改ざんはありえない。
2)「愉快な鍛冶屋」は、ヘンデルっぽくない。
  (思いっきり主観)
3)ヘンデルさんの、と改ざんされていた楽譜を見ると、
  超~子供っぽくてダサい曲だったから、これはたぶん
  ヴァーゲンザイル作。(おいおい)
4)歌詞と節がばっちりあっているし、これは
  ヘンデルが生まれる前に書かれたもの(にちがいない)←また主観

それに

5)「フランス・アンソロジー」って本に載ってた他の
フランス民謡曲はちゃんと出所がしっかりしている。
で、そこに一緒に載ってた「年たち過ぎ去り」も、
クレマン・マロの「年たち過ぎ去り」ということで
あってるに決まっている(ヘンデルの名前には、
触れてなかったし)。

しかし、アーノルドよ。クレマン・マロは作詞者。
今、それ関係ないから。


あと、あんた何いってるかよくわかんないから。
主語を書け! 主語を!w




そして、話はそこで終わらない。


その記事を読んだカミングスさんが、
再度ミュージカルニュースへ投稿。笑


ミュージカルニュース的には、もう

「本件にミュージカルニュースは関係ありません」

とかつけているww


さておき。

そんで、カミングスさんがなんて言ってきた
かというと、要点としては

1)私以外に2人、あんた(アーノルドさん)の
発言聞いてた証人がいるけど~ ま、いいよ。
いちおう謝っとく。あなたの意見は「盗作したのは
ヘンデル」ね。おっけ。了解。

と半端な謝罪したあと、カミングスさんが続ける。


「言っとくけど『ハープシコード組曲』の初稿持ってるし」


theコレクターバトル&音楽家同士の泥試合~♪


そして、カミングスさんいわく

そもそも 『ハープシコード組曲』を最初に持ってた
人が、作曲家 兼 大学教授の、ウィリアム・クロッチ
(以下、Dr.クロッチ)って人で、カミングスさんの手に
渡った時点で、既にDr.クロッチの手書きのコメントが
初稿に書き込まれていて、(初稿に直接コメント書く
ってすごい発想。額に入れて飾らないのか・・・)

「ヴァーゲンザイル の作品が、ヘンデルによって
編曲された。目に見えて良くなっている! そして
この編曲は『愉快な鍛冶屋』と呼ばれているのだ!」


しかし。

Dr.クロッチが見落としている重大な事実。


ヘンデルが『愉快な鍛冶屋』を発表したのが1720年。
ヴァーゲンザイルは1715年生まれ。
ということは発表当時、ヴァーゲンザイル5歳。

5歳の曲を、ヘンデルが編曲とかありえないだろう。

そして「年たち過ぎ去り」発表されたのは、
ヘンデルの発表から37年後の1757年。

その時点で「鍛冶屋」はドイツ&フランスあたりで
広く流行していたそうなので、ヴァーゲンザイルが
ヘンデルの曲に手を加えた挙句、詩もつけた・・・
と考えるのが妥当。


というのが、カミングスさんの意見。


そして私も同感です。

それに対してアーノルドがまたなんか言ったかは
不明だけど、載ってないとこみるとアーノルドも
納得したのかも。笑



ひとつ気になるのが、カミングスの2回目の手紙で
「『愉快な鍛冶屋』も『年たち過ぎ去り』も共にG調」
とあって、つまりト長調ですね。

しかし本当は、ホ長調ですよね・・・・


探せばもっといろいろ見つかるかも。
でも今日のところはこの辺で。。

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ピアノソナタ第12番 「葬送」 変イ長調 Op.26
2016-11-20 Sun 06:01
Part 1: Piano sonata in A-flat major, opus 26



第四回目のプログラムより「ピアノソナタ第12番 「葬送」 変イ長調 Op.26」のレクチャー内容です。この曲の講義は約40分と、久しぶりにボリュームがあり、集中力ぎりぎりでした。笑 途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。





(第一楽章の途中まで演奏)

「本日(第四回目)は、続く4つの素晴らしいソナタについてお送りします。Op.26、Op.27の1と2、それからOp.28・・・通称『田園』。さて、これらの4作品は全て1801年に書かれました。(ですから1801年は)ベートーベンの生涯において、とても生産性の高い年だったと言えますね。それから、この4作品をもって『初期』が終わりを告げます。つまり、ベートーベンの32のソナタを3つのグループに分けて、初期・中期・後期とした場合、最初のグループはOp.28で終わると言えますね。ですが・・・Op.22(第11番)で終わった前回のプログラムを思い起こしていただけると(11番第1楽章冒頭を演奏)・・・そして最終楽章は・・・(さわりだけ演奏)私からみると、11番はベートーベン最後の『古典的』ソナタです。そして今日探っていく4作品については、言うならば・・・非常に『実験的』で興味深い段階への突入ですよ。ベートーベンはこの時期、新しい領域・新たな高みを目指しました。そしてそれは、この目覚しい成果と共に成し遂げられました。それぞれの作品は・・・これは32作品全てに言えることですが、それぞれとても個性的で独立したキャラクターを持っています。ですがここからは、本当の意味での『新規開拓』『新領土』です。」

「さて、つい先ほど12番 変イ長調 Op.26の主題をお聴きいただきましたが (再度冒頭をほんの少し演奏)まずこの作品は4楽章構成で、その全ての調号は『変イ』・・・第3楽章『葬送』が変イ短調なことを除いて、他の3つの楽章は全て変イ長調です。そして、12番はソナタ形式をひとつも含んでいません。にもかかわらず、この作品は『ソナタ』と呼ばれますね・・・これは本当に斬新な発想です。そんな作品は今だかつてありませんでしたから。ベートーベンも、その先駆者さえもね。ソナタを『テーマとその変奏』で始めることは、既にとても風変わりですが・・・前例がなかったわけではありません。(モーツァルトソナタ K331第一楽章の冒頭演奏)こちらが、モーツァルトソナタ K331。かの有名な『トルコ行進曲』付きの曲です。そしてこれが、私の知る限り・・・12番以前に書かれた唯一の『テーマとその変奏』から始まるソナタです。・・・がベートーベンの発想は、モーツァルトのそれとだいぶ異なっています。」

「とにかく。いつも思っているのですが、ベートーベンとモーツァルトの間にはほとんど共通点が見当たりません。けれど、逆にベートーベンとハイドンの間にはたくさんの共通点を見出すことが出来ます。以前お話しましたけれど・・・これはハイドンにとってベートーベンが非常に腕白で恩知らずな生徒だったにも関わらず、です。笑 しかしハイドンもまた、変奏曲の名人でした。彼の交響曲や弦四重奏曲。例えばヘ短調の変奏曲を思い起こしてみると・・・(ハイドン/アンダンテと変奏曲の冒頭を演奏)この曲はハイドンの作品の中でも、極めて趣深い傑作のひとつですね。そして、ベートーベンもこの曲を知っていたに違いありません。」

「さておき、まず変イ長調ソナタの『テーマ』が出てきましたね。そして、これひとつを取って見ても、非常に味わい深い名曲です。ですから、なぜベートーベンのことを『旋律の魔術師とはいえない』なんて、不平を言う人がいるんだろうと、不思議で仕方がありません。(それが本当だとしたら)どうしてこんなにも美しい旋律を湛えた曲が書けるでしょう・・・(演奏)8小節進んだところで、既に『変奏の中の変奏』が現れます。(演奏)ここは美しいアシンメトリーですね・・・ずっと4小節4小節と来て、ここで10小節の旋律ですから。そして、最初のようなシンメトリーに戻り(演奏)ところでこの曲は、ソナタ32曲の中で初稿を自由に閲覧出来る最初の曲となります(この曲以前のソナタ曲の初稿は、もう存在しませんので)。

・・・ベートーベンの手書き記述を追えるということは、本当に素晴らしいことです。クラコー市(ポーランド)のヤギロニアン大学の図書館に保管されていますよ。それから、ベートーベンの指示書きは『疎ら』ではなく、むしろ私達のためにたくさんのダイナミクス指示を残してくれました。例えば、このような落ち着いた雰囲気のテーマですら、クレッシェンド、ディミヌエンド、アクセント、スビトピアノ、スビトフォルテ・・・と、極めて複雑に記されています。ですから(ベートーベンの音楽は)白か黒かではありません。」

「さておき、まず一組の変奏が出てきますよ。最初の変奏は・・・(演奏)ここではバス旋律を追うことが出来ると思いますが・・・(バスだけ演奏)この旋律を変奏の基盤にしつつ、使用する音符の音価を徐々に小さくしています。この部分は32分音符ですね・・・(演奏)それから、その他で気づく点として『音域』の(特性を)使ったベートーベンの『ねらい』です。もちろんベートーベンは、素晴らしい作曲家かつ名ピアニストでしたが、彼は単にピアノの音色だけを念頭においているわけではなく、バス音域は・・・ビオラ(演奏)第2バイオリン・・・(演奏)第1バイオリン・・・(演奏)ビオラ・・・(演奏)まるで弦楽合奏曲の作曲家のようですよね。(ちなみに)ベートーベンは既にこの時点で、最初の弦楽四重奏曲Op.18(全6曲)を書き上げています。ピアノ曲において、ごく頻繁に4声体形式の構造を目にしますが、そういったものが弦四重奏を連想させる点ですね。」

「そして第2変奏です。(演奏)またしても小さな点を繋いで絵が出来上がるような、印象派の絵画にみられる『点描的』な表現ですね。まず、バスに『テーマ』が置かれ、右手はシンコペーションをもってその伴奏にあたっているのが、聴き取れると思います。では、続きを第2パートから弾いてみましょう(演奏)全てはp(ピアノ)とピアニッシモの中で構成され、置かれたアクセントも非常に小さくさりげないものですから、こういった点をしっかりと認識しましょう。それから、この部分はどこかユーモラスで・・・なぜって、ピアニストが左右の手を全く揃えられないのが面白いです。『(揃えたいのにも関わらず)両手がなかなか揃わない彼。本当にお気の毒』・・・といった風に。笑」

「さて、ここで驚くほど真新しい何かが始まります・・・(演奏)変イ短調ですから、当時にしては非常に珍しい調です。もちろん、トニック(変イ)の短調ですが、非常にたくさんの♭がついてきます。そして、後でわかりますが・・・この変イ短調の変奏は、あの素晴らしい『葬送』の暗示となります。少し先のことですが。(でもこの時点で)私達は、まだそのことを知りません。笑 もし初めてベートーベンのソナタを耳にしているのなら、本当によく聴かなければなりません。そういう(新しい耳で、いろいろな発見をしながら聴く)ことが、まさに素晴らしい点ですから。それから、続けると・・・(演奏)バスにスフォルツァンド、でもそれはあくまでp(ピアノ)の中で。それはまるで威嚇されているような、危機感のようなものすら感じます。それからベートーベンは、ここで新しいハーモニー・デバイス(ハーモニーにおける心理的影響性のような意味)を持ち出し(演奏)不協和音と・・・(演奏)そして次の変奏へ・・・それはまるで別次元の、異星のような・・・(演奏)再度、ベートーベンは異なる音域を使っていますね。もちろん私は1台のピアノで演奏していますが、何百もの様々な楽器(の音色)を想像しながら弾いているんです。まず、ひとつ目の楽器が・・・(演奏)それからフルート(演奏)クラリネット(演奏)そしてチューバ(演奏)。好きな楽器を想像して構いませんが・・・ピアノ以外で。」

「それから、最後の変奏です。(演奏)神格化するかのごとく・・・(演奏)非常に素晴らしい響きですね。こんな風な響きは、これまでのベートーベンのソナタには見られませんでした。まるで大自然が作り出す音のような『森のささやき』が聴こえると思います。(演奏)・・・それから、ここは非常に賢いやり方で旋律音を潜めています・・・彼は歌を内声に隠しているんです。(演奏)さて、この最後の変奏は3連符で始まりましたね。(演奏)そして、その後は16分音符へと続き・・・それからカンタービレへ移行します(演奏)・・・(旋律は)アルトに・・・(演奏)・・・と、これがこの楽章の終焉部ですが、次にとても詩的なコーダです。(演奏)バスのオクターブはまるで、チェロやコントラバスのピチカートのようですね。(演奏)」

「・・・ということで、第1楽章の『テーマ』と5つの変奏が出揃いました。そして要するに簡単に言えば、これ(第1楽章)自体が、このソナタ全体を映し出していると思います。(第1楽章の内容を)4つの主題と捉らえ、グループ分けして考えみた場合・・・最初のふたつ(第1&2変奏)が第一楽章で、短調の変奏(第3変奏)は・・・(演奏)これが緩徐楽章(第3楽章)の役割です。そして4つ目の変奏が、スケルツォ(第2楽章)・・・(演奏)そして突然に、最後の変奏とコーダがフィナーレ(第4楽章)です。そんなわけで・・・もちろんベートーベンはこの楽章を『アンダンテ・コン・ヴァリアツィオーニ』としていますけれど、私はこの楽章をメトロノーム的に、全て同じテンポで揃えて弾くことは難しいな、と思うのです。私が感じるのは・・・もちろん非常に主観的な見解ですから、意見の相違を唱える方もいらっしゃるかと思いますが・・・私には、短調の変奏は他よりもほんの少しゆっくり目に、スケルツォ変奏(第4変奏)は少し快活めに、そして最後の変奏はまた突然に元のテンポです。ですから、これは・・・(テーマの冒頭演奏)それから、これ・・・(第5変奏の冒頭をテンポの比較演奏)このふたつは全く同じ(速度)です。ではこの章はこれで終わりにして、次の章へ進みましょう。」

「第2楽章はスケルッツォです。(第1楽章の終わりを演奏後)・・・休憩はなしですよ。"attacca"休まずに・・・(第2楽章の冒頭演奏)若きベートーベンです。エネルギーに満ち溢れて・・・溌剌としていますね。p(ピアノ)ですが、とても唐突なアクセントと共に。(演奏)・・・何調にいるかよくわかりませんよね。ヘ短調のように聴こえますが(ヘ短調の演奏)そして、どこに向かっているのかもよくわかりません。(演奏)これで、どこにいるかわかりました。なぜなら、4度上(変二長調)で繰り返されましたから。そして次の部分は・・・(演奏)常にヘ短調の周辺で・・・(演奏)ですが、それを根音とした基本形は一度も出てきません。ですから、私達は・・・出口のようなものを探しています。(演奏)ここでベートーベンは主題をバスに置いていますね。そしてその上部には、素晴らしい対位法です。(演奏)左右の役割を交代し(主題を反復)・・・(トリオの冒頭まで演奏)

・・・と、これがトリオです。変イ長調(で終わったところから)・・・(演奏)ここの調の繋げ方は素晴らしいですね。サブドミナントの変ロ長調です。ワルツ、またはレントラーのようなスウィング感がありますね。(演奏)バスは・・・(バスだけ演奏)・・・ですから・・・(あわせて演奏)ベートーベンはここの部分に、16小節にも渡る『アーチ』を書き込んでいます。本当に膨大です。つまり、ベートーベンは『ここは非常に長いフレーズですよ』と示していますから、私達も長い長いフレーズと捉えなければなりませんね。(演奏)こういったものをワグナーは、自身の音楽上で”unendliche melodie”・・・『終わりのない旋律』と呼びました。ですが、ベートーベンはとっくに知っていました。笑 そして・・・(演奏)スケルツォに戻り、ダカーポ。この後、非常に類稀な素晴らしさをもつ楽章が始まります。(重複割愛)」 

「さて次は、とても有名な楽章です。・・・みなさんごぞんじかと思いますが。(第3楽章の冒頭演奏)”marche de funebre e la morte d'eroes”・・・『ある英雄の死を悼む葬送行進曲』です。この楽章は、ベートーベンが生存していた時代も含めて常にとても人気があり、のち管弦楽用の編曲も書いており・・・さらに、実は彼自身のお葬式でも演奏されました。それからとても重要なのが・・・もうひとつの葬送行進曲。(ショパンOp.72-2冒頭演奏)このOp.26は、ショパンが公式の場で演奏した唯一のベートーベンだと言われています。ショパンのベートーベン(作品)との関係にはむしろ多少の両価性がみられ、例えばショパンはバッハやモーツァルトを大変尊敬していましたが、ベートーベンに対してはある種の・・・難しさを感じていました。ですが、ショパンはこのソナタだけは大変気に入って弾いていたそうです。それに、(両者が)同じように『葬送行進曲』を書いたことは、偶然の一致とは思えませんね。」

「それにしても・・・どうしてこの葬送行進曲を・・・いや、ベートーベンの曲もショパンの曲も両方に言えることですが、みなさんもっぱらノロノロと弾くんでしょう。もちろん『葬送』というイベント自体が『遅さ』と関係しています。ですが、楽譜には『ゆっくりとした速さの曲である』という指示がどこにもないのです。本当に何もないですよ。レントともグラーヴェとも、ラルゴとも書かれていません。これは葬送行進曲で、もちろん結婚行進曲ではありませんけれど。笑 しかし、葬送行進曲と結婚行進曲の間には共通点というものがあって、それが『行進』という単語です。つまり私達は歩いているんだから(鼻歌を歌いながら)ゆっくり歩くにしても限界というものがあります。笑 もちろん主観的な意見で・・・年齢や健康状態にもよりますが、それでも『行進』ですから前へ進まないと。笑」

「(演奏)・・・ここの和音(演奏)これら(の音符上)には『点』がつけられていますね。ここは”secco"乾いた感じの音で弾かなければなりません、ペダルなしで。このことについては以前、名ピアニスト及び素晴らしいベートーベン演奏家のエドウィン・フィッシャーが、とても美しく解説していました。ベートーベンの時代の葬儀では、ドラムの表面をぶ厚い木綿か何かの布で覆うことにより、乾いた・・・忌まわしげな音を表現したそうです。(演奏)もちろん、誰しも作品の詳細について考えたくなりますが、ベートーベンが実際に誰の死を思い描いていたのかはわかっていません。そしてこれについてはいくつもの推察や解釈があり、ナポレオン戦争で活躍した軍人・英雄ナポレオンの死を指しているという人もいますが・・・。私個人としては、むしろベートーベンが賞賛した古代ギリシア悲話や神話などの方が先に思い浮かびます。例えばイーリアスですとか、あるいはアキレウスの死、またはヘクトールの死など。そういった感じの線の方が真実に近いような気がします。なぜなら、ベートーベンは単なる軍事ファンではないですし。彼にとっての英雄像とは、気高く極めて深淵な人間で・・・しかしそういった性質は別段、軍事関係には求めませんので・・・失礼ですが。笑」

「とにかく、この楽章全体がまるで絵のように美しく情景をイメージしやすいので、解説はいらないですね。それから、この行進(行列)は遠くからやってきて徐々にとこちらへ近づいて来たあと、私たちに追いつきます。(演奏)フォルテシモ!(演奏)ここで初めて、フォルテシモが出てきます。そして続く中間部はオーケストラ風です。ドラムロールが聴こえてきて(演奏)・・・これはトランペットとホルンです。面白いのが、ベートーベンはドラムロールにはペダルをつけ、トランペットとホルンはペダルなし、としたところです。彼の指示は非常に厳密ですが・・・解説者(演奏家)は通常これを無視しますね。なぜかわかりませんけれど。笑 ・・・ペダル(演奏)これらはとても基本的な和音で、トニック・ドミナント・サブドミナントです。そして次の部分、トレモロ・・・(演奏)それから、葬送行進曲に戻り(演奏)モノトーンの付点付リズムがあって・・・しかし、本当の旋律は内声です。(演奏)素晴らしい楽章ですね・・・最初の部分と同じものが繰り返された後は、詩的なコーダです。(演奏)ペダルポイントですよ(演奏)そして強い不協和音・・・(演奏)スフォルツァンドですから、心臓をナイフでつき抜かれたような感じです。これはナポリタンの和音・・・(演奏)そして行列は続き、やがて消え去ります。(演奏)」

「・・・そして次に来るのは・・・(第4楽章の冒頭を演奏)これはロンド形式ですね。そしてこのくすんだ暗い図から現れる・・・ここで、またしても私の大好きなエドウィン・フィッシャーの言葉を引用させていただくと、彼はここを『秋雨』と表現しました。『秋雨が静かに墓石へ降りそそいでいるようだ』・・・と。私としては、ピアニスティックと言うよりも何かとても詩的な印象です。・・・残念なことに、この楽章をエチュードのように弾く人が多いですね。エドウィン・フィッシャーは、私達ピアニストに『(この楽章を)エチュードのように弾かないよう・・・クラマーやチェルニーのようなエチュードにしてしまわないように』と警告しています。例えば、最も有名なベートーベンの生徒のカール・チェルニーが、このソナタについてどんなことを述べているかというと『これはまさに、ピアニストの機敏さを披露するための実に素晴らしい機会』・・・つまり、こんな風に演奏して・・・(指の練習曲的な演奏)・・・と、こんな演奏を良く耳にします・・・が、私は酷いと思います。笑

なぜなら・・・私達は、小さな音価の音符や16分音符を見た瞬間、(小さな音価が出てきたというだけで)いきなり高速で演奏を始るべきではないですね。全ては前後関係によるのですから。そして、この16分音符は旋律とハーモニーの両方を隠し持っています。(演奏)うつくしいハーモニーです。全ての構造が、アシンメトリー的で・・・『台詞』のような感じです。葬儀が終わって、参列者たちは静かに帰途へ着きますが、そんな彼らが静かに会話しているんです。(演奏)・・・ひとりがこう言って・・・(演奏)・・・もうひとりはこう言います・・・(演奏)・・・そしてロンド主題へと戻ります。それから、ドラマチックな嵐のような中間部のエピソードがあって(演奏)・・・という風に、中間にあるのはちょっとした嵐ですね。もちろん連続的な16分音符の動きがあって、ペルペトゥーム・モビレ(無窮動)的ですが・・・とても穏やかなフィナーレです。

それから、この素敵なソナタをどのようにベートーベンが閉じるのかに注目してみると・・・(演奏)・・・コーダです・・・(演奏)ペダルの中でディミヌエンド、そして最後全ては消えてなくなります。『絢爛さ』とはかけ離れた終わり方ですが、ベートーベンは何かの効果や成功を狙って書いたりしませんでした。ただ詩的な想像力を膨らませているだけです。そして『ソナタ形式なし』という、この新しいコンセプトのソナタは、全て通して作曲されました。ですから、楽章の合間に休憩を挟んだり、ある楽章を個別に演奏することは(単独では意味をなさないので)許されません。第1楽章の第一音から、最終楽章の最終音まで続けて演奏してくださいね。」



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ピアノソナタ第11番 変ロ長調 Op.22
2016-11-19 Sat 03:20
Part 5. Piano Sonata in B-flat major, opus 22

第三回目プログラムにおける最後の曲「ピアノソナタ第11番 変ロ長調 Op.22」のレクチャー内容です。この曲の講義は30分ほどですが、説明が4楽章分あるので・・・文字数多めです。途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。





「今日のプログラムを締めくくるのは『グランド・ソナタ』Op.22、変ロ長調です。『グランド』な規模の4楽章構成ですね。これは本格的な技巧重視の作品で、恐らく自身がウィーンの宮殿等で演奏するために書かれたものだろうと思われますが・・・まず、こんな風に始まりますよ。(演奏)さて、第1楽章はアップビート(裏拍)で始まり『アレグロ・コン・ブリオ』ですから、溌剌としたアレグロですね。普通のテンポではなく『溌剌と』です。それから、アップビート(裏拍)ですから・・・123(4から演奏開始)・・・非常に難しいですね・・・この(4拍目の)音はテヌートで『12』はスタッカートです。それから、この(と言いながら、ピアノの縁をパタパタパタと叩いてリズムを示し)スネアドラム(小太鼓)のようなリズムです。(演奏)これ自体がモチーフのようで(演奏)これが楽章全体を駆け抜けます。(演奏)ひとつ前にご紹介したソナタは、室内楽的で弦四重奏を引き合いに出しましたが、このソナタは非常に秀逸なオーケーストラ風の表現が大規模に展開されています。きっと、オーケストラ全体によるトゥッティ(総奏)が聴いてとれると思いますよ。では、もう少し演奏してみましょう。(演奏)」

「そして再度、この(上昇していく)音形ですね。(演奏)前半のレクチャーで、既に『マンハイマ・ロケット』についてお話したかと思いますが、これもその良い例ですね。その他としては・・・(マンハイマ・ロケットが使われている作品をいくつか、ダイジェスト演奏)・・・ということで・・・(演奏に戻る)それから、ベートーベンがユニゾンを書くときは誇張表現ですから、高らかに暗唱しています。そして、バスが主導権を握り・・・(演奏)ここは素晴らしいパッセージですね。(演奏)ドミナント(ヘ長調)に到着しました。それから、このパッセージも見てください。(演奏)本当に革命的なピアノテクニックですよね。これまでベートーベンがこんな風に書くのを、いまだかつて誰も見たことがなかったはずです。残念ながら非常に難しいですが・・・(演奏)突然のスフォルツァンドがいくつかあって(演奏)『ピアニッシモ』とありますから、このソナタに出てくるダイナミズムも再度、極端ですね・・・ピアニッシモからフォルテシモまで。前半に聴いたソナタについては、ダイナミズムも・・・普通というか、控えめなレベルでしたが。(演奏)」

「それから、第2主題がユニゾンで現れます。ここで、変ロ長調繋がりの曲についてご紹介したいのですけれど・・・(ハンマークラヴィーア冒頭、演奏)ハンマークラヴィーア Op.106ですね。ですから、この作品は私から見ると・・・ハンマークラヴィーアの『予習』のような感覚です。なぜならこの2作品には、とても重要な関係がありますので・・・この事については、ハンマークラヴィーアの回でもっと詳しくお話しますけれど。とにかく、ここで重要なのはここが『3度(重音)』によって組み立てられているということです。(演奏)そしてフーガ・・・(歌いながら演奏)ということで、このOp.22では3度という音の距離があり、よって旋律も3度で繰り広げられます。(演奏)そして変奏です。(演奏)・・・と、少し不安感が出てきた後、協奏曲的な技巧パッセージへ。(演奏)つくづく外因性の刺激(経験)に基づいて作られた音楽だなと感じます。(演奏)それからこのトレモロ・・・(演奏)まるでティンパニーのロール奏法(細かい連打)のようです。それと、前にも出てきましたが『頻繁に入れ替わる長調と短調』・・・(演奏)そしてナポリタン調の色、ファとソ♭の関係です。(演奏)3度に注目してみてください(歌いながら演奏)まるで本物のハンマークラヴィーア・ソナタのようですね。」

「さて、展開部はとても興味深いですよ。(演奏)・・・このドミナントで止まったら(演奏)・・・ト短調の(ドミナント)です・・・(演奏)その後、事は極めて複雑に発展し・・・擬似的な表現だらけになりますよ。(演奏)この非常にポジティブな印象だった原始的フレーズ(演奏)これが、原始的とはかけ離れたものへ変化しました。なぜなら、ベースに置かれた上昇音形とソプラノの下降音形による対比・・・(演奏)それからこのモチーフ(導入部に出てきた同じ音形との比較演奏)では、全て一緒に。(演奏)たいして何も起こっていないように見えますよね・・・まず♪パタパタパン♪というドラム風モチーフがあって、アルペジオがあって。ですが、私達が本当に注目すべきはバスです。バスに置かれた下降音形が徐々に低くなっていき・・・ミステリアスさを増していきますよ。(演奏)そしてベートーベンは、締めのモチーフで突如、全く違った趣向を見せます。16分音符がこんな風に・・・(低音の下降音形の上に旋廻するソプラノ16音符、演奏)もう一度・・・(演奏)長~いドミナント・・・(演奏)17小節にも渡るドミナントです。そしてフェルマータで閉じますが、こんな風にフェルマータで止まるのは(再現部に移行するまでの間において)ここが最後です。(演奏)そして反復。この後に来る再現部は、非常にトラディショナルな形で、特に驚くような仕掛けはありません。」

「第2楽章は、アダージョ・コン・グラン・エスプレッショーネですから、普通のアダージョではなく。とてもオペラ風かつイタリア風です。拍子記号は9/8拍子ですから、123456789、12・・・ですが、3を基本の単位とするアダージョと捉えるのが妥当でしょう。なので、ゆったりとした3カウントで 123 456 789・・・(演奏)そして、ここの強弱指定は『ピアニッシモ』ですから、つまり『ピアニッシモの中で極めて感情豊かに』ということになり、これはある意味矛盾した指示と言えるでしょうね。・・・とても難しい注文です。以前にもお話しましたが、ベートーベンは『レガートの達人』で、ここにも8小節に渡るレガートのスラーが出てきます。これは、例えばバイオリニスト達が一弦で弾くことが出来ないほどの長さです。しかしそれでも、一弦で弾くような『気持ちで』弾かなければならないということですね。それから、この音楽は何かとても目新しい印象を与えます。当時、他にどのような音楽が流行っていたか、ということをよくよく考えてみるとわかりますが、ベートーベンは音楽界に真新しいスタイルを提供しました。それが『重力』です。完全なまでの重み・・・(演奏)」

「非常に重要な点としては、9/8拍子の拍感を常に基盤として感じながら弾くことです。その(基盤の)上でこそ、旋律は十分に歌うことが出来ますから。また、この発想が後にショパンやリストの好んで使う『テンポ・ルバート』となるわけですが、『クレメンティの両手がいつも揃っているのは、好きじゃない』と発言したモーツァルトをみてわかるように、実はモーツァルトが(テンポ・ルバートについて)ずっと前から言及していたと言えるでしょうね。そんなわけで、これがベートーベンが表現したかった音楽です・・・(演奏)グラン・エスプレッショーネ・・・そして『ソスピーリ』、ため息のモチーフ。それから、この大規模なソナタ形式の『アダージョ』導入部は、こんな風に終了します・・・(演奏)9/8拍子の『鼓動』を感じて・・・とてもミステリアスで、2005年現在においてもなお非凡な響きです。(演奏)すごい不協和音です・・・(演奏)・・・転調して・・・(演奏)この部分では、主題から欠片を取り出して(演奏)さらに小さな破片・・・(演奏)そして、ドミナント(変ロ長調)の間口まで来ました。(演奏)・・・クレッシェンド・・・そしてスビトピアニッシモ・・・(演奏)そして反復(演奏)ここでもまた、リディアンが出てきますね・・・(半音高く変化する部分を強調して弾いて)・・・とても美しいです。」

「第3楽章は、比較的軽めの楽章となります。なぜなら、壮大で交響曲的な第1楽章と、素晴らしい重力を持つ第2楽章の後ですから。そして第3楽章は、とてもハイドン風に幕を開けます(演奏)単純な4~8小節構成のフレーズですが、全くの『純朴さ』だけというわけでもなく・・・(演奏)ほら、このソ♭が『ちょっとした裏切り』ですね。(演奏)続く中間部もまた、新しく革命的です。(演奏)♪らりらりらりらりらっ♪とオーケストラ風のtremolando(トレモロ)です。(演奏)トリオ部分も、またドラマチックですね・・・今メインの部分は弾きましたので、トリオから続けますよ。(演奏)ハンマークラヴィーアの第3楽章を思い起こしてみると・・・(比較演奏)これらがメインの音で・・・(演奏)シューマンですら、自己の軽快なソナタの中でこのフレーズを『拝借』していますね。(演奏)ということで、これがメヌエットです。」

「それからこのソナタは美しいロンド(第4楽章)で締めくくられます。『アレグレット』ですから、速い楽章ではないですね。ほんの少し『春ソナタ(バイオリンソナタ5番)』の最終楽章のようでもあり・・・(比較演奏)またはピアノソナタ4番の・・・(4番最終楽章の冒頭、比較演奏)そしてこの楽章は、というとこんな風です。(演奏)カンタービレの歌唱形式で、それから『オクターブのレガート』というテクニックが出てきますが、これもべトーベンにとって新たな試みです。(演奏)ここの内声は美しく・・・(内声を強調した演奏)ここで初めて第2主題が出てきてますね。(演奏)対位法による展開が非常に美しく、(旋律が)バスとソプラノで交互に繰り返されます。(演奏)それから、交響曲的な部分が始まり・・・(演奏)ごく断片的な主題を使って・・・お互いの旋律を真似し合っています。(演奏)このあたりは、いかにもベートーベンという感じで・・・2連符、3連符そして16分音符です。その後、とても重要な部分に差し掛かります。(演奏)」

「実はこのフレーズ、既にあどけない形で耳にしていますが(演奏)今度は短調ですから、ドラマチックです。(演奏)するとすぐさまトッカータ風の、非常にミステリアスで熱気を帯びた主題へと続いて(演奏)・・・本当に素晴らしい表現ですね。こういったものは真の作曲家にしか書けません。そして、こう続き・・・(演奏)ここは極めてハンガリー風ですが、私は部分的(なハンガリー人)ですからね。笑 (演奏)そしてフーガ・・・厳密には『フーガのようなもの』です。なぜなら(途中から)フーガ進行しなくなりますから(演奏)トッカータへ戻って(演奏)ハンガリー風に!(演奏)・・・と、ここで突然雰囲気が変わり、バスが・・・(バス旋律を歌いながら演奏)・・・ピアニッシモ・・・(演奏)ここも素敵ですね。トリルを書き起こしたような感じです。とそこへベートーベンは、準備もせずにこっそりと主題を登場させます。(演奏)主題はビオラとチェロに受け渡され(演奏)そして第1バイオリンが引き継ぎますが・・・(オーケストラにおいて)もちろん全てのパートは平等ですけれど。それでもやっぱり、最後は第1バイオリンがリードするんですよね笑・・・C'est la vie(人生なんて、そんなもの) (演奏)変奏があり・・・(演奏)コーダについて触れると、メヌエットのトリオと関連性があって・・・(演奏)・・・とこれがOp.22。私が今この曲について言えることは、これで全部かなと思います。」

別窓 | シフのレクチャーコンサート。 | コメント:0 |
夜弾けない怖い曲。
2016-11-19 Sat 02:00
どうでもいいことに時間を使う天才、ゆにくあです。


とあるピアノフォーラムで話題になってたんで。
『夜練習したら絶対怖いでしょ曲集』です。

ムズすぎて、朝でも弾けないっつー突っ込みは
まぁ置いといて。笑 ・・・結構たくさんあります。

まずは有名曲。


これずっと前に載せたことあるけど、歌いわけがすごい。
魔王パートの時、一番やさしげな声。でも目はマジなのが
めっちゃ怖い。。




オリジナルはオケですね。曲も怖いが、これを弾きこなす
Berezovskyはもっと怖い。



これも代表的なおっかない曲でしょうか?



・・・恐らく、3秒で近所から苦情がきます。



この・・・だんだん迫ってくる感。子供は絶対、怖いはず。



大好きなプロコフィエフですが、精神崩壊系。悪夢ってこんな感じ。



私の大大大好きな曲。タイトルどおり、童話的怖さ。
めくるめくリズム変化に鳥肌。



雰囲気を出すにも、えらい技術がいりますね。。そして騒がしい!



く、暗い・・・。夜練習したら、鬱死。がしかし、プレイエルかっこいい。



1&2楽章が不気味だと思う。聞きなれない音の連続。
どーでもいいが、このおっさんの首の位置がデッサン的に
間違っている気がして気になる。



アルゲリッチさんは、子供の頃にこの第2楽章が怖くて
仕方なかったため、今でも4番は弾かないとか。私は
むしろ、かっこ良過ぎて身震いするけど。。


気持ちは分かるが、なんつータイトル。そして、
曲的には同じ音形地獄。おそろしい・・・


基本的にスクリャビンのソナタはほとんど全部
薄気味悪い。


アダムスファミリー的ミケランジェリさん。なにげに
旦那のお父さんに似ている。他ドビュッシーだとこれも。



そして、わたし的には、これもはずせません。美しい不気味さ。




人によっていろいろでしょうけど、夜の不協和音は
基本的に怖いかな~


つーことで、最後は明るく。



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ピアノソナタ第10番 ト長調 Op.14-2
2016-11-18 Fri 02:30
Part 4. Piano Sonata in G major, opus 14 no. 2

第三回目のプログラムより「ピアノソナタ第10番 ト長調 Op.14-2」のレクチャー内容です。この曲の講義はわずか20分弱です。シフさんの優しいお人柄を垣間見ることが出来る回です。笑  途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。





「続いて9番(Op.14-1)の姉妹作、Op.14-2はト長調です。この作品は、叙情的でとても明るくユーモアもあり、特に第2&第3楽章では面白いタッチもみられます。とはいえ第1楽章は、とても叙情的です。(演奏)まず『カンタービレ』ですから、歌うように表情豊かに。ここは非常に大きな音程差が出てきますよ。(演奏)下方向への9度差・・・(演奏)・・・あるいは、上方向へ10度差など。(演奏)第2主題は言ってみれば、ふたりの歌姫によるオペラ風のデュエットですね。(演奏)それから、次に出てくる第3主題は(時代関係を無視した発想で言うと)ロバート・シューマンを彷彿させます。(演奏)このような中声部の動きですとか・・・常に一方がもう一方に影のごとく寄り添って歌っていますね。ベートーベンが使ったこのような音形をシューマンは賞賛し、彼自身の作曲スタイルへも反映させて行ったんだと思います。」

「さて先ほど、9番の展開部は比較的短いです、とお話しましたね。それに対して、この10番の展開部は非常に大きな作りとなっている上に、かなりドラマチックです。(演奏)・・・歌姫たちです・・・(演奏)ベートーベンはここの部分・・・こんな風に(演奏)スフォルツァンドが必要だと主張していますね。それからフェルマータで止まって・・・このように続きます(演奏)・・・こんな風に続くと予想するかと思いますが(演奏)・・・でも、この音(演奏)これがベートーベンの使っていたピアノの最高音だったんです。これ(ひとつ上の音を鳴らして)は存在しませんでした笑 ですから・・・(このような部分から)大作曲家ベートーベンが、いかに楽器の機能的限界の中でやりくりしているかが見てとれて、興味深いですね。笑 (演奏)バス音に注目してみると・・・既にドミナントですね。そしてまたしても、非常に長い・・・(演奏)まるでオペラのレチタティーヴォ(普通の話し言葉に抑揚をつけたような歌い方のこと、だそうです)のようです。それから再現部へと移りますが、(再現部は)予想出来る範囲内の、あるべき形を取って・・・その後、とても詩的なコーダ。(演奏)・・・という風に、最後は気と化します。」

「第2楽章は、ベートーベンのソナタの中で初の『変奏曲形式』です。テンポはアンダンテ。私にとっては、とても愉快な楽章です。おわかりになるかと思いますが、ドイツでは『(歌うのを)やめなさい、面白くもない!』とすぐ言われますが・・・ドイツでは全てが『面白く』ないですからね(ドイツ人は生真面目・・・という意味の冗談)笑 ですが、本当にとっても面白い楽章なんですよ。なぜなら、これはまるでミニチュアサイズの兵隊さんのマーチのようだからです。子供たちが遊びで使うようなブリキの兵隊・・・軍隊ではなく、ね。(ですから)今時の感覚とは少し違いますよ。笑 とにかく・・・これがとても美しいんです・・・(演奏)キャラクター的には愉快な感じです。なぜなら、極めて『短い音』を使っていますからね。そしてこの部分は、もちろん短い音で演奏されるべきだと思います。最近の演奏家は・・・こういった短い音を使うことを、ほとんど・・・恐れているかのような印象を受けますが。そしてそれは、この『コミカルに聴こえる効果』が原因でしょうけれど、(この楽章は)コミカルであるべきなんです。」

「Sir トーヴィーが面白い指摘をしていましたが、和声的にも実に愉快なんですよ。なぜってメロディーがハーモニーで止まる度、決まってそれはドミナントの和音なんです。これがハ長調で・・・こっちがドミナント和音ですね(演奏・・・そのまま続けてドミナント和音が出てくる度に、ドミナント!と言いながら演奏)それから、マーチ第二部は突然叙情的で美しく。レガートです。(演奏)・・・またコミカルに戻って(演奏)このように、アクセントは全てオフ・ビート上に置かれていますから、常に『間違った場所』というわけです。笑 もう一度、(違いに)慣れるために第二部を演奏してみましょうか・・・(ここで会場から咳が)・・・あ、誰かお水が欲しい方いらっしゃるのではないですか? どうぞ、ご遠慮なく・・・え、いらない?笑 ええと、とにかく・・・(とここで、会場から『すみません』という女性の声、と間を置かず)お気になさらず! お水いりますか? 遠慮しないで。ほら、受け取って。大丈夫ですよ。笑 それじゃ・・・(演奏)スフォルツァンドがあって・・・(演奏)それから面白いのが、ベートーベンは最初のパートは繰り返さずに、でも2回目は繰り返して。と指示していることです。」

「それから、最初の変奏が始まります。(ここはもう)コミカルではありませんが、弦四重奏を思い描いて・・・ビオラとチェロが第1モチーフを弾き、第1バイオリンがシンコペーションと共に伴奏をしていますよ。(演奏)第2変奏は『点描的』で、最初のモチーフのアウトラインをなぞる形です。そしてそれは、いわば印象派の絵画『ジョルジュ・スーラ』のようでもあり・・・散らばった点を集めていくと『絵』が浮かび上がりますよ。(演奏)ここはクレッシェンドなしで。そして、スビト・・・(演奏)そして4小節の『橋』があって・・・(演奏)それから、最後の変奏は『モルト・レガート』という指示付きです。非常に厳密なレガートですね。ここは本当のレガートで・・・ペダルで、という意味ではなく、崩壊しない程度に・・・出来る限りの音を指で繋いでください。笑 (演奏)美しい旋律が隠されていますね。そして、この変奏の後を・・・私は"Mars oublier"『忘れられたマーチ』と呼びたいと思います。・・・そういえば、今日は3月1日ですね。笑 ということで(演奏)・・・(休符のところで)忘れて・・・(演奏・・・ジャーン!という強い終止)ベートーベンはきっと、ここで人々が笑顔になることを期待したでしょうね。なぜって、(この最後の和音は)まるで顔に平手打ちを食らったような感じですから。笑」

「そして、この素晴らしいソナタは(ロンド・ソナタ形式の)スケルツォで終わりを迎えます。(第3楽章は)3/8拍子ですから、123、123、123ですね。しかし実は、リズム的にとても曖昧ですよ。なぜって2拍しか聴こえませんから。(演奏)12、12、12・・・と聴こえませんか? でも本当は(123、123、123・・・と、へミオラのリズムを示しながら演奏)・・・ここはフェルマータで・・・(演奏)それから、最初のエピソード(第2主題)は、非常にドラマチックに。(演奏)2つ目のエピソードは、このように素晴らしいドイツ舞曲風 ”Deutsche tanzen"です。 (演奏)そして、このドイツ風の踊りが終わると、ロンド主題が『間違った調』で出てきます。(演奏)・・・転調して元へ戻り・・・(演奏)・・・で、反復。それから、ドラマチックなコーダへ向かいます。まず、ロンド主題が著しく間違った調、ヘ長調で聴こえてきます。(演奏)・・・これが主調(ト長調)でしたね・・・(比較演奏)・・・とても遠く(ヘ長調)に来てしまいました・・・(演奏)ここでベートーベンはバスを半音階的に移動させて(演奏)・・・とこのように、まるで協奏曲のような素晴らしい終焉を演出するようなフリをしますが。しかし・・・彼がどんな風に終わらせたか聴いてみてください。(演奏)・・・と、こんな感じです。笑 本当にとってもユーモラスですね。それから、これは少し『リディアン風味』なんですよ。まず、ト長調が(ト長調スケール演奏)この4度を(半音高く)変えてみると・・・(オルタード・スケール演奏)ある種の『スパイス』が加わります。ちょっとした・・・胡椒みたいなものですね。」

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3年と3か月。その1
2016-11-17 Thu 05:30
レッスンでした。


今日は1時間まるまるテンペストだけ。

(・・・なぜなら、それしかやってないから笑)


レッスンが始まる前に病院での経過の話。
レントゲンが~とか、薬はこれで~とか。
しかし、いつの間にか先生の健康の話にw

練習時間について、医者と話した件にも
触れたんだけど・・・さすが先生。

私の実練習時間を言っても、たじろがない。
(というか、むしろ『そのくらい平気』的な)

***


ということで、まずは第1楽章を先生にみてもらう。

テンポ的には、この間あげた音源と同じくらいか、
ちょい速めの速度で。出来るだけpp指示のところを
守るように・・・気を遣って弾きました・・・。


先生「すごい! 全部合ってた!!


・・・・リズム以外は。」



backhanded compliment...


・・・というか音間違えてないことを、先生から
こんなに喜ばれるのは、恐らく私くらいですか。汗



ええと、ということで今日のレッスンはリズムの修正。
それから、ペダル。ペダル使いすぎ!と厳重注意を
受けました。汗


覚えている範囲で、後で忘れないように書き残すと


最初のコードの弾き方。2種類みせて「こういう風に
均等に弾く人と・・・それから、こういう人(最初の音を
やや溜めて、残りはひっぱったゴムが戻るみたいに
速く弾く)がいるんですが」と確認したら、

「私が弾いた時はそっちだった」と、後者を選択。

よかった。私もそれが好きだから。

あちこちに出てくるじゃら~~~んってコードに
ついては、基本トップ音をやや目立たせるように。
その音が続く(4分音符への)旋律の頭だから。

アレグロ冒頭について。あくまで最初はpから。
徐々にクレッシェンドして不協和音でsfに到達
できるよう、うまく配分すること。



そして、問題のリズムはもちろん・・・

マンハイム・ロケットの右手の3連符です。

・規定速度で弾く場合、もちろん数えながら弾くわけにはいかないけれど、それでも常に3連符を感じて弾かないとダメ。今の私の弾き方だと、フリースタイルのトリルに聴こえる。しかも、時々音が多かったり少なかったりしている(汗。しかし、正しい部分練習すれば、速度が上がっても勝手にばっちり合うから、まあ心配しなくてよし。

といった説明。

実は・・・当然、ゆっくりと部分練習したんですが・・・
やはり速度が上がると、途端にわけわからなくなる私。
特に後半の、重音が入ってくる3連符は非常に難しく、
速く正確なタッチで弾くのはとても・・・・・・・・疲れます。

そこで、練習の仕方のお手本をみせてもらいました。

そして、先生の言うように、しかるべきところへ仮の
アクセントを置いて(リズムの矯正用に)弾いてみたら、
途端にリズムが掴みやすくなったし、疲れにくくなった!

やっぱさすが先生&大収穫。

それで、マンハイムが終わった直後のとこは・・・
というと、もう3連符のリズムではないのだから、
違いがはっきりとわかる弾き方を。                                                    


それから、55小節目の最初の音が短すぎる。
スタッカートはスタッカートだけど、きちんと
4分音符分をとった間隔で弾く。

(つい細部は耳で覚えてしまうので、音価ミスは
・・・本当にいつもいつもです。汗)

58小節目終わりから59小節目をスタッカートで
きらない。そこはレガートで繋ぐところ。

そして、そこから続く部分のオクターブについては
アクセントをはっきりさせてリズムを強調。
ダイナミズムはディクレッシェンドして最終的にp
まで持っていく(というのが、下手すぎるから練習)。

その後の左ドコドコについては、フォルテシモ後の
音がオクターブ違う。(やっぱ音違うところある件

「私、いっつもこういうミスありますよね・・・・」

「大丈夫大丈夫。私の生徒で他にもいるから。
彼は、それ以外は完璧に弾くんだけど、いつも
全然違う場所で弾くから、おかしいわよ~笑。
・・・つまり、あなただけじゃないわよ。」


な、なぐさめ・・・ありがとうございます。


で、左手ドコドコが終わったあとのフレーズは、
左にもメロディーがあるから左を抑えすぎず、
両方の旋律をきちんと聴かせるように弾くこと。


繰り返しが終わって、ラーゴのアルペジオも
2分音符をきちんと聴かせる。


フォルテシモのマンハイマ後、
121小節目からはもう3連符ではないのだから、
リズム厳重注意。今のままだと速すぎ。

137小節目の装飾音は左と同時でよし。

その後のラーゴ。

ここはシフさんいわく、
「ペダル踏みかえなしで音を泳がせるように」という
ことだったので、そのように弾いたんですが、先生は
「そこはレチタティーヴォ。ペダルなし&指だけで
響かせなさい」と真逆のことを言うので・・・・ん・・・・と
思ったけど、

私の先生はシフさんではなく、目の前にいるこの女性
なのだから、先生の指示通りに弾こうと思います。


156小節目、第一音のドは4分音符!(またしても音価)


それに続くアレグロ、例のミステリアス・スタッカートと
アルペジオんところ。ここ・・・まんまと間違えて弾いて
いました。

「3連符、3連符、3連符・・・で、真ん中が6連符、そしたらまた3連符、3連符、3連符で最後は4連でしょ!」


あ・・・・ほんとだ。笑 しまった、速くミスらずに弾くことに
夢中で忘れてた(汗 つーかこういうの、ノクターンで
さんざんやったじゃーん、自分。汗

ということで、しばし先生の前で練習させられて
出来ているようなので、次。

でこっから先は、音形的に同じことなので
注意点も同じだから省略。


・・・と覚えているだけでも、注意点たっくさん。。

ここにはあまり書いてませんが、ダイナミズムと
ペダルの有無も結構教わったので、飽和状態。


この時点で残りあと5分くらいだったので、さらっと
第2楽章もみてもらって、ピンポイントで質問だけ。
詳しくみてもらうのは、次回からになります。





最終的なテンポについて。

もっと速く、と言うかと思ったら、予想外にも
今くらいのテンポで良いとのことで

「あまり速くても、ひとつひとつの音が聴こえ
なくなっちゃうでしょ?」

だそうです。


来週は、ほぼまる1週間家を空けるから
(サンクスギビングなので)
練習ほとんど出来ないなぁ~。。

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手書き楽譜選手権!
2016-11-15 Tue 13:53
ゆにくあです。


ちょっと先の話ですが・・・
シフさんが、ソナタ12番のお話をされている時に

「ベートーベンの手書き楽譜を見られるって幸せだよね!」

的なことを、本当に嬉しそうにおっしゃっていたので
気になりだして、ふと調べたところ。

既にこんな感じで 2年前、話題になっており。

ベートーベンの手書きの楽譜が風景画みたいとTwitterで話題に」





ちょっとこれ? 汗



・・・ということで、作曲家別 比較大会。


まずバッハ。(クリックで拡大)

bach.png

さすが父さま。しかし、読めても
私には弾けない。



そしてモーツァルト。

mozart.jpg


余白残しすぎ。という部分が気になる
貧乏性のゆにくあ。



さらに、ショパン。

chopin fantazja F Moll Op49

間違えた部分?の消し方に、神経質さを
感じます。


それから、シューマン。

Schumann.jpg


読もうと思えば、なんとか読めそう。
てか、ここまで来て思った。


消しゴム使えないってすごい辛くない?


しかし、小奇麗さで言うと実は・・・


Antonio Salieri (1750-1825)

あの、サリエリに勝てる人いないっぽい。





・・・さてここで再度、ベートーベン。


beethoven.jpg




・・・・だから、よめないってば。笑




これ見て萌えるシフさんの
気持ちを・・・猛烈に理解したい。
したいけど、凡人の私にはできない。

できないが・・・しかし、

この原稿をみて『熱情』とか『悲愴』とか
『嵐』とかタイトルをつけたくなった人の
気持ちはわかる。

出版社の人、うざかっただろうなぁ。
だって、この状態のくせに

「出版社と密に連絡をとって印刷具合を確認」

したわけでしょ。ベートーベンって。

いや、これ大天才だから許されるけど・・・
印刷所のおっさんが切れるレベルだよ。笑



あでもね、ましなのもあるんですよね。

これとか


moon light 1st mov

月光第1楽章より。頑張れば
どこだかわかりそうな気が・・・

moon light 2nd

月光第2楽章より。これもちょっと
雰囲気だけ伝わってくる。


sonata 32

これは、ソナタ32番だそうです。
暗号解読した人、えらすぎ。


あと、

こちらのページの、有名音楽家別 
ト音記号・手書き比較図も割と面白いよ。



・・・・とここまできて、疲れを覚えた方へ。
選手権の圏外エントリー。




・・・誰? かわいいんだけど笑

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かたつむりの一日。
2016-11-15 Tue 03:30
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恒例のレッスン前録音。
2016-11-13 Sun 15:30
ゆにくあです。


さて、テンペスト第1楽章を録音してみました・・・。



来週どっかでレッスンがあるんで、そろそろ聴いておかないと
ということで無理やり録音しましたが。最初に弾いた時ですね、
終わって・・・ふと見たら録音ボタン押し忘れてました。汗


もー!!!!


いや 「せっかくうまく弾けたのに!」とかじゃないです。



とにかく、気を取り直してもう一回。


そしたら、今度はリピート1回でいいのに2回してました。
・・・な、なぜだ、自分。頭ではリピート面倒くさいって
思ってたじゃないか!

(しかも聴くまで気づかなかったという。汗)

やれやれ、どうりで疲れているわけだ・・・。



・・・・ということで、3回目の演奏です。


遅いのは、もう仕方ないとして・・・
なんか、ダイナミズムっていうんですか。。
アレグロが全部メゾフォルテになってます。


pで弾きたい気持ちはあるんですよ!
だけど。。実際、弾くので精一杯(笑





ということで、ミスタッチ・弾きなおし(すいません)等
たくさんあります。特に最後の1ページは、あまり
ちゃんと覚えていないみたいで、止まりまくりです。。


それはそうと、最初のマンハイマ・ロケットに入るとこ。
私のなんかリズム違うかも・・・耳で聞くと絶対何か変。
直したいけど、どう直したらいいのかわからん!!

あちこち自信がないから、ガツンと飛び込めません・・・。
あとまだ先生に一度も見せていないので、まぁ恐らく
あちこち間違ってると思います。。







テンペスト第1楽章 練習6日目。

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覚えてますか、アクロバット奏法。
2016-11-08 Tue 04:56
おはようございます、ゆにくあです。


【ここまでのお話】

やっと真剣に練習を始めたテンペスト。
よく考えたら、なんで私のような新参者が
こんな恐れ多い曲を練習しているのか・・・と
自分でも思いますが、とにかく練習練習。


そして今日。

それで、1月に試し弾きした時、
わけもわからず「アクロバット奏法」と勝手に呼んでいる
してたって話、書いたじゃないですか。

参照ページはここ

ちなみに今読むと、この時に 
『(出来ない)この動きだけ抜き出して練習する』
とか抜かしてますが・・・


してないです。

(1月のことなんて、2月には忘却の彼方)



で、それはいいんですよ。今やれば


それよりも、このアクロバット奏法やってる人
今朝みつけちゃったんだけど!




動画の詳細欄を見るに、モスクワの音楽学校での
ひとこまのようですが、この向こう側に座ってる
男性が大先生で、斜め後ろにすわっている方は、
おそらく普段の先生? あるいは・・・
単に英語が話せる、通訳係の先生? 

よくわからないけど、どっちにしても音声が悪くて
会話はほとんど何言ってるか聞き取れませんが。




・・・見てると、彼女あれやってるんです。
両手をスイッチする技。


おお~! ここにも私と同じことしてる人が。汗

(しかも大先生の前で) 

ん? でも大先生、それに関して何も言わない。

彼女が一所懸命に弾いてる途中、こころなしか
だんだんとそわそわしていく先生方。
時折(リズムの助け舟として)膝叩いてたり。
私がレッスンしてる時の先生も、間違いなく
こんな感じに違いない。。。


それで、ひとまず演奏終了。まず何を言うかな~
と思ってみてたら、Dマイナースケールやってみろ。
となっていて、そのままアクロバット奏法に関しては
なんのコメントもなくレッスンは進んでいく・・・。


ということは、左右スイッチするのもありなのか?

・・・と、





バレンティ-ナもやってるじゃん。笑


いや、

私はもう、左手クロスする弾き方に馴染んじゃっ
たんで、いまさら変えませんけど。。それに、
手をスイッチする方が難しいでしょ。絶対。笑
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やっと練習、テンペスト。
2016-11-07 Mon 11:06
ゆにくあです。


宿題のテンペスト、練習やっと始めました。


実は・・・昨日までは、レッスンとは全く関係がない
別の曲を譜読みしてました。でテンペストは、単に
楽譜を眺めて和音進行を見たり、構成を見たり。
みたいなことをしてぐだぐだと1週間・・・。
(ここが一番楽しいので、つい)

しかしレッスンまであまり時間がないことに気づき、
今日辺りから慌てて実際にピアノで弾く練習を始め
ました。。先生、時間あったら全楽章みとけとか
言ってたけど・・・時間ないです!笑


それでご存知のとおり、

第1楽章はいろんなテンポが出てきて、それが
コロコロと入れ替わるのですが・・・曲全体の基本と
なる拍を後ろに感じておかないと、まるで統一感が
なくなって、速くなったり遅くなったりしてしまうと
思い、昨日は夜中から楽譜見つつ、歌いながら
永遠に手拍子、足拍子~。笑


ちょっと・・・人様には見せられない図。
ですが、ここが最初の難関なわけです。笑


それで、寝て起きてから・・・おそるおそる練習。

もちろん主婦ですから洗濯したり夕ご飯の支度は
かろうじてしましたが。もー、さすがテンペスト。

曲が素晴らしいので超、麻薬的。
特にミスしないと楽しくて仕方ないんですよ!笑
(いや・・・だいたいミスしますが汗 そこは
あえて突っ込まないでください)


それで

ほら、1月に玉砕した2分の2拍子に3連符を
あわせる部分。笑 (大丈夫かなぁ)と心配して
たんだけど、なんと今は大丈夫なんですよ!笑
大丈夫というか、大丈夫じゃないけど・・・
とりあえず左右が合う。という意味で、です。

あの部分、本当に気持ちが高揚します。。
恐るべし、マンハイム・ロケット。

だからその直後、自分を抑えるのが結構大変。
もうね、その時点で気分が最高潮に盛り上がって
いるのと、次のアジタートな雰囲気も好きなので
勝手にがっつり弾きたくなりますが、

・・・その気持ちを抑えて一気に静かに。。

しなくては。。。出来てないけど。


あとですね、全体的に曲に興奮しすぎてミスタッチ
するんですけど、これってやっぱり変態ですか。

それで「夕食なんか後、後」とそのまま弾いてて
今さすがに(お、お腹すいた・・・)と思い、キッチン
行ったら、家族に夕食を完食されてました。汗

ま、そんなことはどーでもいいんです。

とりあえず、先へ先へ進めることよりも、部分ごとに
テンポ・リズム・アクセント・タッチなどを全部一度に
みながら、少しずつ進める方式でやってみてますが。
最初から駆け抜けるように弾いちまいたい誘惑
に負けずに、ゆっくり確実に間違えないように・・・
と弾くのも、この曲の場合は精神力が要ります。

それと

当然ですが、リズムが難しいところとか、アクセント
つけにくいところとか、すぐ飛び込まなくちゃいけな
いのに和音掴みにくいところとか、弾きづらい音形、
挙げ出すとキリがないですが・・・今、一番要練習
なのは・・・2か所。左手が静かにドコドコしてるとこと
後半のアルペジオんとこ。。。

左手ドコドコは、まだ暗譜してないので、楽譜を
見ながら弾いてると毎回わけわからなくなります。

後半のアルペジオんとこは、かっこよすぎて
鳥肌・・・という部分のはずなんですが。汗
私の場合、幻想曲、ピウ・アレグロの悪夢再来。


とりあえず流れ的に、シフさんの第一楽章。笑


1:41からが左手ドコドコ。7:09からがアルペジオ。



ちなみに第2楽章はまだ楽譜みてるだけ。
それと第3楽章はあまりに美しすぎて、なんとなく
大事にとってあります。笑 1&2のあとで大切に
練習したいです。。

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ピアノソナタ第9番 ホ長調 Op.14-1
2016-11-05 Sat 06:55
Part 3. Piano Sonata in E major, opus 14 no. 1


引き続き、第三回目のプログラムより「ピアノソナタ第9番 ホ長調 Op.14-1」のレクチャー内容です。この曲の講義は30分弱です。ところで、書き溜めたものが尽きたので、(ちょっと中途半端ですが)ここでいったん1週間くらい休憩を挟むと思います。譜読みにも集中しなくてはいけないので(笑 

途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。




「それでは、全く異なった世界へ移動しましょう。同時期に書かれた作品、Op.14ソナタです。この作品も『軽いソナタ』『やさしいソナタ』と一般的に認識されていますが、私はその意見に賛同できないと言わざるをえません。なぜなら、Op.14は恐ろしく難しいと思いますから・・・演奏するのも、その解釈も。最初の作品(Op.14-1)はホ長調で、3楽章構成。まずは導入部を演奏してみましょう。(演奏)・・・そして、導入部の反復となります。お聴きになってわかったと思いますが、全く異なった世界観ですね。非常に・・・ミステリアスです。それから、ベートーベンはこの曲の弦四重奏版も書きました。半音上がった『ヘ長調』です。そして非常に興味深いのが・・・もちろん2曲は全く違う曲ですが、なぜかこのソナタにも常に弦四重奏を感じるのです。第1バイオリンが誘導し、そして伴奏のモチーフは常に8分音符分欠けていて『 ぱぱぱ、 ぱぱぱ、 たたた、 たたた』という風に、軽いモチーフです。(演奏)それから、頭の4音を取り出しすと・・・(メロディーの単音演奏)・・・という感じですが、これを移調させてみると・・・(*恐らくOp.110からの抜き出し演奏)・・・これ知っていますよね。そして、もう一度移調し直すと・・・(演奏)・・・うりふた・・・いや、うっかりでしょうね。」

「とにかく。(演奏)そして次のパッセージが、どこからともなく突然現れて・・・(演奏)聴こえると思いますが・・・第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、そしてチェロ。(再度演奏)4つの楽器ですね。そして、チェロの最後の部分だけ・・・(演奏)違い・・・ラ♯です。とても美しいですね。ここは機械的に弾かない方が良いと思います。歌うように、空想するように。(演奏)美しい4声部連結ですね。内声は・・・(演奏)と、ここで転調していくわけですが、第1主題はだんだんと、より動揺した様子で。(演奏)とても挑戦的な不協和音。そして、ドミナントへ向かっていきます。(演奏)・・・この前のふたつのソナタ(Op.49)について『ほとんどダイナミズムの指示がない』とお話したと思いますが、この作品はちょうどその真逆です。常に、とても几帳面に注意書きが書き込まれています。

p(ピアノ)とフォルテのコントラスト、そして突然のアクセント。そしてここ、初めてのフォルテシモまで。(演奏)新しい主題がドミナントのロ長調で始まります(演奏)単旋律ですね。寂しげなたったひとりの声・・・しかしその声は、全音階と半音階の進行により美しく色づけられています。(演奏)そして、弦四重奏からその他の楽器が加わり・・・(演奏)・・・また第1バイオリンだけになりました・・・(演奏)ところで、ベートーベンはここに『ポルタート』と書いていますから、それを意識して。さらにビオラがすぐに同旋律を引き継ぎますが、今度はレガートです。(演奏)・・・チェロ・・・(演奏)・・・そしてチェロ、第1バイオリン。(演奏)そして、ここからは美しい新主題です。(演奏)クレッシェンドしたい誘惑にかられると思いますが・・・ベートーベンを信じてクレッシェンドなしですよ。ここにクレッシェンドが欲しければ、そう書いていますからね。書かれていないところでは、そう演奏してはダメですよ。笑」

「さて、次は非常に面白いパッセージが出てきます。上声はp(ピアノ)、スフォルツァンドもpの中で。そしてバスには、この感嘆符です。『ダラララン!!』 ・・・バスはとても怒っていますね。(演奏)・・・と言うのもありですが。笑 しかし、とにかく。(演奏続行)それぞれの声部に別々のダイナミズムで、このソナタには常にこういった『対』の感覚がつきまとい、それはまるでシューベルトの音楽へ向かっているようです。頻繁に入れ替わる長調と短調・・・(演奏)・・・短調!(演奏)・・・長調!(演奏)そして、またもなにやら『グラツィオーソ』、優美なテーマです。(演奏)・・・とてもドラマチックな『ポーズ(一時停止)』ですね。この一瞬の静寂はとても重要です。みなさん音楽というものをわかっていると思いますが・・・ベートーベンの(こういうところ)・・・(はっきりとポーズを置いた演奏)そしてここは、最初に出てきた主題のこの旋律(演奏)これがバスに置かれ(演奏)完全に違う雰囲気を醸し出しています。」

「これが導入部の最後で、展開部はトニックで始まりますが、すぐに短調へ転調します。(演奏)・・・イ短調です。そして、ちょっとこれを紹介しないわけにいかないのですが・・・シューベルトの『ピアノとバイオリンのためのソナチネ イ短調』ご存知でしょうか・・・(D385冒頭を演奏)・・・(そして導入部の演奏)・・・酷似、などと言ってはいけませんよね・・・(演奏)シューベルトっぽいですよね。笑 そして、新しい旋律はたくさんのオクターブをレガートで。これはハイドンやモーツァルトの使わなかった、ベートーベンの新しいピアノテクニックです。(演奏)さて、またしてもドミナントの間口まで到達しました。帰宅準備です・・・とても長いペダルポイント(持続低音)ですね。(演奏)・・・もう一度。まだドミナントですよ。(演奏)『帰宅』は再現部と同時に起こります。勇壮なフォルテと共に、肯定的に。ところで先ほどの、ドミナント上のペダルポイントは10小節にも及びます・・・非常に長いですよね。

再現部もまた、機械的ではありません。もう一度、最初のところを弾いてみますね。(導入部冒頭を比較演奏)・・・(それに対して)今度は和音で、とても勇壮に!(再現部演奏)・・・そして今度は、こんな風に・・・(演奏)本当に素晴らしいですよね・・・ベートーベンは本当に、いつも再現部にサプライズを用意していると思います。調の関係を見てみると・・・ホ長調とハ長調ですが・・・ハ長調はピアニッシモで弾くと、ミステリアスになりますよ。(演奏)ここからは通常通りですが、一番最後のところのコーダは(演奏)・・・ここは非常に印象派的だなと思ます。どこか古典の世界にはフィットしていないというか・・・なぜなら、キラキラと揺らめく光が見えるので。高みに向かって消え去っていくような、とでも言おうか。」

「第2楽章は『アレグレット』の指定があり・・・トニックの短調、ホ短調ですね。(ふぅ~という呼吸から、演奏)悲劇とは言いませんけれど、暗くてくすんだ色彩ですね。時代錯誤ではありますが、私はこれをブラームス的音楽と呼びます。(ブラームスの)インターメッツォを思い出すんです。(演奏)たぶん、単にホ短調だからかもしれませんね。笑 ですが・・・♪たーらら たーらら♪ (楽しそうで、しばし遊び弾きの雰囲気 笑)・・・このスウィングするシチリアっぽい感じ、イタリア風のリズム。とにかく、複縦線の後はやや中世風な雰囲気です。(演奏)プラガール・ハーモニーの数々・・・(演奏)むき出しのオクターブがあり・・・そして同じフレーズが、1オクターブ上で繰り返されます。(演奏)不協和音が響き・・・ベートーベンのコンテンポラリーな部分が歌っていますね。(演奏)そして次は、高い『ミ』の上に・・・クレッシェンド!

・・・と言われても、ピアノの機能的に不可能ですよね笑 まだバイオリンだったら 『ミィィィイイイ~』と出来ますけれど、ピアノで出来ることと言ったら、そこで立ち上がるくらいです。こんな風に(演奏)・・・ですが、少し悪趣味です・・・2005年でもなお笑 とにかく、低い方の『ミ』にはピアニッシモと書かれていて、高い方にははっきりと『クレッシェンド』と書かれています。ベートーベンは理想家ですから、後にもいくつかの作品で同じような指示を書いていますが。つまり彼にとって、可能かどうかなんてどうでもいいんです。大切なのはあなたの想像力です。そこからトリオに移ります。(演奏)ここの『ミ』と『ド』の関係は、第1楽章にも出てきましたね(演奏)3~4つの、とても美しく明瞭なパート分けを聴いて取れると思います。またしても、弦四重奏を思い起こしてくださいね。それから、ダ・カーポ。そしてアレグロが繰り返されて、コーダ。(演奏)・・・ピアニッシモ・・・そして心音3つ。これで終わりです。(演奏)」

(続けて第3楽章の冒頭を演奏)

「最終楽章はロンド 『アレグロ コン モード』・・・ですから、心地よく気楽な感じのアレグロですね。それと ”attaccato"ですからブレーキなしに、(前の章で)止まらずに、ですね。私は、ベートーベンが心理的影響を考慮しながらソナタを書いている、ということをとても重要だと思っています。ですから、各楽章をばらばらに捉えず、全楽章を統一して捉えて欲しいなと思います。ソナタはいつも、第1楽章の第一音に始まり第3楽章の最終音に終わりますから、途中で一息つく場所を作るべきではないですね。・・・ということで大切なのは、先ほどの心音から・・・(第2楽章の終わりと第3楽章の導入部を繋げて演奏)アップビート(裏拍)で再開し、3、4、1、2、3・・・ガボットのような。バスーンを思い起こしていただけると良いかと思いますが・・・(演奏)繰り返される『ラ』のオクターブがあり、突然の下降『スビトピアノ』です。(演奏)そしてチェロ・・・(弦四重奏ですから)下降して上昇するスケールの中で、その他の楽器が飛び込んできます。さて、ドミナントまで来ました。そして新しい主題が出てきますよ。ん~、見た感じは単純そうですが・・・まずここは質問と応答ですね。(演奏)・・・そしてその変奏・・・(演奏)・・・フェルマータ・・・そしてロンド主題が回帰します。(演奏)今度は同じフレーズを短調で。さらに転調した先は・・・予想外にもト長調です。今、私達はト長調のドミナントにいます。(演奏)

ここは非常にドラマチックなフォルテと、フォルテの中でのスフォルツァンドです(演奏)その後、続く部分は3連符で。嵐のようです。(演奏)・・・協奏曲のように!(演奏)・・p(ピアノ)・・・(演奏)・・・ドミナント・・・そして回帰・・・というように、この章は純潔なように見えて、実はいろんな要素が詰め込まれています。とっても素晴らしいですね。ロンドの変奏がいくつかあって、シンコペーションが使われている変奏ですとか(演奏)・・・それで、ここが唯一のフォルテシモ・噴火!(演奏)・・・フェルマータで・・・さらに先の変奏へ(演奏)・・・そして楽章の終わりへ・・(演奏)Op.14-1はこれで終わりです」

「このようにOp.14-1は素晴らしい作品ですが、どうにも一般的にはあまり認められない曲という風に感じます。理由のひとつは、(悲愴・月光・テンペストなどの)ニックネームがないからですが(笑) それと・・・ピアニストたちが選曲する際に、『成功をもたらす曲』ですとか『どの作品に成功要素があるか』などという視点で決定していたとしたら。Op.14-1のような素晴らしい作品・・・これらには、残念ながらそういう類の成功要素はありません。ですが、ベートーベンはそんなこと気にしませんでした。ベートーベンが作曲し続けたのはただ、内から湧き上がる音楽的衝動に突き動かされただけです。誰かを感服させるだとか、達成感だとか、社会的名誉のために書いていたのではないと、私は思います。ですから、もしあなたがこの作品の良さを信じるというのなら、是非弾いて欲しいと思います。本当に素晴らしい作品です。」
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ピアノソナタ第20番 ト長調 Op49-2
2016-11-04 Fri 11:51
Part 2. Piano Sonata in G major, opus 49 no. 2


第三回目のプログラムより「ピアノソナタ第20番 ト長調 Op49-2」のレクチャー内容です。この曲の講義は30分弱です。途中で何度も何度もピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いてもらえるとわかりやすいと思います。





「第19番の姉妹作とも言えるソナタ第20番は、さらに控えめな作品です。2楽章から成る美しい古典作品で、普通の『アレグロ』と『メヌエット』。そして両方ともト長調です。まずは、導入部を演奏してみます。

(第1楽章、導入部演奏)

そして、このあと導入部の反復です。美しく、非常に『典型的な』古典作品と言えますね。ですが、この作品をクレメンティやハスリンガー(Tobias Haslinger)などの、生真面目なソナチネと比較した場合・・・この作品は最高です。笑 とはいえ(ベートーベンの作品としては、多少在り来たりではあるものの)、小さな子供達にはこの曲を弾いてみるよう薦めたいと思います。そもそもとても美しい作品ですし、古典形式や奏法を紹介することができますからね。それからこのソナタには、ベートーベンからの説明書きがほとんどありません。(第1楽章には)強弱の指定がなく、第2楽章にたった2回『ピアニッシモ』と書かれているだけです。ですが、だからといって単色的に演奏すべきということではなく、演奏者は副・作曲家でなければなりませんね。そして、強弱を『作曲』してみるのです。それに、こういったことは素晴らしいと思います。なぜなら私達は、ある種の制約から解放されたわけですから。」

「ということで、私なら当然・・・健康的な『ポコ・フォルテ』で少し強めに始めます。♪ラン~ ララララ・・♪ (鼻歌と共に演奏開始)・・・そして続く部分はpで・・・(演奏)そして和音は再度アンダーラインを引くためにも、フォルテで・・・などなど。表現者ごとに、自由な創作をすることが出来ますね。なお、ここで大切なのは白黒はっきりつけてしまわないこと。緑・赤・黄色など様々な色彩を使って表現できると良いですね。と共に・・・これはあくまでも慎ましいソナタですから、Op.106(ハンマークラビア)やOp.111(第32番)のようなダイナミックな世界を取り扱っているわけではないことを、念頭に置いておきましょう。」

「さて、ここも非常に美しいですよ。導入部のこの部分は、8分3連音だけで構成されていますね。(演奏)ここが3連符です・・・(演奏)『たたた・たたた・たたた』と、常に3音ずつなのが3連符です。失礼・・・もちろんみなさんそんな事は承知でしょうけれど、中にはご存知ない方もいらっしゃるかもしれないので。そして展開部は二短調、非常にドラマチックに始まります。(演奏)・・・そしてイ短調・・・(演奏)イ短調、ホ短調、そしてロ短調ですから、常に5度ずつ連鎖しながら向かった先で、また新しい展開をみせます。(演奏)まるでチェンバロ音楽のような、あるいはオーケストラ風の、軽く叩くような8分音符が低音部に置かれていますね。(演奏)そして4小節だけ、繋ぎとしての『橋』を挟んだ後にト短調へ戻り、そこから再現部となりますが、(こうした流れは)いわば想定内であり、定型的かと思います。」

「それでは第2楽章をみていきましょう。すぐにお気づきになるかもしれませんが・・・(導入部、演奏)ほとんどの方はベートーベンの『七重奏曲 Op.20』をご存知かと思いますが、彼はこの章と同じ主題を(Op.20 第3楽章)メヌエットの中でも使っています。当然、別の調(変ホ長調)だということは明白ですが。しかし(この関連性は)私にとって特別な意味があります。なぜなら、私は七重奏曲に対して『ヴィレッジ・バンド(村の楽団)』的なイメージをいつも持っているので。まずコントラバスがいて、チェロ、ヴィオラがいて・・・彼らが伴奏をしているんです・・・(演奏)素朴な田舎の踊りですね。さて、このピアノソナタにはアーティキュレーションの指示がありませんが、ベートーベンはここで、8分音符を繋げず分離したまま左手側へ置いています。ですが、ほとんどのピアニストはこんな風に演奏しています。(模倣演奏)楽譜に『レガート』とは本当に書かれていないので、理由はよくわかりませんが・・・みんなここをレガートで演奏しますね。個人的には、ヴィレッジ・バンド風に弾いた方がよっぽど面白いと思います。(演奏)もちろん、もっと控えめにですが・・・(演奏)それで、メロディーはもちろんレガートですよ。つまり導入部は、メロディーがレガート、伴奏がスタッカートという風な変化がつき、その方が面白みが出ると思うんですよね。それから中間部は・・・(演奏)・・・そして、オクターブ上で繰り返し・・・(演奏)その後、最初のエピソード”couplet”クプレが出てきます。ここはたぶん・・・木管楽器でしょうか?(演奏)クラリネットやバスーン、フルートといった楽器が聴こえますよね。それから、ちょっとした推移があり、メヌエットが戻ってきます。」

「それで私は・・・この程度は許されるだろうとみなした上で、ちょっとした装飾を加えているわけですが。笑 そうしたら、ある時ローマの教授がやってきて『どの版をお使いですか!』と訊くので、私が『ヘンレ版です』と答えたら『しかし・・・装飾音を使っていらっしゃいましたよね』『yes, sir. 左様ですね、装飾音を使いました』『でも・・・楽譜にはないではないですか!』 そこで、『はい、でもまぁ・・・これはベートーベンの中でも特例的なピアノ曲ですし、第一、あれだけ即興演奏が得意だったベートーベンが、メヌエットの主題を6回全て同じ様に弾いたとは私には思えませんので』と言ったら、彼はこんな風(驚き)。そして「ま、まぁ・・・ハイドンやモーツァルトの作品においては、装飾音を加えてもよい。ということになってはいますが・・・しかし・・・ベートーベンで!」

そんなことを言われても。笑 ベートーベンにちょっと電話してきくわけにもいかないし・・・できたらよかったですけど。笑 ・・・でも本当に、音楽における即興的要素というのは古典だけではなく、全ての音楽にとって重要な部分です。そして、こんな些細なことすら論点になりえるなんて、私達は(音楽的理解の)乏しい時代に生きていると思います。とはいえ・・・もちろんこれは好みの問題で、好みは分かれますから、ある人にとって趣味が良いと思われるものが、他の誰かは違う意見をもっているかもしれない。意見相違が度重なるようならば、それはその人が悪趣味である兆し・・・ともとれますけれど。ですが・・・作品は本当にそれぞれです。私は、後期のベートーベン作品を装飾しようなんて絶対に思いません。しかしこの作品においては、例えばこのモチーフから・・・(シフさんによる変奏1・演奏)あるいは・・・(変奏2・演奏)・・・そして・・・(変奏3・演奏)常にほんの少し足すんです。だって、本当に6回とも同じであるべきではないので。とはいえ、これは単なる私見ですから、好むか嫌うかはあなた次第ですよ。笑」

「さて。第2のエピソードはハ長調です。そして、私なら・・・トランペット、ホルン、ティンパニーを配します。(演奏)・・・そして、弦楽器・・・(演奏)トランペットに戻って!(演奏)・・・そしてここが、例のピアニッシモが出てくるところです。たった2か所書いたうちのひとつですね。それから最後のメヌエットがあって、ちょっとしたコーダまたはエピローグ。そして、私はここでも(独自の解釈が)許可されることを見越して、この部分の伴奏だけはレガートで弾きます・・・(演奏)・・・なぜならここは違うので・・・(演奏)・・・と、これで終わりです。そして、この最後の2和音ですら、p(ピアノ)やピアニッシモで弾くか、あるいはフォルテに感嘆符をつけたければそれでも良く・・・つまりこういった選択は、あなたに委ねられています。私としては、このように控えめな楽章にふさわしく、こんな風に弾くでしょうけれど・・・(極めて軽く、最後の2和音を演奏) 大した問題ではありません、本当に。笑」




Beethoven Septet, Op. 20, Movement 3 Tempo di menuetto 『七重奏曲』
美しいです・・・
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ピアノソナタ第19番 ト短調 Op.49-1
2016-11-03 Thu 06:00
Part 1. Piano Sonata in G minor, opus 49 no. 1


ここからは第三回目のプログラムへ移ります。「ピアノソナタ第19番 ト短調 Op.49-1」シフさんのレクチャー内容です。この曲の講義は30分弱です。それと、8番から一気に19番(と次の20番)へ一旦飛びますが、これは「時系列に紹介することにこだわって」だそうです。ピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いていただけるとわかりやすいと思います。





(第一楽章の途中まで演奏)

「今日は『やさしいソナタ』と呼ばれるOp.49から始めたいと思います。どうして、時系列というルールを破っているんですか、と思う方もいらっしゃるでしょうね。ですが、時系列的にはむしろこれが正しい順番です。混乱を招くような作品番号の振られ方だと思いますが、作品番号は実際に作品が書かれた時期ではなく、出版された時期に基づいて決められています。第19番と第20番は、1795~1798年の間に書かれましたので、(時系列に沿って進めている)このプログラムでは、ここが正しい配置です。(その証拠に)この2作品は、作品番号的に次にあたるワルトシュタイン(Op.53)となんの類似点も関連性もありません。」

「ピアノを弾く方、あるいはピアノのレッスンを受けたことがあるほとんどの方は、この素敵で軽めのソナタをとてもよくご存知かと思います。ですが、Op.49が書かれた背景はあまり知られていません。まず誰かに献呈されたという記録はありません。ですから、ベートーベンがどういった目的でこれらを書いたのかはわかっていませんが、教育的目的だったのではないかなと思っています。鍵盤楽器には素晴らしい歴史があり、それはヨハン・セバスチャン・バッハの『2声、3声のインベンション』に始まり、それからモーツァルトが幼少時代に書いた様々な素晴らしい小品を経て、後にロバート・シューマンの『子供のためのアルバム』などもありますね。これらは、芸術的ピアノ演奏または作曲へ向けて、その導入期にふさわしい素晴らしい作品と言えるでしょう。」

「ベートーベンには、生涯子供はいませんでしたが、もちろん甥のカールもいましたし、ベートーベンが頻繁に作品を献呈したウィーンの貴族の中にも、音楽的資質に溢れる子供達がたくさんいたことでしょう。そして、ベートーベンの頭には、こうった考えがあったに違いないと思います・・・『ピアノを弾こうという音楽好きな子供達には、極めて早い時期から良質な音楽を与えられるという事。それを常に念頭に置くべきだ』と。今ピアノのレッスンを受けているお子さんがいらっしゃる方は、どうかこの点について覚えておいてください。子供達には常に、最高水準の音楽だけを与えてください。練習曲や、エクササイズのための教本ばかりたくさん与えてはいけませんよ。そんなことをしたら『音楽のもたらす喜び』という感覚を、永久に台なしにしてしまいますからね(笑)」

「もちろんピアノの弾くためには、スケールや、それぞれのスケールごとに運指なども学びますが、これらは良質な音楽を組み合わせることにより、その中で学ぶことも可能です。そして、これがベートーベンが私たちにくれた音楽です。もし、お子さんに音楽的資質があるならば、恐らく・・・始めて2年か3年もすればこの曲を弾けるようになるでしょう。バイオリンの場合を想像してみてください・・・いったい何年くらいレッスンを続ければ、最初のベートーベン バイオリンソナタを弾けるんだろう、と。(バイオリンソナタ一部演奏)・・・既にとても難しいですね(笑)これを弾く前に、何年にも渡る耐え難いほどの『拷問』が待っています(笑)・・・が、みんな通る道です」

「さて。それでは細かくみていきましょう。ト短調ソナタOp.49-1は、2楽章から構成されています。これはハイドンのモットーで・・・ハイドンはたくさんの2楽章からなるピアノソナタを書いていますね。しかし、モーツァルトはひとつもありません。モーツァルトのソナタは全て、3楽章から成っています。一部の(モーツァルトの)バイオリンソナタの中には2楽章構成のものもありますが、ピアノソナタにはありません。ここで、ハイドンのト短調ソナタ冒頭部分を少しお聴かせしたいと思います。ト短調、つまりこれと同じ調ですね。そしてそれは、こんな風に始まります(ハイドンのト短調・・・演奏している途中で)そしてベートーベン・・・(と続けて弾くが、メロディーが同じ笑)・・・そしてハイドン・・・(境目がわからないくらい全く同じ) 何が言いたいかわかりますね。笑・・・にも関わらず、『ハイドンから学ぶことは何もない』なんて言ったんですよ、ベートーベンは。笑・・・ですが、こんな次第です」

(以下、重複した話題なので省略)

「ト短調というのは、奇妙な調です。そして、これがベートーベンの書いた唯一のト短調ソナタです。(厳密には)ピアノにひとつ、チェロにひとつ・・・op.5-2ですね。(op.5-2冒頭フレーズを演奏) チェロソナタop.5-2はとても暗い『死』の音楽です。一方、私達がここでみていくピアノソナタは、悲劇ではありません。しかしとても悲しくて、諦めのムードがあります。『アンダンテ』のアップビート(裏拍)で始まる章です。(冒頭演奏)常に歌っているような、カンタービレですね。それから、第1主題が新しい展開をみせます。(演奏)音楽は既に新しい方向、平行調の長調へ(それぞれのハーモニーの比較演奏)これがト短調・・・そして変ロ長調ですね。(演奏)ということで今、平行調のドミナントです。そこから新しい主題(第2主題)へと繋がっていきます。(演奏)」

「この時点で既にお気づきかと思いますが、常に小さな分子から音楽を組み立てていったハイドンとは対照的に、ベートーベンはピアノ音楽上に新しい風を吹き込みました。横繋がりのスタイル、非常に長いレガートのフレーズを使っていますね。数小節にも渡ります。見比べてみるとわかりますが、モーツァルトやハイドンの音楽のスタイルはもっと・・・実用主義的で、とても短いスラーがついています。長くても1小節くらいで、それよりも短いものもあります。こういったことから、アーティキュレーションも知ることができますね。それと彼らは(どちらかというと)弦楽器音楽寄りの作曲家です。そして、ハイドンやモーツァルトを解釈する際、これらのスラーを理解することはとても重要です。例えばモーツァルトのスラーは常に一弓で弾くことが出来ますので、細かく変える必要はありません。昨今のバイオリニストは、大きくはっきりした音を求めて不必要なところで弾き直しているのをみかけますが・・・そういうことが作曲者の目的ではないのです。ですから個人的には、モーツァルトのスラーを勝手に切ってしまうのは犯罪だなと思っています。」

「それに対して、ベートーベンの音楽は実用主義的ではありません。彼はここでも不可能に挑戦して、ピアノ音楽的にとても長いスラーを書いています。つまり彼はそうすることによって、『ここは非常に長いフレーズです』と伝えているのです。ですから、まずは長いフレーズを想像しなければなりませんね。さて、変ロ長調の第2主題の後は、ちょっとしたエピローグです。(演奏)それから、導入部に登場する3つの主題全ては密に関連しています。そして、導入部は反復され、作品の中腹にあたる・・・展開部へと進みます。ここで初めてフォルテが出てきますね。これは小さな軽めのソナタですから、巨大なコントラストは出てきません。時々、この曲の演奏について『コントラストが十分につけられていない』と批判を受けるのですが・・・もともとそんなコントラストは指定されていないんです(笑)『ハンマークラビア』や『熱情』ではありませんから・・・『小鳥』を『象』のように表現することは、全くもって間違っていると思います。」

「それでは・・・導入部を終えましたので、展開部・・・(演奏)そして新しい調、変ホ長調です。ト短調の関連調・・・(ハーモニーの比較演奏)平行調にとってはドミナントとトニックという関係ですね(これは、ト短調の平行調にあたる変ロ長調が、今出てきた変ホ長調を主体で見ると、属音-ドミナントの位置にありますよ・・・という意味)。それから、このトリルは新しい要素です。とてもドラマチックですね・・・『ものすごく』ドラマチックではないですけれど(笑)それから、ベートーベンがユニゾンを使う時は、レトリック的要素・・・言いくるめているような要素があるため少し誇張的に(演奏)・・・そして新たな主題です。(演奏)そして、その変奏・・・(演奏)ベートーベンは素晴らしい即興演奏者で、変奏の達人でしたから、この場合は(楽譜に)書き起こされている変奏ですが、即興的な技術についても想像がつくかと思います。ここでは(前に出てきた)エピローグ・テーマを使っていますね。(演奏)そして既に3回転調して、ドミナント(ト短調)へ戻ってきました。(ハーモニー演奏)」

「音楽的感覚の持ち主であるあなたには、既に感じとれると思いますが『帰宅間近だという感覚』が時々あります。だからこそ私は、ソナタ形式が人類史上最も素晴らしい音楽的発見のひとつだと思うのです。わずかな時間を使ってたくさんのことを表現出来ますし、ドラマチックな対立や、叙情的な表現・・・そして、今お話した特別な要素、展開部と再現部の間に起こる『本能的な帰巣感覚』。全ての人間にとって、この『巣に戻る』という感覚がとても必要だと思っています。そして・・・この感覚こそが、現在の音楽に欠けているなぁと、私が悲しく思う点なんです。『おうちへ戻ってきた』という感覚は全く感じられません・・・調性によるシステムを無視しているから・・・。もちろん(現代の音楽にもそれを)感じる方も、中にはいらっしゃるかもしれまんが・・・私にとっては、まるで外国語のようです。そして、これ(ソナタ)こそが私の理解する言語なのです。」

(と静かに言ったあと、演奏に戻り)

「ドミナント・・・(演奏)このように小さな軽いソナタにですら、挑戦的な半音階的進行や不協和音が使われていますね。(演奏)スフォルツァンド・・・(演奏)ここでクレッシェンドしたあと、スビトピアノです。これが彼の音楽の難しいところですが・・・ベートーベンはダイナミクス変化のための準備、というものを置きません。彼のダイナミクスは『驚き(=意外性)』という要素をもって初めて成し得るのです。ところで、次のソナタをご紹介する時にはさらに驚くと思いますが、後のベートーベンはとても几帳面に詳細を書き残しました。しかし、Op.49における演奏上の注意書きは、ほんの少しです。ですが、ここの部分には「クレッシェンドとスビトピアノ」と書きました。(演奏)この章がアップビートで始まったことを覚えていますか?(演奏)そして、これが『決して同じことを繰り返さない』ことの美しさです。ベートーベンの音楽において、再現部が機械的だったことなど一度たりともありません。(演奏)ここからは対位法を用いながら、主旋律をバスにもって来ます。(演奏)・・・ここでもまた、フォルテからスビトピアノです。(演奏)そして、第2主題がトニック(ト短調)で再現されます。残りの再現部は予想できる範囲内ですが、その後はとても美しく詩的なコーダです。こんな風に・・・(演奏)ここはピアニッシモで・・・(演奏)とても美しい詩的な終わり方ですね。」

「第2楽章は、ロンド 6/8拍子ですから、123456、123456と数えますね。しかし、ちょっと変わった8分音符4つのアップビートで始まりますから、123456、12(3から演奏)とても明るくて、楽しげです。ベートーベンはユーモアの達人ですからね。それで、もしも聴き手が感覚的に『拍の表がどこにあるか』を理解していない、となると・・・この曲の説明が非常に難しくなるのですが。ですから、私が『ルートヴィグ・ヴァン・ベートーヴェン、ルートヴィグ・ヴァン・ベートーヴェン・・・』と唱えればわかると思いますので・・・(ルートヴィグ・ヴァン・ベートーヴェン、ルートヴィグ・ヴァン・ベートーヴェンと言いながら、そのリズムにあわせて演奏)これがダウンビート(表拍)です笑」

そして新しいフレーズが始まります。(演奏)そしてこのドミナント上に5~6音の和音があって、フェルマータ。それから、第1主題が高音域(1オクターブ分)で繰り返されます。(演奏)短調がフォルテで出てきます。少しドラマチックに変化し、ユニゾンです。(演奏)そして、第1楽章にもみられた平行調の変ロ長調へ到達し、その後、とても美しい新主題です。モーツァルトを彷彿させますね(・・・ベートーベンとの音楽的な共通点は、あまりありませんけれど)。聴けばわかりますよ・・・(演奏)例えばこんな曲をお聴かせすれば・・・(演奏)何か似た雰囲気・・・『類似』ではありませんが、モーツァルトの面影があると思いませんか。そして美しいハーモニー(演奏)・・・内声はこんな風に・・・(演奏)それから、短調へ戻り (演奏)短調による擬似回帰があり、しかしこれは単にちょっとした引用で、すぐ長調へ戻ります。(演奏)」

「このソナタは『小さな軽いソナタ』ということになっていますが、この楽章は小さなお子さまには少し難しいかもしれません。なぜなら・・・ここのモチーフをみればわかりますが、バッハ的な擬似が多く含まれていますね(演奏)ですから、もしあなたのお子さんがこれまでにバッハをたくさん弾いてきた、というなら全く問題ないと思います(笑)・・・そして、もちろんそうあるべきですね!(笑)

この対位法的な部分のあとは、変ロ長調のエピソードが主調で再現されます。(演奏)常にとても旋律的なタッチ・・・とても美しいですね。それから、小さなコーダがあって・・・(演奏)・・・そしてフェルマータがきましたから、次はピアノ協奏曲にあるようなカデンツァかな?と予期しますが、そんな感じではなく。控えめに終焉を向かえ・・・(演奏)・・・と、ここで終わりにしてもよいところですが、この先に私が『スイス・ヨーデル』と呼んでいる部分があります。(演奏)♪ヨ~ロ イレリ~ ヨ~ロ ハラララン♪ (ヨーデル付き演奏)・・・と言う風に、とてもオーストリア、スイス的なモチーフですね。(危うく再度ヨーデルが口をついて出そうになりながらも、最後まで演奏)・・・と、これで終わりです(笑)」

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ピアノソナタ第8番 「悲愴」 ハ短調 Op.13
2016-11-02 Wed 02:03
Part 4. Piano Sonata in C minor, opus 13 ('Pathetique')

第二回目のプログラムより「ピアノソナタ第8番 「悲愴」 ハ短調 Op.13」シフさんのレクチャー内容です。この曲の講義は26分と短めです。この日の最後の曲ということで、時間の都合もあったのかなと思いますが。それと、(wikiにも載っていますが)シフさんは1番の反復の仕方について独自の解釈を持っていて、この講義でも当然その話が出てきます。

ピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いていただけるとわかりやすいと思います。




「次は『悲愴』ですが、みなさん良くご存知でしょうから短めに。このソナタは、Op.10が書かれてからわずか1年後の作品です。『悲愴』は、ベートーベンの親しい友人で音楽的パトロンでの1人だった、リヒノフスキー侯爵に献呈されました。そして、タイトルはグランド・ソナタ、悲愴。その名のとおりの壮大さを感じさせるソナタですが、『悲愴』の部分についてはベートーベン本人が名づけたではありませんけれど、しかし(本人から)出版社への抗議は特にありませんでした。とにかく、熱っぽい苦悩に満ちた大いなる悲劇のようなこの曲は、まるでギリシャ悲話のようですね。」

「(第1楽章)最初の部分は『グラーヴェ』・・・(オクターブのトレモロ前まで演奏)・・・とこの後に『アレグロ モルト・エ・コン・ブリオ』へ続くわけですが、今私が演奏した『グラーヴェ』の部分は、通常『序奏』と言う風にみなされます。ですが、私にはやや違った見解があります。私はこれが第1主題(であり提示部の始まり)だと思います。なぜならこのフレーズは、のちに別の調で何度も何度も繰り返されますので。これは、後期の作品Op.111(32番)の序章とは性質が違うと思います。(32番、第1楽章の序章を演奏)・・・これは繰り返されません。このようにアレグロから先へ行くと・・・(演奏)・・・この先、序章の部分のフレーズを聴くことは2度とありません。(こんなところが)『悲愴』はとても違うと思います。」

「さて。ですから・・・残念ながら初稿は紛失してしまってありませんけれども、初版を参照すると、繰り返しの記号は『アレグロ モルト・エ・コン・ブリオ』のところに付いていますね。(・・・ここ、という風に演奏)しかし、ルドルフ・サーキンが初めてこの曲を演奏した時のことを今でも覚えていますが、それは単に素晴らしい演奏だったというだけでなく、導入部の終わりで・・・(繰り返しのところで一番頭に戻って演奏)・・・という風に弾いたんです。あの時はみなショックを受けていたけれど・・・私はむしろ説得力があると思いました。そうすることによって違った作品になりますので・・・構成上の割合が変わりますからね。ですから、ここを強く主張したいのですが、繰り返し部分は曲の頭に戻るべきです。そうすることによって、第1楽章が壮大なものとなり、それはその他の章によってバランスが取られます。その他の章は軽いですから・・・軽く小さな作品という意味ではなく、比較した場合、比率的に軽い割合という意味でです。」

「このソナタの付点付のリズムについて。バッハのパルティータ ハ短調を思い起こしてみると(パルティータの出だしを演奏)この非常にロマンティックな意思表示は、バロックまで遡ります。(演奏)とても厚みのある和音が、fp(フォルテピアノ)で始まりますから、強い打鍵のあとは即座に音量が下がらなければなりません(演奏)とても難しいですが、ちょっとしたコツがあって・・・和音を打鍵した後、その音をペダルで保持したら、2回か3回鍵盤を押し直すのです。音は立てずに。・・・あまり、こと細かに専門的すぎることは言いたくないんですが(笑)。でも、重要なんです(笑) (もう一度模範演奏)・・・なぜなら、この突如のダイナミズム変化を成し遂げなければなりませんので。(今度は音の変化を口で模倣して)・・・わかりますか? ベートーベンが欲しがっているのは、そういう音なんです。」

「(演奏)そして、不協和音・・・(演奏)・・・さらに上回る不協和音・・・(演奏)・・・緊張を高めて・・・(演奏)・・・今度は許しを請うように・・・(演奏)・・・拒絶・・・(演奏)・・・2、3、4・・・(と休符を数えたあと、演奏)・・・ここは、技巧的な見せ場ではありませんから、速すぎないように。そしてクレッシェンドもしません。いつもここで、すごいクレッシェンドをしているのを聴くんですが、もしベートーベンがクレッシェンドしたければ、そう書いたのだから。クレッシェンドなしで・・・(演奏)・・・そしてここ・・・聴こえますか? (左のリズムを強調して)そして、ここはあまりピア二スティックとは言えないですね。こんな素晴らしいピアニスト(ベートーベンのこと)の書いたソナタが、こんなにもピアニスティックではないなんて、なんといったらいいのかわかりませんが(笑)まるで縮小されたオーケストラ音楽のようとも言えますね(演奏)・・・聴こえますか? 稲光や雷鳴が。(演奏)」

「・・・そして嵐はおさまり、それまでとは違ったテーマが始まります・・・(演奏)・・・この4音を覚えていますか? これが、こう変化したり(演奏)最後の章では(第3楽章の冒頭の4音付近を演奏)・・・このように全ては繋がっています。ですから・・・(演奏)素晴らしいテーマですね。ここは次へ繋がっていきますので、メトロノーム的な弾き方が正しいとは言えません。(演奏)・・・ここは『徐行』すべき・・・(演奏)とてもオーケストラ的です・・・(提示部終わりまで演奏)最初に戻りましょう!(と言って、最初の和音を奏でる)。

・・・提示部を2度弾いたら、『グラーヴェ』がドミナントで現れます。(演奏)・・・そしてここが重要ですよ。ハ短調へ向かう転調です・・・(演奏)・・・アレグロに戻って(演奏)・・・ほらね(と3楽章と比較演奏)リズムは違いますが(同じ音形です)。(演奏)・・・またしても、非常にオーケストラ風で、交響曲6番『田園』の中の嵐のようです。(演奏)しかし、このティンパニのようなドラムロールと共に、ドミナントへ辿り着きます。そして、再現部へ向かって準備が始まりますが、とても長いです・・・20小節以上の長さです。ドミナントで(演奏)・・・そして再現部があり、ここからは特に変わったことはありませんね。そして、コーダ。(演奏)大きな和音の後は静寂です。1、2、3・・・(演奏)・・・また静寂・・・(演奏)・・・そして、ここは深呼吸してください・・・すぅ・・・(演奏)アレグロに戻りますよ・・・(演奏) と、これが第1楽章です。」

「続く第2楽章はベートーベンのソナタの中で最も有名で、最も人気のある楽章のひとつですね。(名声に)ふさわしいと思います。しかし、感傷的に弾いてはいけないと思います・・・

(第2楽章を途中まで演奏)

まるで素晴らしい無言歌ですね。変イ長調、アダージョ。似たような調性関係(主要楽章からみて長3度下)がOp.10-1にも見られましたね。(断片的に演奏)・・・これは、アダージョ・モルトでした。今回は(ただのアダージョなので)普通のテンポです。そして・・・(演奏)・・・ここからは、オーケストラ全体による総奏が始まります・・・(演奏)・・・そして新しい何かが始まります・・・(演奏)ということで、ここはロンド的なもの+2エピソードですね。それから第1主題が戻ってきて、2つ目のエピソードが3連符の伴奏と共に戻ってきます・・・(演奏)・・・(ここの3連符は)クラリネットみたいですね。このように全てはオーケストラ風なのです。そして、ここはそのままオーケストラ風に、感嘆符と共に。(演奏)・・・そして(主調に)帰宅しました・・・(演奏)そしてベートーベンはこれまで3連符だった伴奏を引継ぎます。とても詩的でとても美しいです。それから、短いコーダです。(演奏)・・・そしてさよなら。(演奏)」

「そして感じの良い最後のロンドです(第3楽章)。最初に言いましたが、第1楽章はとても巨大ですから、第2第3楽章はそれと同じ重力には出来ません。そんなわけで、軽めに。(演奏)この楽章で『やりすぎる』のは間違いだと思います。つまり本来の性質以上に、大げさに演奏することは、ね。(参考演奏)・・・とこんな感じの、遊び心を持って。ですから・・・(演奏)最初の推移・・・(演奏)ベートーベンはここに『ドルチェ』と付け加えていますから、優しい雰囲気で。(演奏)そして新しい主題です。(下降音形の後のフェルマータまで演奏)・・・ここはライオンがいますね、少なくとも純真無垢な感じではないです。それから次のエピソードが始まりますが、これはとても美しく、バッハを彷彿させるような対位法が使われていますね。そして(対位法的に)組み合わされた2つのモチーフは、どちらも『裏』と『表』になることが出来ます。(演奏)・・・ここで(裏表)交代・・・(演奏)・・・また交代して・・・(演奏)・・・そして交代・・・(演奏)・・・フェルマータ。そしてここでバスが旋律を受け取るところもまた、美しいですね。(演奏)・・・ドルチェ・・・(演奏)・・・ここで少し変わっていますよ・・・(演奏)ここのフィナーレ、最終段階で、ベートーベンは『悲愴』の名を正当化し確実なものとします。第1楽章で経験したような壮大さを再度持ち出していますね。(演奏)・・・ここはナポリタンですよ。(演奏)このパッセージを覚えていますか?(第1楽章グラーヴェ最後の下降スケールを再度演奏し)ここはそれと対になっていて(演奏)ベートーベンは2つの楽章を一体化させていますね。(演奏)最後は疑問形が2回・・・そして(演奏)・・・(強い調子の)否定・・・(演奏) と、これで終わりです。」
別窓 | シフのレクチャーコンサート。 | コメント:0 |
ピアノソナタ第7番 二長調 Op.10-3
2016-11-01 Tue 01:27
Part 3. Piano Sonata in D major, opus 10 no. 3


引き続き、第二回目のプログラムより「ピアノソナタ第7番 二長調 Op.10-3」シフさんのレクチャー内容です。この曲の講義は30分ほどです。時折、シフさんの息遣いや、指先が鍵盤を叩くコツコツ音まで聴こえて来るので毎回とても驚きます。それと・・・今回は極めて特別な印象をもちました。もちろんこれまでどおり、楽しい雰囲気の中での興味深いお話により構成されています。ですが、例えば今まで私が聴いた数々の素晴らしい演奏というのは、音楽的共感から派生している良質な物語の復唱のようだと思ったけれど、これはどちらかというと、むき出しのドキュメンタリー映画のようです。もちろん、あくまで個人的感想ですけれど・・・強いショックを受けたので、あれは一体なんだったんだろう。と思いあぐね、もしかしたらholocaustとその後のことを考えていたのかもしれないな、と勝手に想像しました。





「次にお話するOp.10-3、私はこれを音楽的な『奇跡』のひとつだと思っています。単に、ベートーベン作品の中でという意味ではなく。さて、Op.10の中でこれだけが4楽章構成で、叙情的で明るい二長調が使われていますね。(演奏)・・・などなど。もちろん今のは二長調を使った他の例、ミサ・ソレムニスですが。とにかく、(Op.10の)最初のソナタをドラマチック、そして2番目をコミカルとした場合・・・3番目のこの作品にあてるうまい形容詞だけは、ちょっと思い浮かびません。なぜなら、この第7番は実に様々な顔を持つ、謎めいた作品なので。類稀な緩徐楽章『ラルゴ・エ・メスト』・・・個人的には、これ以上深刻な悲劇を表現した作品はないと思っています。ですが、第1楽章は『プレスト・アッラ ブレーヴェ』2分の2拍子ですね。」

(提示部の演奏)

「この章もアップ・ビート(裏拍)から始まり、p(ピアノ)の中でクレッシェンドはしません。そして『マンハイマー・ロケット』のバリエーションで、(演奏)・・・ユニゾンです。そのあと、ポリフォニー的なものが来ます(演奏)ですから、最初のフレーズはほとんど全てがスタッカート、2つ目のフレーズはレガートですね。ここで重要なのは、この章の考え方が単一主題的であるということです。最初の4音を取り出してみると(演奏)この楽章のほぼどの部分へも、この4音から到達出来ることがわかります。(演奏)いつもこの4音です。展開形もあり・・・(演奏)そして・・・(演奏)シンコペーションが音楽を凄くドラマチックに仕上げていますね。そして次はこうです。(演奏)またしても『たーららら』と、さきほどの4音です(演奏)・・・転調して・・・(演奏)そして、ドミナント周辺へ到着しました。」

「ここからが第2主題です。(第2主題の頭だけ演奏)この部分についてですけれど。ピアニストの多くは、私に言わせると・・・間違えて弾いています。16分音符4つを均等に・・・こんな風に弾いていますけれど(演奏)ちょっと馬鹿げています。ベートーベンが書いたのは『装飾音符があって4分音符、そして2つの8分音符』です。もしベートーベンが16分音符4つにしたかったら、16分音符4つ書いたと思います(笑)ですから、どうしてこんな風に演奏するのか・・・(演奏) (本来は)装飾音を極めて音楽的に、1拍目と同時のタイミングで弾かなければなりません。(演奏)そして、ここもさきほどの4音で構成されていますね。そして短調です(演奏)ここも4音を使った素晴らしい下降音形です。そして、バスがこの4音モチーフを奏でている間、高音域にはその展開形を配しています。(演奏)

ここが最後のテーマですね。4音で・・・(演奏)展開形の・・・(演奏)・・・そして無音・・・(演奏)初めて主題が大きなクレッシェンドと共に、短調で出てきました。そして、そこからフォルテシモへと昇っていきます。(演奏)・・・・と、ここではこのような流れを『予期』しますが、では実際ベートーベンはどうしたでしょうか?(演奏)変ロ長調への転調です。(演奏)ほとんど丸裸にされたような音ですね。そしてナポリタン・・・シ♭とラの関係はナポリタンですよ。(フェルマータまでを演奏)この腕の交差演奏は、スカルラッティが発案したんですが、もちろん彼が太る前の話です。だってその後は・・・(笑。ベートーベンも20代の頃はまだスリムだったでしょうね・・・だって、まだヴィーナー・シュニッツェル(ウィーン風・子牛のカツレツ)を食べ過ぎる前ですから。でなければ、この動きは出来ないです(笑)。」

「さて、というわけで、とてもドラマチックな展開部でしたね。続いて再現部です。提示部を別の調でエコーします。それから、美しいコーダ(演奏)素晴らしい響きですね・・・そして、どこへ到着したでしょうか? 二長調から・・・サブドミナントのト長調です。ベートーベンは、いつもサブドミナントを特別な場所のために取っておきました。そしてこの場合は、このコーダです。(演奏)さきほどの4音が出てきて(演奏)まるで弦楽四重奏のように・・・4人の奏者が4つの音をそれぞれ繰り返しています。(演奏)本当に・・・普通、4音だけを使ってどこまで膨らませることが出来るでしょう。これは限界への挑戦ですね。(演奏)大きなオーケストラ風の響き。とても素晴らしいと思います。」
 
「そして次は・・・類稀な秀逸さを誇る章、二短調の『ラルゴ・エ・メスト』。平凡さとはかけ離れています。『エ・メスト』は、のちにベートーベンの弦楽四重奏曲Op.18-1ヘ長調でみかけるようになりますね。あるいは・・・バルトークの6つの弦楽四重奏の最終楽章ですとか、なにかしら『死』や『嘆き』と関連性があるものです。まるで・・・とても大切な誰かのために泣いているかのようです。

(演奏)

・・・こんなに暗い色調は、ちょっと他にはみられません。二短調のもつ独特のムードは実にモーツァルト的で、ドン・ジョバンニなどを思い起こしてみるとわかりますが、あるいは・・・(モーツァルト・ピアノ協奏曲ニ短調K.466を少し演奏)これも二短調ですが、新しい重力体験とでも言いましょうか・・・以前はこんな風に、『重力』と音楽は関係しなかった気がします。この純粋な『重み』・・・(演奏)」

「これは6/8拍子の緩徐楽章です。それから、この8分音符6つ分という長さ。これはとても長いポーズなので決して見失わないように。そのあと・・・(演奏)・・・そして嘆き・・・(演奏)非常に明瞭な段落付けがありますね。おわかりかと思いますが、これはむしろオペラ的だと言えるでしょう。そして、こういった時に『テンポ・ルバート』を使います。こういう部分でモーツァルトは、クレメンティの演奏について不平を言ったそうです。『クレメンティの演奏は好きじゃない。彼の両手はいつも揃っているから』と。対してリストは、テンポ・ルバートを木に喩えて美しいことを言っていました。『木の幹はしっかりと常にその軸を保つが、それでも風は木の葉を揺らす』・・・ですから、そのためにもこの長いポーズが要となり、しかしメロディは自由に・・・(演奏)・・・ほぼ互いが独立しているかのように。

しかし最近は、これを演奏すると大音楽評論家がやってきて『彼は両手が揃っていない!』と。 ・・・だから何?笑 両手が「常に」揃っていないといけないなんて、どこに書いてありますか? そんなの見たことも聞いた事もないです・・・ある種の先入観ですね。」

「さて。そして新しい主題が始まります。(演奏)これが展開部になりますが、素晴らしい雰囲気で、私から見るとここは『復活』です。あきらかに・・・シューベルトはこの章を知っていて、大好きだったんだろうと思いますが・・・ええと、変ロ長調ソナタの中で(演奏)・・・こうきて・・・そしてこの場所(演奏)ここは私から見ると、同じ表現です。

しかし、とにかく次を見てみましょう(演奏)・・・そしてここからは、クレッシェンドで(演奏)・・・わかりますか? 伴奏が鼓動のようにあって、その上をすすり泣きのメロディ・・・これは信じられないほど、この音楽は・・・けっして『美しい光景』『愛らしいもの』などではありません・・・むしろ本当にゴーヤの絵画のようです。(演奏)そして再現、となります。」

「この章は非常に大規模ですから、コーダに入ってもなお悲しみはその色を深めていきます。・・・この酷くはりつめた空気と共に。(演奏) ここは、私がベートーベンの音楽の中で最も心動かされる瞬間なんです。この深い悲劇の後、静寂の中にただ凍りつきますが・・・すると突然、生命が戻ってきます。まるで一筋の希望の光のように。まるで墓石の側に咲く、一輪の小さな花のように。『ボーン、ボーン、ボーン・・・』という部分のあと、中断することなく・・・咳をすることなく・・・(少し演奏を始めたかと思ったら止めて)良い観客の兆候とは、ここで誰も咳をしないということです(笑)」

「そしてとても美しいメヌエット、優しい表現のドルチェです。新しい命、新しい力を感じます(演奏)・・・もちろん、私達はさきほどまでの10分間に聴いたことを忘れられませんから、涙も乾かぬうちに。ということになりますが。そして模倣的な何かが始まります(演奏)トリオはまたユーモアいっぱいに!(演奏)・・・ノン・レガートで!(演奏)そしてダ・カーポ・・・アルフィーネ。」

「最終楽章は『アレグロ』ですから普通のテンポで、罪のない小さな問いかけから始まります。(演奏)『・・・それホント?』・・・(演奏)そして、カデンツァのようなものが来ます。このあたりの小節は、メトロノームを片付けたほうがいいです、うまくいきっこないので(笑)(演奏)・・・1、2、3、4・・・1、2、3、4・・・フェルマータ、そしてア・テンポ・・(演奏)偽りのカデンツァ。ここは、こんな風に予期しますが(演奏)しかし、本当は・・・(演奏)そして、確信的に!(演奏)ここで帰宅し、テンポがここから始まります(演奏)ベートーベンはこのあたりに速いパッセージを配して(演奏)フェルマータ。この章はロンド・ソナタ、つまりロンドとソナタをあわせたような形式です。(演奏)ここ素晴らしいですね・・・(演奏)そして、以前もお話しましたが、ベートーベンがユニゾンを書く時は誇張的です(演奏)半音階的に転調しつつ、半歩上がってそのまま漂い(演奏)間違った調です(演奏)覚えてますか、さっきのフレーズ(演奏)ミステリアスに(演奏)そしてこの転調と共に帰宅し、変奏(演奏)そして再奏したらサブドミナントへたどり着きます。

その後・・・ベートーベンはとても風変わりな結末を与えます。だから、いつも(コンサートで)成功しないんですが(笑)『成功』は重要ではないですよ!特にベートーベンにとってはね(笑)。時に、最も素晴らしい作品とは『一番誤解されている作品』だったりしますね。だって、このあとすぐ『悲愴』の解説に移りますが、もちろん悲愴はとても素晴らしい作品ですけれど・・・私は7番の方が断然素晴らしいと思っています(笑)それに、ベートーベンは月光ソナタの人気を理解できず『どうして世間は嬰ヘ長調ソナタを理解しないんだ!』といつも怒っていました。・・・・たぶんニックネームがないからですよね(笑)このソナタにもニックネームをつけて、ふさわしい人気を勝ち取りましょうか(笑)(コーダあたりから最後まで演奏・・・するやいなや客席から咳が)・・・あ、ちょうどいいところで咳をしましたね(笑)とにかく、このように最後は消え去りますが、ここフレーズは(演奏)まさに、奇跡なパッセージと言えます」
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