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ピアノソナタ第6番 ヘ長調 Op.10-2
2016.10.31 (月)
Part 2. Piano Sonata in F major, opus 10 no. 2

第二回目のプログラムより「ピアノソナタ第6番 ヘ長調 Op.10-2」シフさんのレクチャー内容です。やっと6曲めです・・・。この曲は前回のレッスンの時、先生が候補に挙げた曲のひとつで、先生のお気に入りの曲らしいです。さておき、この曲の講義は23分と短めです。ピアノを弾きながら説明されているので、出来れば音源を聴いていただけるとわかりやすいと思います。



(第1楽章、提示部の演奏)

「ひとつ前の曲(5番)とだいぶ雰囲気が違いますね。叙情的でチャーミングで、気のきいたユーモアに溢れています。『予期』と『驚き』の連続です。さて、へ長調・・・では他のへ長調作品を思い出してみましょう。(バイオリンソナタ5番と交響曲6番の冒頭を演奏)田園的で春のような調ですね。(とにかく、この曲は)アップビート(裏拍)のアウフタクト(弱起)で始まり・・・(演奏)7声、とても厚みのある和音です。p(ピアノ)で(演奏)ここは小鳥のさえずりのようですね。そしてエコー(演奏)ここまでは縦の繋がりでしたが、ここからは横の繋がりへ変化し、ゆったりと大きな旋律が始まります(演奏)8小節に渡っての上昇と下降、とても美しい構造です。(演奏)そして最初のモチーフに戻ってきましたが、ここで重要な問題です。どちらの方向へ行くのでしょうか・・・(演奏)レ♯とミ♭は異名同音にあたります。そしてなんとなく聴いてとれると思いますが、この場合は紛れもなく『レ♯』のほうです(連なる響きを比較演奏)・・・隣同士で聴くと、ちょっと奇妙な感じですね。そして準備もなしに(・・・こんなところがとても型破りですが)ハ長調へ。(演奏)」


「それから、歌うような美しい旋律が第2主題として現れます。再度とても厚みのある和音で、伴奏はこんな感じです・・(演奏)常にちょっとしたスフォルツァンドがあり・・・(演奏)ドミナントへ到達しました。(演奏)そして、ここからは短調で歌います。(演奏)・・・とこのように運ぶことが予想できますね。ですが・・・ハイドンがベートーベンや私達に教えてくれた音楽的ユーモアとは、常に『予期』と『驚き』の中にあり、しかもそれは同じ『言語』を分かち合うものの間のみで効果がありますね(ここでいう言語とは、共通の関心)。作曲者と演奏者と観客が、同じ(音楽という)言語を分かち合うということです。ですから・・・(演奏)・・・と、このように運ぶことが予想できましたが、ベートーベンが実際に書いたのは(演奏)・・・そしてここは『訂正』・・・(演奏)本当にすごく可笑しいですよね(笑)」

「それにしても、ここにいるみなさんが(ベートーベンの音楽を)楽しんでくれて、本当に嬉しいです。なぜなら、仮にもし誰もこのテーマに興味を持っていなかったら・・・すごく面白い小話をしているのに、ちっとも愛されない・・・というのと同じようなことですから笑。

ここで、ちょっとした小話をしたいんですが・・・誰も嫌な気持ちにさせないといいけれど・・・『精神病棟での話です。患者達はその日、互いにジョークを披露していました。しかし、それらは全てただの数字です。ひとりが言いました。「・・・17」わっはっはっは。みな一斉に笑いました。次の人が続けて「29」わっはっはっは。また、みなで笑いました。誰かが「218」と言った時にも、みな腹の底から笑いあいました。さて、その様子をずっと観察していたお医者さんは、自分も試してみることにしました。「73」・・・・・静まり返っています。お医者さんは訊きました。「73というジョークはないんですか」すると患者が言いました。「もちろんあるけれど、あなたの(ジョークの)話し方がよくなかった」と。笑」

「え~、ということで(演奏)続く部分もコミカルです。輪に入れずにうろうろ、両手は意図的に揃わず(演奏)ここも面白くて・・・なぜなら単細胞的で、2つの音域を使いつつ(演奏)まるで『のっぽとちび』『おデブさんと痩せっぽ』のような対比です。(演奏)そしてトニック、ドミナント、トニックと言う風に提示部が終わります。提示部の繰り返しのあとは、展開部です。提示部最後の3音をエコーさせ、平行調の短調へ(演奏)そして、バッハへのオマージュ的なフーガがはじまります。ちょっとした対位法的に3連符が出てきて(演奏)とフォルテシモで続きますが・・・常に乾いた短い音です。それと、後出てくるハ短調ソナタとの違いは、というと展開部の長さですね。この展開部はとても規模が大きいですよ。そして、こう続きます」

(演奏)

「斬新ですね。今までに出てこなかった形です。ふたつのモチーフを繋ぐ橋のような存在です。(演奏)・・・再度フーガ・・・対位法・・・(ニ長調で主題が出てくるところまで演奏)おや?どこかで聴いたことがありますね、でも間違った調です。これは、ベートーベン流のジョークです。迷って帰り道がわからないフリをして、わざと変な方向へ連れて行こうとしています。しかし、とても美しいですよ・・・(演奏)でもまだ帰宅していません。そこで、ベートーベンは探し続けます・・・(演奏)少し近づいてきましたね・・・(演奏)・・ああ、見覚えのある景色です。そしてここの小鳥のさえずりのようなモチーフは、私達を安心させようと『大丈夫、お家は近いですよ』と言っています。そして(演奏)・・・ここがお家です(演奏)・・・などなど。帰宅してからは提示部の時と同じです。」

「さて、このソナタは終わりまでずっと明るくて溌剌としていますね。ですが、第2楽章のアレグレットは言ってみれば『暗雲』です。ヘ短調で・・・(演奏)低音域でのミステリアスなユニゾンで始まります。このユニゾンが4声体の性質へ変化する部分が非常に美しく、変化した瞬間、急に光が差し込みます。(演奏)2つの上層音が互いを真似し合っていますね。スフォルツァンドは常に3拍目ですよ。(演奏)・・・そしてフェルマータ・・・(演奏)第2楽章は悲劇的ではありませんが、メランコリックな楽章です。それにアレグレットですから緩徐楽章というよりもむしろ、間奏曲のようですね。(演奏)ほら、このハーモニー・・・『痛み』を感じませんか? スフォルツァンドがあり・・・不協和音です(演奏)それからトリオ(演奏)最初に出てきたミステリアスさと、この穏やかな変ニ長調のカノンのコントラスト(演奏)そのあとまた最初の方へ戻ってきますが(演奏)変奏ですね・・・シンコペーションがあり・・・(演奏)べートーベンは反復ですら、機械的に処理しません。フレージングの違いや変奏もあり、ダイナミズムにも変化がつけられています。」

「そして、このソナタを傑作と思わせる所以のひとつ、最終楽章です。どうして(この章を)嫌う人がいるのか理解できませんが・・・コミカルです(笑) (演奏)これに似たものを挙げると・・・みなさんご存知かと思いますが(と言ってインベンション8番冒頭の演奏) とにかく(3楽章のこの部分は)田舎風で、農夫の踊りのようですね。これは4つ目のフーガ風な音形です。これまでに3種類のフーガが出てきました(通常はフーガのあとは何も続かないイメージですが笑) (演奏)・・・ここで初めてフォルテの指示が出てきますね。ここに来るまでは、p(ピアノ)です。なぜか皆、この章を頭からいきなりフォルテで叩き始めますが、それでは面白みが出ないんですよ!(演奏)とても短い提示部の後は、展開部です。調の変化を聴いてみてください(演奏)提示部からバッハ風のフーガでしたが、展開部ではついにフォルテシモへと至ります(演奏)スフォルツァンドが各最終拍にありますよ。とても魅力的な章ですね。ペルペトゥーム・モビレ、無窮動に常に流れていく音楽ですから、テンポを正確に置くことが非常に重要となってきます。それから、提示部も展開部も反復が必要です。疑問の余地はなく、『必ず』ですよ(笑)」
記事編集00:50| レクチャーコンサート| コメント:2| Top↑
コメント
■amyさんへ
amyさん、こんにちは~
コメントありがとうです。

>すご~い!ホンマに全曲制覇されるのですか!!

え。笑 うん、たぶんね。笑 でもシフさんのお話の内容が面白いのでホントよかった。つまらない内容だったら絶対やれないです!笑 あと、毎日書いているわけじゃなくて、一気にいくつか書いたものを順番に上げてるので、大丈夫ですよっ♪

1番、読んでいただきありがとう☆ 映像というか、音だけなんだけどね・・・でも音を聴きながらだと、(実際の部分を弾いてくれるので)あここの話ね。と、少しわかりやすいんじゃないかなと思います。笑 
ゆにくあ | 2016.10.31(月) 13:12 | URL【コメント編集
ゆにくあさんおはようございます!
すご~い!ホンマに全曲制覇されるのですか!!
尊敬の眼差しですよ~熱中しすぎて疲れを出されない様にして下さいね。
ソナタ1番は読みましたよ!面白かったわ~~
もう一度、今度は映像を見ながら読むつもりです。
ありがとうね~(#^.^#)
amy | 2016.10.30(日) 18:55 | URL【コメント編集
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